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クラシック雑記帳 9 前半はマーラー、後半はブルックナー、全曲を通してはやはりベートーヴェン

2019年3月30日(土)

 交響曲作曲家として代表されるのが、やはりベートーヴェン、そしてブルックナー、マーラーの3人だろう。そして奇しくも3人とも9曲の大作を遺した。そのいずれもがそれぞれに特色を持ち、完成度が高いところも一致している。
 そこで、1番から9番まで、それぞれに順位をつけて整理してみた。多分に好みも入るが、そこはいつもの独断偏見で査定してみた。1位が3点、2位が2点、3位が1点とし、同点の場合は1位が2.5点、2位が1.5点、3位が0.5点とし、3者同順位はそれぞれ1.5点とした。

交響曲第1番
①マーラー3点、②ベートーヴェン2点、③ブルックナー1点
交響曲第2番
①マーラー3点、②ベートーヴェン2点、③ブルックナー1点
交響曲第3番
①ベートーヴェン3点、②マーラー2点、③ブルックナー1点
交響曲第4番
①ベートーヴェン1.5点、①マーラー1.5点、①ブルックナー1.5点

ここで中間順位は・・・
マーラー9.5点、ベートーヴェン8.5点、ブルックナー4.5点といったところか。
第4番は9曲の中の分岐点的にあたるが、これも偶然だが、それぞれ3人とも全曲を通して第4番が最も穏やかな曲調に仕上がっているといえるだろう。ベートーヴェンは「英雄」と「運命」にはさまれ、控え目な存在だが曲調の明るさは捨てがたい。マーラーは”天上の音楽”に仕上がっているし、どれも重厚・荘厳なブルックナーにしてもこの曲だけには「ロマンティック」とつけた標題からして柔和な印象を持つ。

交響曲第5番
①ベートーヴェン2.5点、①マーラー2.5点、③ブルックナー1点
交響曲第6番
①ベートーヴェン3点、②マーラー1.5点、②ブルックナー1.5点
交響曲第7番
①ベートーヴェン2.5点、①ブルックナー2.5点、③マーラー1点
交響曲第8番
①ブルックナー3点、②ベートーヴェン2点、③マーラー1点
交響曲第9番
①ベートーヴェン3点、②ブルックナー2点、③マーラー1点

 後半にかけてのベートーヴェンの充実度はピカ一、ブルックナーも終盤の7、8、9番の完成度はマーラーを凌ぐ。マーラーは7番以降から精神的な悩みも影響したのか、曲想が不透明になった。(それがまた素晴らしいと評価するマーラーファンも一方では存在するが・・・)
 以上の結果、単純に得点を合計すると・・・ベートーヴェン21.5点、マーラー16.5点、ブルックナー14.5点となった。前半はマーラー、後半はブルックナー、全曲を通してはやはりベートーヴェン、ということになるのか。



d0170835_19185698.jpg ところでなんでまた急にこんなことを思いついたかというと、今日また凄い演奏を聴いたから・・・。
 72歳のルーマニア人指揮者クリスティアン・マンデアルがイギリスのハレ管弦楽団を指揮したブルックナーの第9番。ルーマニアといえば唯一セルジュ・チェリビダッケが思い浮かぶが、マンデルは指揮法をそのチェリビダッケから学んだ。ハレ管弦楽団160年の歴史の中で初めての首席客演指揮者として迎えられたということもこの人の実力の証左だろう。長く東側諸国での活動であったため無名に近いマエストロであったが、ジョルジュ・エネスコ・フィルハーモニーの首席指揮者を務め、2009年日本公演で来日。さらに都響の指揮台にも立ち、日本でもようやくそのベールが解かれてきた。“ナンデアル?マンデアル”
 マンデアルのブルックナー、飾り気がなく素朴であるが、決めるところのこのド迫力には度肝を抜かれる。と同時に、改めて、ブルックナー交響曲の魅力を思い知らされることになる。
 また、1980年代半ばに、ルーマニアのオケか?全く知らないがクルジュ=ナポカ・フィル(現トランシルヴェニア国立フィル)との間でブルックナー交響曲全集を先に録音しているが、これがまた想像を絶するぐらい凄いらしい。残念ながらこれはNMLでは配信されていない。


