信州の名峰蓼科山麓の女神湖近くの山荘"tutti”は標高1650mにある。これほどの高地にある別荘は日本でもそう多くはない。だから平地とは気温が10℃も違うのです。 当ブログ名は2018年7月1日をもって「のんきなとうさんの蓼科偶感」に変更いたしました。


by kirakuossan
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カテゴリ:クラシック( 1002 )

2018年11月13日(火)

例年多くのピアニストが来日するが、2019年はどんな顔ぶれが聴けるのか。注目のピアニストも多勢やってくる。最近では名も知らぬピアニストも多いので、ここで月刊雑誌「音楽の友」9月号を参考に来日順に一度整理しておきたい。
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イリヤ・ラシュコフスキー(ロシア 1984)
ソヌ・イェゴン(韓国 1989)
クシシュトフ・ヤヴウォンスキ(カナダ 1965)
1985年のショパン・コンクールで第3位に入り、この時は優勝者のブーニンと共に注目された。
ゲルハルト・オピッツ(ドイツ 1953)
ベートヴェン、シューベルトのソナタを得意とする。
d0170835_20531554.jpgサスキア・ジョルジーニ(イタリア♀ 1985)
2016年モーツァルト国際コンクールで優勝、女流のホープ。
ホアキン・アチューカロ(スペイン 1932)
サイモン・ラトルも「彼が創り出す非常に独特な音色は、今ではほんの僅かなピアニストしか持っていない」」と絶賛するスペインの巨匠。
レミ・ジュニエ(フランス 1992)
2013年のエリザベート王妃国際コンクールで2位入賞。
ソン・ヨルム(韓国♀ 1986)
2011年のチャイコフスキー国際コンクールで2位入賞。
ジャン=エフラム・バヴゼ(フランス 1962)
バドゥラ=スコダに師事、1986年の国際ベートーヴェン・ピアノ・コンクールで第1位を獲得。
セルゲイ・カスプロフ(ロシア 1979)
アファナシエフが「彼は他のピアニストとはまったく違う弾き方をします。集中力の高さ、強度、時間の扱い方からして違う」と評するユニークなピアニスト。
クリスティアン・ツィメルマン(ポーランド 1956)
今さら説明不要の現代の巨匠。
ユリアンナ・アヴデーエワ(ロシア♀ 1985)
彼女は今年もやって来る。さて何を弾いてくれるのか。
キット・アームストロング(アメリカ 1992)
師でもあるブレンデルはキットについて「これまでに出会った最も偉大な才能の持ち主」と評している。
マルタ・グヤーシュ(ハンガリー♀ 1953)
リーズ・ドゥ・ラ・サール(フランス♀ 1988)
毎年のように来日する妖精ピアニストも30歳を迎えた。
クレール=マリ・ルゲ(フランス♀ 1974)
現代フランスを代表するピアニストの一人。
セドリック・ティベルギアン(フランス 1975)
1998年のロン=ティボー国際コンクールで優勝。
アンジェラ・ヒューイット(カナダ♀ 1958)
バッハ演奏に精力的に取り組む。
クレア・ファンチ(アメリカ♀ 1990)
2011年のミュンヘン国際音楽コンクールに最年少で出場、第2位に輝いた。
レイフ・オヴェ・アンスネス(ノルウェー  1970)
彼も毎年常連組の一人。
ピエール=ロラン・エマール(フランス 1957)
今や巨匠に域に入って来たピアニスト。
サリーム・アシュカール(イスラエル 1976)
ニコライ・ルガンスキー(ロシア 1972)
正確無比な技巧のうえに豊かな情緒が特徴的で、ラフマニノフ作品の解釈に秀でる。
d0170835_20453187.jpgアレクセイ・ヴォロディン(ロシア 1977)
非常に繊細なタッチと華麗な技巧が高く評価され、世界の一流オーケストラから常に引っ張りだこの存在。
エリソ・ボルクヴァゼ(グルジア♀ 1967)
