信州の名峰蓼科山麓の女神湖近くの山荘"tutti”は標高1650mにある。これほどの高地にある別荘は日本でもそう多くはない。だから平地とは気温が10℃も違うのです。 当ブログ名は2018年7月1日をもって「のんきなとうさんの蓼科偶感」に変更いたしました。


by kirakuossan

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妖精10年の足跡

2018年9月9日(日)


妖精から小悪魔へ、そして大人の女性へ・・・

Ott, Alice Sara



☆リスト:超絶技巧練習曲集(全12曲)
 録音:2008年6月、ハンブルク
☆ショパン:ワルツ全集 
 録音:2009年8月、ベルリン、テルデックス・スタジオ
☆チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S.124
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 トーマス・ヘンゲルブロック(指揮) 
 録音:2009年11月 、ミュンヘン
☆ベートーヴェン:ピアノ作品集
 録音:2010年8月、ハンブルク
☆ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」ほか
 録音:2012年7月、サンクト・ペテルブルク、マリインスキー劇場
☆ストラヴィンスキー:春の祭典(作曲者による2台ピアノ版)
 録音:2013年9月、ベルリン
☆グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 op.16、抒情小曲集ほか
バイエルン放送交響楽団 エサ=ペッカ・サロネン(指揮)
 録音:2015年1月(1)ミュンヘン、ヘルクレスザール、2016年4月(2)ベルリン、マイスター・ザール
☆ドビュッシー・サティ・ラヴェル作品集
 録音:2018年3月、ベルリン



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by kirakuossan | 2018-09-09 08:19 | クラシック | Trackback
2018年9月8日(土)

Ott, Alice Sara Nightfall

d0170835_22544690.jpg夕暮、アリスの新盤を聴く。

ドビュッシー、サティ、ラヴェル、
2年ぶり8枚目のアルバム
20代最後の録音。
今までにない彼女の新境地だ。

録音: March 2018, Meistersaal, Berlin, Germany






夢想Rêverie
ベルガマスク組曲Suite bergamasque
Debussy

3つのジムノペディ - 第1番 ゆっくりと悩める如く
3 Gymnopédies: No. 1. Lent et douloureux
Satie

夜のガスパールGaspard de la nuit
亡き王女のためのパヴァーヌ(ピアノ版)Pavane pour une infante défunte (version for piano)
Ravel



by kirakuossan | 2018-09-08 22:55 | 注目盤◎ | Trackback
2018年7月26日(木)

d0170835_03271093.jpg あれほど苦手だったドビュッシーが、どうしたことだろう、不思議とすーっと耳に入ってきて、心地よい響きを感じたとった。
4年前に傘寿記念ピアノリサイタルを開いた女流ピアニストによるドビュッシー。
北村陽子。井口基成やフランス人ピアニストのイヴ・ナット、ピエール・サンカンに師事したとあるから、時代を感じさせる。
1957年にパリ国立音楽院ピアノ科を卒業、1960年にはジュネーブ国際コンクール最高位に入選、帰国後、桐朋学園で教鞭をとり多くのピアニストたちを育てた。
この4月にも紀尾井ホールでリサイタルを開き、シューベルトの即興曲集やラヴェルを聴かせた。
それにしても、今まで受けつけなかったドビュッシーが・・・ほんとにどうしたことだろう。


ドビュッシー:
北村陽子 - Yoko Kitamura (ピアノ)
(録音: 5-7 September 2016, Inagi Municipal i Plaza, Tokyo, Japan)

by kirakuossan | 2018-07-26 03:27 | 注目盤◎ | Trackback(1)
2018年7月21日(土)

Orfeo 1979年にミュンヘンで設立されたレーベルで、カルロス・クライバーのベートーヴェンで馴染み深い。紺色ジャケットがスタジオでの自主録音、赤色ジャケットが放送局等の歴史的ライブレコーディングと分かれているが、とくに赤色ジャケットが充実している。古典から現代音楽まで幅広いレパートリーを持っていて、名盤のうえに音質の良さとくるから捨てがたいレーベルである。今朝のNMLで一堂50枚が新着配信されている。
ではその中から1枚、1965年7月に行われたゲザ・アンダのショパンリサイタルの演奏を。