ブルックナー:
交響曲第9番 ニ短調 WAB 109 (1894年初稿・ノヴァーク版)
ハレ管弦楽団 - Hallé Orchestra
クリスティアン・マンデアル - Cristian Mandeal (指揮)



by kirakuossan | 2019-03-30 17:03 | クラシック雑記帳 | Trackback

新盤☆秀盤 NO32 新鮮な8番と爽やかな6番

2019年3月29日(金)

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Symphony No. 6 in F Major, Op. 68, "Pastoral"
Symphony No. 8 in F Major, Op. 93
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 - Vienna Philharmonic Orchestra
フィリップ・ジョルダン - Philippe Jordan (指揮)
録音: 17-18 May 2017, Goldener Saal, Musikverein Wien, Vienna, Austria



 今朝のNMLの新着タイトルでジョルダンの「田園」と8番が配信されていた。好きな指揮者で、若手ではもっとも有望と期待しているひとりのフィリップ・ジョルダンの、例のベートーヴェン交響曲シリーズの第4弾だ。
 第1弾(1番&3番)が2017年2月に、第2(2番&7番)と第3弾(4番&5番)が3月に、そしてこれが5月に録音されている。残すは第9番の第5弾ということになるが、これも近いうちに配信されることだろう。
 今朝聴いた第4弾。やはりこの演奏もあのジョルダンの溌剌とした指揮ぶりが目に浮かぶような愉しい一枚に仕上がっている。「田園」は期待に違わず、爽やかな朝を迎えるに相応しい演奏だし、この8番のなんと新鮮なことよ。さすがジョルダンと唸らせる。

 ただひとつ残念なのは、編集ミスがあって、ここでのオーケストラをウィーン・フィルハーモニー管弦楽団としてある。どう考えてもウィーン交響楽団の誤りで、こうした凡ミスは、ときおりNML配信でみられるあまりにもお粗末な大チョンボ。ジャケットの表記を見れば一目瞭然、ましてやこのCDを出しているレーベルがVienna Symphony Orchestraなのに...
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by kirakuossan | 2019-03-29 07:22 | 注目盤◎ | Trackback

久々にクリュイタンスの第九を聴く

2019年3月26日(火)

 さてさて今日はベートーヴェンの192回目の命日にあたる。なにか聴かないわけにはいかないだろう。
1957年から1960年にかけてベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が初めてベートーヴェン交響曲全集の録音を行なった。この時の指揮者が当時の常任指揮者であったヘルベルト・フォン・カラヤンではなく、どういうわけかフランス系指揮者の印象が強いアンドレ・クリュイタンスであったことは有名。

このことは当ブログに以前にも書いたことがあるので、2012年4月8日の「指揮者100選☆28 クリュイタンス」の記事から抜粋を掲載。





アンドレ・クリュイタンス(André Cluytens, ベルギー、1905~1967)
ベルギーのアントウェルペン出身の名指揮者である。彼のことは巨匠と呼ぶより”名指揮者”と呼ぶ方が何故か相応しいように思う。1964年、日本を訪れ鮮烈な印象を残してくれた。これが最初で最後の来日であった。彼をてっきりフランス人と思いこんでいたが、実はベルギーの人なのだ。それはもともとフランス音楽に秀でたものがある上に、来日したオケがパリ音楽院管弦楽団であったということに起因しているのだろう。彼の、フォーレの「レクイエム」やビゼーの「アルルの女」などを聴いていると純粋のフランス音楽そのものである。イーゴリ・マルケヴィチがウクライナ生まれでスイスの指揮者であるのにフランスの匂いがするのと似ている。クリュイタンスという名、発音がしにくく覚えにくいが、”古いタンス”といって覚えたものだ。