アンヌ・ケフェレック(フランス♀ 1948)
今年も健在。
バリー・ダグラス(北アイルランド 1960)
1986年チャイコフスキー国際コンクールの優勝者。
アンナ・ヴィニツカヤ(ロシア♀ 1983)
2007年のエリーザベト王妃国際音楽コンクール優勝者。
エフゲニー・スドビン(ロシア 1980)
ロナルド・プラウティハム(オランダ 1954)
ウラディーミル・アシュケナージ(ロシア 1937)
息子ヴォフカと来日する。
エリック・ル・サージュ(フランス 1964)
エリソ・ヴィルサラーゼ同様、シューマンが得意。
牛牛(中国 1997)
ギュウギュウではない、ニュウニュウ。
ロジェ・ムラロ(フランス 1959)
フランソワ・デュモン(フランス 1985)
イリーナ・メジェーエワ(ロシア♀ 1975)
現在、京都市立芸術大学音楽学部専任講師でもある。
ミハイル・プレトニョフ(ロシア 1957)
もうかなりの歳と思っていたら、ロシアでは還暦とは言わないだろうが、まだ還暦を過ぎたばかり。
ヴァディム・ホロデンコ(ロシア 1986)
2013年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝。
アンドレア・バッケッティ(イタリア 1977)
アンドレイ・ガヴリーロフ(ロシア 1955)
1974年、19歳でチャイコフスキー国際コンクールで優勝する。
ケヴィン・ケナー(アメリカ 1963)
実績のある中堅ピアニスト。そういうとケビン・コスナーという好きな俳優がいたが今どうしてるのだろう?
リュカ・ドゥバルグ(フランス 1990)
クリストファー・ヒンターフーバー(オーストリア 1973)
アルセーニ・タラセヴィッチ=ニコラーエフ(ロシア 1994)
ロシアの新星。
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フレディ・ケンプ(イギリス 1977)
父親はヴィルヘルム・ケンプの遠縁、母親は日本人。
アリス・紗良・オット(ドイツ 1988)
彼女に注目して7~8年が経つ、もう30歳を迎えました。年々表現力が増す。
エフゲニー・ボジャノフ(ブルガリア 1984)
ポール・ルイス(イギリス 1972)
現在の中堅ピアニストでは3本の指に入ると思う。
パスカル・ロジェ(フランス 1951)
サン=サーンス、フォーレ、サティ、ドビュッシー、ラヴェル、プーランクらフランス近代の作曲家のピアノ曲を全曲録音している。
ルドルフ・ブーフビンダー(オーストリア 1946)
ベートヴェンの専門家として定評がある。
d0170835_20495740.jpgグロリア・カンパネル(イタリア♀ 1986)
いま最も注目を集めるピアニストのひとり。名前がイイ。
ティル・フェルナー(オーストリア 1972)
1993年のクララ・ハスキル国際コンクール優勝者。
ニコラ・アンゲリッシュ(アメリカ 1970)
ダン・タイ・ソン(ベトナム 1958)
1980年にアジア人で初めてショパン国際ピアノコンクールで優勝。
ジャン=クロード・ベヌティエ(フランス 1942)
ピーター・ゼルキン(アメリカ 1947)
言わずと知れたルドルフ・ゼルキンの息子。
シブリアン・カツァリス(フランス 1951)
カツァリスといえばやはりベートーヴェン交響曲全集(フランツ・リスト編曲)
ルーカス・ユッセン(オランダ 1993)
アルトゥールと兄弟で来日。
アドリアン・コックス(イギリス 1952)
ラファウ・ブレハッチ(ポーランド 1985)
2005年のショパン国際ピアノコンクール優勝者でもあり、いま最も注目されているショパンにもどこか似たピアニスト。
アレクサンドル・タロー(フランス 1968)
犬の名ではありません。バッハとラヴェルを得意とする名ピアニストです。
マーティン・ジェームス・パートレット(イギリス 1996)