d0170835_08043999.jpgハンガリー人なので本来ならアンダ・ゲーザ(Anda Géza 1921~1976)なのだが、来日時の紹介でどういうわけかゲザ・アンダと公表され、日本ではそのままこの名が定着してしまった。
いまショパンの「24の前奏曲」を聴いているが、第7番や第11番など短いフレーズのなかにアンダの心温まる響きが凝縮されているようだ。
ブダペストに生まれた彼は13歳でフランツ・リスト音楽院に学びメンゲルベルクやフルトヴェングラーのよって才能を認められた。大戦後にチューリヒに亡命、世界的に知られるようになる。バルトークとモーツァルトを得意としたが、ロマン派の演奏も捨てがたい。
ショパン、モーツァルト・・・聴くにつれて彼がヴィルトゥオーゾ・ピアニストとされたわけがよく理解できてくる。わずか55歳で他界してしまったために巨匠と称されないままに終わってしまったまことに惜しいピアニストである。


ショパン:
ゲザ・アンダ - Géza Anda (ピアノ)
(録音: 27 July 1965, Österreichischen Rundfunks 1, Solistenkonzert, Mozarteum, Austria)

モーツァルト:
ゲザ・アンダ - Géza Anda (ピアノ)
バーデン・バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団
エルネスト・ブール - Ernest Bour (指揮)
(録音: 13 March 1963)



これは1963年の録音、この翌年に東京オリンピックが開催されたが、ところで今度の東京オリンピックまで今日で丸2年に迫った。開会式は2020年7月24日だが、日程の都合でサッカーだけが2日早く7月22日から始まる。余談だけど。


そしてこのピアノを鳴らし切ったスケールの大きなラヴェルを聴くと、もうただ者ではなかったことがよく解るのです。


ラヴェル:
ゲザ・アンダ - Géza Anda (ピアノ)
バーデン・バーデン&フライブルク南西ドイツ放送交響楽団 ハンス・ロスバウト - Hans Rosbaud (指揮)
(録音: 15 March 1952)



by kirakuossan | 2018-07-21 06:23 | ピアニスト列伝 | Trackback

「本当の音楽」

2018年6月18日(月)

d0170835_21404877.jpgスヴャトスラフ・リヒテルの最後の来日公演は1994年2月、彼が亡くなる3年半前の79歳の時である。飛行機嫌いは有名で、なかなか来日を果たせなかった(もちろん他に大きな理由はあったが)そして彼の初来日もまた例の1970年大阪万博の時であった。それ以降は度々日本を訪れることとなり、調子が悪いとキャンセルを繰返し、何かと話題性の多いピアニストでもあった。しかし「20世紀最大のピアニストのひとり」と日本での人気は高く、リヒテルの名を不動のものにした。


1924年2月、リヒテル最後の来日公演での、サントリーホールのピアノ・リサイタルで聴いたグリーグの「抒情小曲集」のことをいまもときどき思い出す。
なぜなら、あのときの演奏こそ、数少ない「本当の音楽」だと強く思ったからだ。
当日になるまでプログラムはわからないという気まぐれが許される数少ない巨匠だったリヒテルは、いつもの習慣として会場全体の照明を落とし、ピアノの上だけに明かりを置いて、スコアを広げながら、静かにグリーグを弾いた。
それは多くのファンが期待したような華やかな作品とは似ても似つかないものだった。が、淡々とした地味な小品たちを一曲また一曲と弾き進むにつれて、ずっとここでリヒテルの弾くグリーグを聴いていたいと思うほど、強い幸福感に襲われた。
グリーグの「抒情小曲集」は、そういう外面的な世界の正反対の何物かである。言い換えれば、それは詩そのものである。ひけらかしやエゴの表出とは無縁に、四季折々の情景、素朴な暮らしの一場面が、個人の日記のように記されている。その背後には、人はいかにして生きるべきかというグリーグの省察がある。

「リヒテルが教えてくれた本当の音楽」(林田直樹著クラシック新定番より)


d0170835_22135248.jpg私の悪い習癖で、物事を決め込んでしまうところがある。それは自分なりに根拠を持ったものであるが、しかし厳密に考えなおせば、必ずしもそれが根拠といえるだろうか、単なる思い込みではなかろうかといった所詮曖昧なものなのである。
北欧の作曲家といえばやはりシベリウスであり、ほかのライバルは見当たらない。しいて言えばグリーグなのだろうが、彼の音楽はいかにも「通俗的」であり、真の音楽性からすればすこし外れたものである。ピアノ協奏曲イ短調を聴けば感じるが、あの一見してとっつきやすさがそのことを物語っている。(これ自体がそもそも偏見なのだろう)
ところがここでの林田直樹氏のグリーグ観を読むにつけ、その偏見は一瞬にして覆されたのである。