1964年の大阪国際フェスティバル協会によるパリ音楽院管弦楽団との来日公演となる。4月27日午後1時20分、パリ音楽院管弦楽団ら一行105名はKLM特別機で羽田に到着、直ちに日航機にに乗り換えて大阪に向かった。公演は全部で5種類のプログラムからなり、4月28日から5月11日にかけて、初日から前半は大阪(フェスティバルホール)で、途中、福岡を挟んで後半は東京(東京文化会館)で、全部で11公演が行われた。ラヴェル/管弦楽曲集、ベルリオーズ/幻想交響曲、ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」、ブラームス/交響曲第4番などがメーンプログラム。この公演は歴史に残るもので、当時の日本のファンを魅了し「あまりの素晴らしさに、日本のオケに絶望すら感じさせる」とまで言わしめた。なおクリュイタンスの亡き後、パリ音楽院管弦楽団は発展的解散を遂げ、パリ管弦楽団へと改組された。



d0170835_16343482.jpgベートーヴェン:交響曲全集
グレ・ブロウェンスティーン(ソプラノ)
ケルステン・マイヤー(メゾ・ソプラノ)
ニコライ・ゲッダ(テナー)
フレデリック・ガスリー(バリトン)
ベルリン聖ヘドヴィヒ大聖堂合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アンドレ・クリュイタンス(指揮)
録音:1957~1960年(ベルリン、グリューネヴァルト教会)


この録音、2,4,6,8番の偶数番号が昔から人気が高く、特に第6番「田園」はワルター、ベームと並んで同曲屈指の名演として支持を受けている。確かにそうなんだが、今日、1番~7番まで聴いてみたが、3、5、7番も力強くメリハリが効いて、ベートーヴェンらしくスケールの大きな音楽を展開する。要するに全部良いのだ。カラヤン色に染まる以前のベルリン・フィルならではの音色を生かしきった素晴らしい演奏だと思う。以前からもそのことは分っていたが、今日また再認識した。(オケの違いもあろうが、やはりクリップスよりはだいぶ上だわ、これは・・・)それに50年以上も前の録音とはとても信じられない鮮明な音だ。これが実はベルリン・フィル初めてのベートーヴェン交響曲全集の録音で、フルトヴェングラーやカラヤンを差し置いてクリュイタンスが行った、ということは楽団からどれだけの評価と信頼を勝ち得ていたかが覗える。目を変えて見ると、ばりばりのドイツ人指揮者カール・シューリヒトがパリ音楽院管弦楽団とベートーヴェン全集を収録するかと思えば、片方ではフランスの色彩が強いクリュイタンスがばりばりのドイツのオーケストラのベルリン・フィルと全集を組むとはまことに面白い話だ。また、「田園」第4楽章でのコーダでのフルートの澄んだ旋律、また「英雄」第1楽章では 、冒頭の2回和音が響き、シンプルな第1主題はチェロにより提示され、tutti(全合奏)に至り、その後、下降動機のところでオーボエ、クラリネット、フルートが奏でられる。これらのフルートは当時ベルリン・フィルの首席フルート奏者を務め、59年まで在籍した名匠オーレル・ニコレが多分吹いているはずだ、・・・と想像するのも面白い。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

d0170835_16471217.jpgところでクリュイタンスは、実は1905年の今日26日に生まれている。これはちょうどいい。ということで、彼の指揮で第9番「合唱付き」を聴いてみる、と相成った次第。

ゆったり堂々とした演奏、やはりこれも名演です。しみじみそう思います。



by kirakuossan | 2019-03-26 16:13 | クラシック | Trackback

ジャケットに魅かれて。。。4

2019年3月21日(木)


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BEETHOVEN, L. van: Lieder
(P. Schreier, Olbertz)

Peter Schreier
1968-1970, Studio Lukaskirche, Dresden, Germany



ペーター・シュライアー、今度はベートーヴェンの歌曲集。全67曲は圧巻である。シュライアー30代半ばの若い歌声が満喫できる。




by kirakuossan | 2019-03-21 16:01 | クラシック | Trackback

クラシック雑記帳 8 名エンジニア、ウィルキンスンの録音

2019年3月16日(土)

 子供の頃よく目にしたものに「リーダーズ・ダイジェスト」があった。会員制月刊の総合ファミリー雑誌発刊が主体だったが、一時期、クラシック音楽LPの発売も行っていた。ステレオ初期に自社企画で数々の名盤を世に送り出していた。ただその音質がいかに凄かったかは意外と知られていない。サウンド・クオリティを重視し、その制作を高音質で知られた米RCAに依頼、また、RCAが当時、英DECCAと提携関係にあったこともあって、より充実した内容であった。
 以前に、ルネ・レイボヴィッツのベートーヴェン演奏が隠れた名盤で素晴らしいと知り、幸いNMLでも配信されているので早速自作CDを作ったぐらいだった。でもその時は、とにかく演奏そのものもそうだが、60年代初頭の録音にしてはその音質の凄さにより驚いたものだ。
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 そこで思い出して聴いていると、新たにこんなことがわかった。
 当時の録音は、プロデューサー(企画)がRCAのチャールズ・ゲルハルト、エンジニアがDECCAのケネス・ウィルキンスンという当代超一流の夢の組み合わせが実現したものだったそうだ。チャールズ・ゲルハルト (1927~1999)は指揮者でもあって、録音用のオーケストラであるナショナル・フィルハーモニー管弦楽団と共演も多く、スメタナの「モルダウ」などの名演もある。

d0170835_17255154.jpg ケネス・ウィルキンスン(1912~2004)の録音は、80年代ごろの録音によくあるあのギスギス感は皆無で、響きが自然にとらえられ、まるでホールで実際に聴いている錯覚にとらわれるそうだ。ゲオルク・ショルティがシカゴ交響楽団と72年から74年にかけて録った1回目のベートーヴェン全集も、この人の録音らしい。演奏そのものは評判はよくなかって有名にはならなかったが、音質は良いらしい、一聴に価する。


 まあいずれにしても60年代のリーダーズダイジェストへの録音はとびきりいい音です。

ベートーヴェン:
交響曲第7番 イ長調 Op. 92
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団 - Royal Philharmonic Orchestra
ルネ・レイボヴィッツ - Rene Leibowitz (指揮)
録音: April - June 1961, London, England, United Kingdom

ベートーヴェン:
シカゴ交響楽団 - Chicago Symphony Orchestra
ゲオルク・ショルティ - Georg Solti (指揮)
録音: November 1973, Medinah Temple, Chicago, United States



by kirakuossan | 2019-03-16 16:23 | クラシック雑記帳 | Trackback

一年の聞き納めはやはり格調高い第九で

2018年12月31日(月)

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 一年の締めくくりはやはり第九。今年は第九演奏会に行くチャンスがなかったが、イッセルシュテットの最高の演奏で聞き納めができる。開演は午後1時30分である。
 このレコードは1965年12月に名匠ハンス・シュミット・イッセルシュテットがサザーランドをはじめ、ホーンやキング、タルヴェラと、時の一流ソリスト陣を従え、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した、格調高い知る人ぞ知る「第九の名盤」である。
 色んなことで乱高下した平成最後の年、これで無事終えそうである。明日から始まる新しい時代。どんな夢を叶えてくれるのだろう、愉しみだ。


ベートーヴェン:
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 - Vienna Philharmonic Orchestra
ハンス・シュミット=イッセルシュテット - Hans Schmidt-Isserstedt (指揮)
ジョーン・サザーランド - Joan Sutherland (ソプラノ)
マリリン・ホーン - Marilyn Horne (メゾ・ソプラノ)
ジェイムズ・キング - James King (テノール)
マルッティ・タルヴェラ - Martti Talvela (バス)
ウィーン国立歌劇場合唱団 - Vienna State Opera Chorus




by kirakuossan | 2018-12-31 13:44 | クラシック | Trackback

クラシック雑記帳 3 あのチェリビダッケも真っ青? の「運命」

2018年12月14日(金)