自然は、人間をさまざまな属性から解放し、純粋な一個人へと還元する。そして人を謙虚にさせる。この謙虚さが、グリーグの音楽の持っている「徳」の源なのだろう。

ここに出てくるリヒテル最後の来日公演のわずか4か月ほど前に、同じグリーグの「抒情小曲集」アテネでのライヴで録ったディスクがある。林田氏が数少ない「本当の音楽」と評した演奏を想像しながら、いま聴いているのである。



グリーグ:
スヴャトスラフ・リヒテル - Sviatoslav Richter (ピアノ)
録音: 19 October 1993, Athens, Greece



by kirakuossan | 2018-06-18 20:07 | クラシック | Trackback
2018年5月17日(木)

3年に一度、イングランド北部のリーズで開催される国際的なピアノコンクールにリーズ国際ピアノコンクールというのがある。1963年に地元のピアニスト、ファニー・ウォーターマンにより創設され、長時間かけるのと多くの課題を課せ、過酷なコンサートとして知られる。過去に、マイケル・ロール(1963年)、ラファエル・オロスコ(1966年)、ラドゥ・ルプー(1969年)、マレイ・ペライア(1972年)、アルトゥール・ピサロ(1990年)などが優勝を飾り、日本人では1975年に内田光子が2位、1987年には小川典子が3位に、そして2003年には大崎結真が3位に入った。今年は第19回目にあたり、4月3日にファーストラウンドがベルリンのヨアキム・ホールではじまり、シンガポール、ニューヨークと舞台を移したあと、9月6日から再開されるリーズラウンド、リーズ大学での第2ラウンドと準決勝、そしてリーズタウンホールでの最終ファイナルで優勝者が9月15日に決まるというロングランのコンクールである。アート・ディレクターにポール・ルイスが就き、ランランやマレイ・ペライアがスタッフをつとめるが、ただ、ウォーターマンが高齢になり引退することもあって、これを機に今年開催される大会から大幅な改良がなされるという。

d0170835_16510541.jpgこのコンクールで2012年の大会で優勝したピアニストにイタリア人のフェデリコ・コッリがいる。日本ではまだそう知られていないが、2013年に来日公演をはたし好評を博している。音の強弱を仔細に表現し、輪郭のはっきりとした物語り風のピアノを聴かせる、といった印象だ。現在Chandosレーベル専属のアーティストとして活躍するが、「知的で想像力豊かな解釈、世界が認める完璧なテクニック」といった評価が下されている。彼の弾く「展覧会の絵」がいい。
リーズコンクールでのセミファイナルでも、前半はモーツァルトのパイジェッロの歌劇「哲学者気取り」による変奏曲、ショパンのスケルツォ第3番、スクリャービンのソナタ第10番などを弾き、そして後半にはムソルグスキーの「展覧会の絵」を披露した。"音楽の絵"を描くことをモットーにする彼にとって、この「展覧会の絵」は最も表現に適した作品と言えよう。ただ、この楽曲の難しさは一歩間違えば退屈な凡演に終わってしまう。ただある男が美術館にやってきて、次から次へと絵画を鑑賞する、そこで感じた印象を綴ったというだけに終わってしまう。でも、この作品を通して人生そのものを語り、様々な感情の変遷を経て、最終的に平和で穏やかな地に到達する、それを「展覧会の絵」を通して表現する。といったことは誰にでもできる芸当というわけにはいかない。コッリのピアノはただ力強いだけでなく、輪郭のはっきりとしたなかにも、人生そのもののドラマも浮き彫りにさせる。まだ30歳のピアニストである。

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d0170835_16554608.jpgムソルグスキー:
フェデリコ・コッリ - Federico Colli (ピアノ)
録音: 25-27 June 2013, The Music Room, Champs Hill, West Sussex, United Kingdom

by kirakuossan | 2018-05-17 13:53 | クラシック | Trackback
2018年4月23日(月)
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ローム・ミュージック・フェスティバル2018