 ベートーヴェンの9つの交響曲でどれも完成度が高いが、そのなかでも非の打ち所がない完璧な作品は第5番ハ短調だと僕は思う。もうこの曲は第一楽章冒頭の”ダダダダ~ン”から始まって、最後の第四楽章では彼の交響曲中で唯一”ジャーン”とフェルマータの音で終わるまで、全くムダな箇所が見当たらない。

 で、NMLで新たに配信された名指揮者フェレンツ・フリッチャイがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮した1961年9月の録音を聴いてみた。そこですぐさま気がついた。”ダダダダ~ン・ダダダダ~ン”がこの演奏では”ダ―ダ―ダ、ダ~ン・ダ―ダ―ダ、ダ~ン”なのである。これほどにゆっくりとしたテンポで始まるのは今まで知らない。遅い演奏で有名なあのセルジュ・チェリビダッケでさえ、”ダ、ダ、ダ、ダ~ン・ダ、ダ、ダ、ダ~ン”で、8秒、フリッチャイは9秒とそれより1秒長い。一方、あの軽快な名演奏で知られるカール・シューリヒトがパリ音楽院を指揮したものなどはなんと6秒で済ませている。
 冒頭からこの調子なので、結局第一楽章は、チェリビダッケでさえ7分31秒なのに対して、フリッチャイに至っては9分10秒と1分40秒も長い、シューリヒトなどは7分8秒だから、その遅さがわかる。
 これは続く第二楽章のアンダンテも当然ゆったりとしたペースで、チェリビダッケは12分09秒だが、フリッチャイはチェリビダッケも顔負けの13分18秒も要している。もうこれは尋常ではない。
 でもさすがにこれではあまりなので、ということでもないだろうが、最終楽章は逆に9分29秒で切り上げている。チェリビダッケは10分41秒、この人もゆっくりとした演奏で知られるオットー・クレンペラーなどはアレグロに13分19秒もかけている。

《全曲演奏時間》
フリッチャイ(ベルリン・フィル) 38分20秒
チェリビダッケ(ミュンヘン・フィル) 37分36秒
バーンスタイン(ウィーン・フィル)35分37秒
クライバー(ウィーン・フィル74年)33分22秒
フルトヴェングラー(ベルリン・フィル47年)33分10秒
モントゥー(ロンドン響)30分11秒
カラヤン(ベルリン・フィル77年)30分10秒
シューリヒト(パリ音楽院) 29分56秒

 指揮者の解釈で同じ曲がこれほどまでに違ったかたちで演奏される、しかもそのどれもが終始一貫して弛緩することなく、独自のテンポで聴かせる。これはどれもが神技と言えよう。ここに挙げた、指揮者たちは申すまでもなく当代きっての名指揮者ばかりである。
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 フェレンツ・フリッチャイ(1914~63)はハンガリー出身の将来を嘱望された指揮者だったが、惜しくも道半ばにして早世した。罹病してからのフリッチャイは同一人物によるとは思えない程大きな解釈の違いをみせたとされるが、この第5番の演奏も発病してから3年後のものである。
 もし彼がもっと長く指揮棒を握っていたら、おそらく同年代の巨匠ラファエル・クーベリックをも凌駕した実力と人気を博していたことだろう。



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ベートーヴェン:
交響曲第5番 ハ短調 「運命」 Op. 67
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
フェレンツ・フリッチャイ - Ferenc Fricsay (指揮)
録音: September 1961, Jesus-Christus-Kirche, Berlin, Germany




by kirakuossan | 2018-12-14 14:26 | クラシック雑記帳 | Trackback

至福の酒。。。「こんなしんきくさいこと毎年よーやってるなあと思います」ということですが、これ一杯飲むとすべてが報われますね。

2018年8月9日(木)