メインホールでの最後の催し物・オーケストラコンサート「天才と英雄の肖像」
前半プロは小林愛実をソリストにモーツァルトのピアノ協奏曲第20番ニ短調。変な力みもなく適度な力加減のピアノタッチ、モーツァルトの音楽にぴったりで大したものだ。アンコールにショパンのピアノソナタ「遺作」が披露され、やはりこの人のショパンは最高だな、と再認識させられた。
後半プロはリヒャルト・シュトラウスの「英雄の生涯」、京都市交響楽団の昨今の評判は高いが、確かに以前と比べて管、弦ともに厚みを増してきたように思う。
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帰りに庵原氏と京都駅前で一杯やりながら、今年の夏のスケジュールをいろいろと調整。彼もこの6月で晴れて退職、これからもさらにいっそう自由に人生をエンジョイすることになるでしょう。
(2018年4月22日)


by kirakuossan | 2018-04-23 07:42 | クラシック | Trackback
2018年4月1日(日)

d0170835_04405999.jpgNMLの新着配信は土日はないといっていた矢先、昨日、今日と続けに配信になった。
ショパンコンクールファイナリストの小林愛実のディスクがNMLの新着配信で顔を出した。
3年前の幼さが消え、もうすっかり大人の女性になった雰囲気が漂う。
ショパンは「葬送」を、ほかにリストから巡礼の年イタリアと「愛の夢」
選曲もタッチも、大人になったのかな。
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女神湖も氷が融けたらしい。早く行きたくてうずうずするような季節になって来た。今年は4月も何かとスケジュールに追われ、早くても5月中旬ごろになりそうだ。でもその分、今年もまた長期間の夏休みを蓼科で過ごそうと思っている。みなさん、ぜひ涼しい山荘に足をお運びください。


リスト:
Années de pèlerinage, 2nd year, Italy, S161/R10b (excerpts)
小林愛実 - Aimi Kobayashi (ピアノ)

(女神湖:信州リゾートサービスのブログより 3/29)



by kirakuossan | 2018-04-01 04:40 | 蓼科の風景 | Trackback
2018年3月19日(月)

月刊雑誌「音楽の友」の最新号を今回またamazonで購入、ネット注文した翌日には郵便ポストに投函されてくるので便利である。
と、ここまではいいとして、これからあとは小生の独断と偏見に満ちた発言となる。
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今月号は「クラシック音楽ベストテン」と題した特集を組んでおり、読者アンケートの集計が大々的に掲載されている。3年に1度の大発表! ”あなたの一票は何位にランキングされましたか? ということだが、中身があまりにもお粗末なことと、そのランキングといったら、単なる人気投票に終始していて、本当にその演奏家たちが音楽的にレベルが高いかといえば疑問で、こちらの思いとは終始逆で、読むにつれ嫌になってくる。

たとえば、「あなたが好きな日本人ピアニストは?」というランキングがある。
①小山実稚恵975票
⓶内田光子725票
③辻井伸行554票
④小菅優466票
⑤仲道郁代460票

まあ内田光子は良いとしても、また小菅優はそこまで詳しくは聴いたこともないので正確に論評できないとしても、何であの大味なピアノの小山実稚恵が1位なのか?どうして辻井伸行の粗い弾き手が3位に入るのか? そして貧弱な響きの仲道郁代なども上位に上がっていて、はっきりいって、みな人気先行のピアニストばかりで、音楽的才能はとてもじゃないが上位にランクされる顔ぶれではない。
どうして、アリス紗良オットがベスト20位にも入っていないのか?萩原麻未が13位とはあまりにも低いではないか?