フルトヴェングラーの《第九》は、確か十指に餘る録音が残されてゐる筈である。私も長年、熱心なファンの一人だったから、その内のかなりの盤は聴いてきたが、結局、今に至る迄、一番好んで聴くのは、一九五三年五月三十一日のウィーンフィルとのライヴ盤である。ルツェルンでの死の直前の《第九》は、更に大切なレコードだが、この浄化された遺言のやうな演奏を、好むと言ふ譯にはゆかない。ここでのフルトヴェングラーは、最早《第九》を演奏などしてゐない。個我はない。没我ではなく、ただ浄らかである。浄らかである以上、既にこの世の音ではないやうだ。私は、繰り返し聴くこと自體を畏れるのである。
小川榮太郎著『小林秀雄の後の二十一章』から、カラヤンとフルトヴェングラーの《第九》より


ということでフルトヴェングラー&ウィーン・フィルの53年盤の《第九》を聴いている。今、最高のクライマックスを終えたところである。確かに素晴しい《第九》である。例の不滅の名盤とされるバイロイト盤よりずっとこちらの方がいい。

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同じく素晴しいのは聴きながらにしてちびちびとやる原庵店主作の梅酒&らっきょ。芳醇な梅酒が腸にしみわたる。
「この梅酒って、何年物でしたっけ?」
直ぐにメールで返ってきた。
「平成26年5月25日漬け込みです。その翌日のブログで採りあげられています。この年は梅自体がデカかったですから梅酒も良いのができました。ヴィンテージと言ってよかろうと思います」

ということでさっそく4年前のarchiveをチェック。







archive



「季節のお題」


2014年5月26日(月)
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d0170835_1615845.jpgd0170835_1621920.jpg昨日、I 氏から「季節のお題」のメールが入ってきました。
梅酒漬け込みの季節到来です。例年より10日ほど早い気がします。だいたい梅雨入りの頃なのですが…。写真は梅を洗って、布巾で磨くように拭いて、干してるところです。全部で3kg。やっと半分。自分でもこんなしんきくさいこと毎年よーやってるなあと思います。でも今年はkirakuossan家御一同に梅酒気にいって頂いたので励みになります。

頑張って今年も美味しい梅酒を作ってください。また、試飲を楽しみにしております。
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d0170835_16242664.png夕食までのひととき、今日もヴェネチア放送を鳴りっぱなしにしているが、趣味の良い曲目が次から次へと流れてくる。時間の経つのも忘れる。

by kirakuossan | 2018-08-09 20:10 | 食・酒 | Trackback(19)

カラヤンは《第九》から、さうした精神的な領域での葛藤を全て捨象してしまふ。

2018年8月9日(木)

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最近、仕事が繁多を極め、車の移動でレコードを掛ける時が、一番纏めて音樂を聴けるといふ日々である。先日は、さうした深夜の車中移動で、カラヤン&ベルリンフィルの一九六二年盤《第九》を久しぶりに聴いた。カラヤンのベートーヴェンは、元々好きではない。評價出来ない理由もはつきりしてゐる。だが、さういふこと以前に、この度聴き直してみて、この《第九》が餘りに退屈なことに、私は驚いた。~

《英雄の生涯》や《春の祭典》ならば輝かしい勝利に聴こえたカラヤンのサウンドが、何故、ベートーヴェンでは、あへなく「敗北」してゐるかのやうな印象になるのだらう。豪奢な響きと滑らかなレガートが、新たな魅力となるよりも、退屈さに聴き手を閉じ込めてしまふことになるのだらう。
カラヤンの《第九》の退屈さは、後からじわじわ来る。快速調で冒頭の三十二分音符を克明に刻ませ、第一主題の登場をレガートで歌ひ切る一樂章の出出しは鮮烈なのである。フルツヴェングラーへの意図的なレジスタンスでもありさうだ。云ふまでもなく、フルトヴェングラーはアレグロとは言へぬゆつたりとしたテンポで、宇宙創生のやうにこの曲を始め、三十二分音符は神秘的な音の霧にしてしまふ。第一主題はレガートの對極、踏み締めるやうな偉容を打出す。かうした《第九》像の讀み換へだとすれば、カラヤンの着想は悪くないと、私は思ふ。
が、残念ながらそれは、この後、音樂的意味への問ひ掛けには育たない。鮮やかな着想は、あつと云ふ間に、美麗なだけの音空間に退行する。カラヤンは、まるでR・シュトラウスのやうに、聴き手を美の催眠に掛けようとする。だが、ベートーヴェンの聴き手は、最高度に目覚めてゐなければならないのである。美麗な音の夢に微睡むことを、音樂は寧ろ厳しく禁じてゐる。それは、一歩ごとに聴き手の覚醒を求め、彼自身も又、作者と共に、崇高へとにじり昇らねばならぬ。カラヤンは《第九》から、さうした精神的な領域での葛藤を全て捨象してしまふ。


小川榮太郎著の『小林秀雄の後の二十一章』から、カラヤンとフルトヴェングラーの《第九》の一節である。このようなことは私にも同じ経験があるところであって、「第九」に限らず、カラヤンのベートーヴェンはどれも退屈である。
小川榮太郎氏(1967年~)は文芸評論家で専門は近代日本文学、19世紀ドイツ音楽とあるが、最近、別著に『徹底検証「森友・加計事件」 ―朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪―』を発刊し、朝日新聞と係争している。今日図書館にこれを借りに行くもこちらの方は「貸し出し中」とあった。




國民會館主催の9月度の武藤記念講座でこの小川氏が講師で登場する。ぜひ行ってみようと思っている。

   ◇第1049回の記念講座
    演題:「江戸思想が可能にした『明治国家』」
    講師:文芸評論家  小川榮太郎氏
    日時:9月15日(土)午後1時30分~3時30分
    場所:大阪:國民會館 武藤記念ホール
  
要旨:今年は明治150年記念年であり、幕末維新が様々に回顧されている。しかし明治維新の際立った特質は幕末の政変そのものでなく、その後、古代以来政治的権威だったことのない天皇を擁立した地方出身の下級武士政権が、稀にみる高度で安定した近代国家を維持できた点にある。これは権力の力ではなく、民度と思想の力であり、その地力が育まれた江戸思想と近代国家の成立の関係を話します。




by kirakuossan | 2018-08-09 17:25 | 文芸 | Trackback

ベートーヴェン最後の作品

2018年7月28日(土)

いい曲、なんの曲。

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ベートーヴェンの作品番号で一番最後は Op. 135. この世を去る5か月前に作曲された弦楽四重奏曲第16番 ヘ長調に付加されている。まぎれもなく彼の生涯の最後の作品であった。
最晩年の弦楽四重奏曲群はより難解な音楽になり、なかでも「大フーガ」などは、数多くのベートーヴェンの楽曲を聴いて来たファンにとって、まるで異質の音楽に聴こえる。
でも最後の第16番ではハイドン以来の古典的な4楽章形式に戻し、第3楽章のLento assai, cantante e tranquilloは抒情的で美しく、穏やかな旋律で、ベートーヴェンが自らの生涯を省みるような思いがする。

今日、長野県山ノ内町のホール「森の音楽堂」で開かれた「小澤国際室内楽アカデミー」の奥志賀公演に昨秋以来体調不良で降板が続いていた小澤征爾が9カ月ぶりに姿を現わし指揮を執った。300人の観客は事前に知らされておらず、会場では驚きの声が上がったが、今日の観客は幸運であった。
いすに座りながら、アカデミーの生徒ら28人に向かってタクトを振った。曲目は「弦楽四重奏曲第16番ヘ長調第3楽章」であった。


ベートーヴェン:
カザルス四重奏団 - Cuarteto Casals

弦楽四重奏曲第16番 ヘ長調 Op. 135 (弦楽オーケストラ版)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
レナード・バーンスタイン(指揮)



by kirakuossan | 2018-07-28 22:06 | いい曲、なんの曲 | Trackback