「あなたが好きな日本のオーケストラは?」のランキングなどはもっとひどい。
①NHK交響楽団1500票
⓶日本フィルハーモニー交響楽団656票
③東京交響楽団624票
④神奈川フィルハーモニー管弦楽団587票
⑤東京都交響楽団555票

あの演奏にムラのあるN響が断トツの1位、神奈川フィル?ってそんなに上手いのか?
驚いたことに日本のオーケストラで恐らく最も熱心で、水準からしても高いと思われる、読売日本交響楽団や東京フィルハーモニー交響楽団がこれらの後塵を拝しているとは信じがたい。

と、気負って偏見を述べてみたものの、よく考えてみると、「あなたが好きな・・・」とあるから、単に自分の好みと合わないだけなのだ。そう目くじらを立てることもないのである。
今月号で唯一よかった記事は、バッティストーニが大フィルを振った演奏会評ぐらいだ。


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大阪フィルハーモニー交響楽団第515回定期演奏会
2月16日フェスティバルホール
アンデレア・バッティストーニ指揮
レスピーギ「交響詩《ローマの噴水》《ローマの祭り》《ローマの松》

イタリアの若獅子バッティストーニがレスピーギ「ローマ3部作」を振る。だから、お国ものだ。けれど、この夜の爽快な成果を「イタリア音楽はイタリア人指揮者で聴くに限るね」と思い込むのは早計だ。演奏の特質は、国籍でなく個々の資質にあるから。3部作いずれも整理が行き届いた秀逸の時間。拍から拍、打点から打点へ指揮棒の移動が速い指揮者を何人か思い浮かべつつ、これほどの速さは唯一無二。レスピーギの管弦楽法に颯爽の包丁さばきを入れるようだ。テンポは部分的に予測を裏切るスリル感もあるが全体で突飛な設定はない。総譜のページから読み切った音像と、現在この瞬間に向き合う楽団の音像との差異を感知する能力が並外れて鋭敏だ。しかもそれに溺れない。合奏精度は重箱の隅を突っつかず骨太。音量の対比も鮮明だ。《松》の頂点でも決して音に酔い潰れない。演奏全体を明晰に導き、知情の均衡が盤石。巨匠への道の地図を持つ青年の再登場が待たれる。(響敏也)

いくぶん自らの語彙に酔ったような論評だが、でも当日の見事な演奏会の様子は十分伝わってくる。
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by kirakuossan | 2018-03-19 21:05 | クラシック | Trackback
2018年2月22日(木)

d0170835_11440461.jpg今朝はNMLでスヴャトスラフ・リヒテルのシューベルトのソナタが新着配信されていた。ちょっとこの渋顔を見ていてまたあることが頭に浮かんだ。
このリヒテルというピアニスト、同僚のエミール・ギレリスとは対照的に最初は西側諸国への演奏旅行がなかなか当局から許可が下りなかった。ギレリスがユージン・オーマンディと共演した際、オーマンディが彼に最高の賛辞を贈ろうとしたら、ギレリスが「リヒテルを聴くまでは待ってください」と言った、とかいうコメントなどが飛び交い、噂が噂を呼ぶ幻のピアニストだった。


指揮者とオーケストラの相性の良さはある。その逆ももちろん数多くある。また、コンチェルトなどで指揮者と独奏者との関係も微妙である。自らの音楽観の相違で衝突もしばしば起こる。よく知られるところではレナード・バーンスタイングレン・グールドの関係。カーネギー・ホールでのライブ録音でブラームスのピアノ協奏曲第1番の演奏をするにあたって、
「心配しないでください.グールドはちゃんと来てますから.これから皆さんがお聴きになるのは,言ってみればかなり正統的とは言いがたいブラームスのニ短調協奏曲です.それは私がこれまでに聴いたことのあるどの演奏とも全く違うもので,テンポは明らかに遅いし,ブラームスが指示した強弱から外れている部分も多々あります.実は私はグールド氏の構想に完全に賛成というわけではありません.私がこの曲を指揮するのは,グールド氏は大変に確かな,まじめな芸術家ですから,彼が真剣に考えたことは何であれこちらもまじめに受け取る必要があるということと,今回の彼の構想はとても面白いものなので,皆さんにもぜひ聴いていただきたいからなのです」と不納得なバーンスタインが仕方なくわざわざ聴衆に断りを入れた。この会話がCDの冒頭部にも収録されている。

同じブラームスのピアノ協奏曲でこちらは第2番での演奏だが、1960年、ついにリヒテルが渡米してシカゴ交響楽団と共演することとなった。ところが時の音楽監督だったフリッツ・ライナースヴャトスラフ・リヒテルとの間で音楽に対する見解の相違があって両者は決裂、コンサートでは互いに相手を無視しして演奏をした。ところがRCAに録音する段になって、わざわざ指揮者をエーリヒ・ラインスドルフに変更して執り行った。これがのちに名演奏と謳われ、リヒテルが西側諸国により知れ渡る結果となった。まあ皮肉な結果だが。


d0170835_13383198.jpgブラームス:
スヴャトスラフ・リヒテル - Sviatoslav Richter (ピアノ)
シカゴ交響楽団 - Chicago Symphony Orchestra
エーリッヒ・ラインスドルフ - Erich Leinsdorf (指揮)
(録音: 17 October 1960, Chicago, Illinois, United States)


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ところで、もっと面白い話がある。かの有名な仰々しい組み合わせによるこの1枚だ。1969年9月にベルリンのイエス・キリスト教会で録音されたベートーヴェンの「トリプル・コンチェルト」
その顔ぶれが凄い! 錚々たるメンバーで、ヴァイオリンがオイストラフ(61歳)チェロがロストロポーヴィッチ(42歳)そしてピアノがリヒテル(54歳)、指揮者がカラヤン(61歳)と、当代きっての超一流どころが4人も顔を揃えたビッグ企画だった。だから、ベートーヴェンの曲にしてはどちらかといえば地味な部類で、極端な言い方をすれば、ベートーヴェンの数少ない”駄作”とされた作品に、この豪華キャスト? しかも、体制の壁を越えた競演ということで当時かなりの話題をふりまいたものだ。
メンバーがメンバーだけに演奏そのものはやはり高水準をいく。でも実はその裏に隠された問題があった。ジャケットの顔写真を見ても解るように、勘のいい人はピンとくる。後の3人は笑顔なのに、前の指揮者一人が苦虫を噛み潰したような顔なのだ。

4人のメンバーの年齢からしても、カラヤンとオイストラフが最も年長、続くリヒテルが二人より7歳年下で、チェロのロストロポーヴィッチはまだ40歳を出たばかりだった。当然、61歳の二人が主導権を持つことになるが、オイストラフの柔和な性格からして出しゃばったりはしない。しかしカラヤンは申すまでもなく性格からしても連中の間を仕切りたがるタイプだ。微妙な食い違いは多々あったにせよ肝心の演奏そのものもほどほどに、それ以外の、レコーディングのスケジュールやジャケットや演奏プロフィルの写真の撮り方に関してああのこうのと執拗に注文をつけ仕切る、で、3人はしらけてしまい、いざ撮影本番になればもう3人はあっけらかんと笑いまくり、当の本人は自分の思うようにことが運ばずにどうしても渋い顔に・・・といった、まあ当らずも遠ーからずで、こんなことになった様子である。(これ事実の話)


d0170835_16282827.jpgベートーヴェン:ヴァイオリン、チェロとピアノのための三重協奏曲 ハ長調 Op. 56
ダヴィッド・オイストラフ - David Oistrakh (ヴァイオリン)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ - Mstislav Rostropovich (チェロ)
スヴャトスラフ・リヒテル - Sviatoslav Richter (ピアノ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 - Berlin Philharmonic Orchestra
ヘルベルト・フォン・カラヤン - Herbert von Karajan (指揮)


CDのジャケットがまたレコードとは違う。まあ、何枚撮っても気分は晴れない様子でありました。
でもこの曲、”駄作”では決してない。それは、聴いていて思うことだが、各部においてベートーヴェンらしからぬ一見軽そうなメロディがいくつか出てくる。「これはベートーヴェンの音楽じゃない!」と第三者がそう感じるだけであって、”駄作”とはベートーヴェンに失礼である。この、どこかベートーヴェン風じゃないところが、例えば、洒落た、ちょっと気の利いたレストランなんかでボリュームを落として流れていれば、これはこれで実に趣味の良い、上質なリスニング音楽になるのであります。
で、肝心のこのレコード演奏のできばえは? ということだが、もうひとつよくわからないのが正直なところで、なぜ、ピアニストが後ろで立って、指揮者がピアノの前に座っているのか? この不自然さ。チェロにとっては特に難曲というこのコンチェルトなので、ピアノにせず、チェロ奏者を中心にして撮ればいいのに、それではロストロポーヴィッチが一番若いので、これもおかしいのか? どうしても中心人物になりたいのでしょうなあ、まあともかくいろんな意味で、何よりもジャケットの方が気にかかる1枚なのであります。



by kirakuossan | 2018-02-22 08:39 | クラシック | Trackback