62人のピアニストの顔ぶれをみて、まず気づいたのが、フランス人ピアニストが15人、ロシア人ピアニストが13人と圧倒的に多いことだ。最年長は86歳のスペイン人ピアニスト、ホアキン・アチューカロ、最年少は22歳のジェームス・パートレットとさまざま。
ここではやはり是非アチューカロの演奏を聴いてみたいと思い、NMLを物色、あった!あった! ショパンのピアノ曲集が聴ける。昨年9月、アチューカロ85歳での演奏、これは愉しみだ。
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ショパン:
24の前奏曲/舟歌 Op. 60/幻想即興曲
ホアキン・アチューカロ - Joaquín Achúcarro (ピアノ)
録音: 7-8 September 2017, St. Stephen's House, Oxford, UK


全体にゆっくりとしたテンポでじっくりと聴かせる。そのタッチの軽妙さと表現力は単に年輪だけではない、一種独特の深みと優しさがある。なかでも幻想即興曲、夜想曲第2番 変ホ長調 Op. 9、夜想曲第20番 嬰ハ短調(遺作)、そして舟歌 嬰ヘ長調 Op. 60は絶品である。
こんな素晴らしいピアニストがいたんだ。知らなかった。来年1月の演奏会は東京と名古屋だけなので残念ながら聴く機会はなさそうだが・・・


単に美音というのではなく、その人の信条、美学、思想、そして人間性などが自ずからにじみ出てくるような音。ピアノはときにたくさんの音をあやつるが、たったひとつの音でも人を泣かせることができる。そこまでの背景をもった音。ホアキン・アチュカロの音がそうだった。
(青柳いづみこ/ピアニスト。文筆家)




by kirakuossan | 2018-11-13 15:15 | クラシック | Trackback

普門館のカラヤン

2018年11月6日(火)

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我が家の紅葉一番乗りは小ぶりの百日紅の木。

今日はマーチ王 ジョン・フィリップ・スーザが生まれた日。マーチといえば、全日本吹奏楽コンクールの舞台として半世紀近く親しまれてきた東京都杉並区にある普門館ホールが来月で幕を下ろす。クラシックの演奏会も何度か開かれ、1975年にカルロ・マリア・ジュリーニとウィーン交響楽団がモーツァルトの41番を、1978年エーリヒ・ラインスドルフの指揮でニューヨーク・フィルが「英雄」や「新世界」「未完成」を、同年小澤征爾の指揮でボストン交響楽団がブラームスの3番。d0170835_12534047.jpgそしてなんといってもカラヤンがベルリン・フィルを率いて3度も来日演奏会を開いたことで知られる。
カラヤンは1977年、6日間にわたりベートーヴェンの交響曲全曲を披露、79年には普門館だけの演奏会で来日、9回の舞台でマーラー6番、チャイコフスキー5番、ドヴォルザーク8番やヴェルディの「レクイエム」などを聴かせた。そして3度目には、「田園」と「運命」それにブラームスの1番と3番などを披露した。これらの一部は録音されCD化されている。
普門館ホールは宗教法人立正佼成会が所有するホールで座席数が5000人と日本で最大級の規模を誇るが、現行の建築基準法の規制では再建が不可能となって今回の取り壊しとなった。

by kirakuossan | 2018-11-06 08:53 | クラシック | Trackback
2018年11月4日(日)

今日はフェリックス・メンデルスゾーンの171回目の命日にあたる。
夜になって、無性に「無言歌集」が聴きたくなった。
そう、ボリュームを少し落として、
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イルゼ・フォン・アルペンハイムのピアノで聴いている。彼女は指揮者アンタル・ドラティの奥さんだ。優美で温かいタッチはメンデルスゾーンのピアノ曲にぴったりと合う。
彼女はオーストリアのインスブルック生まれだが、その名がまた素敵だ。


メンデルスゾーン:
イルゼ・フォン・アルペンハイム Ilse von Alpenheim (ピアノ)
録音: January 1980



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無言歌

2015年9月25日(金)

Lieder ohne Worte
songs without words
romances sans paroles
無言歌

言葉のない歌=器楽曲

フェリックス・メンデルスゾーン(1809~1847)はピアノ独奏曲を生涯にわたって作曲した。それらは『無言歌集』全8巻、48曲にまとめてられ出版された。どれも難解な技巧は必要とせず、親しみやすい曲想に仕上がっている。彼の生前に6巻が出版され、あとの2巻は彼の死後に世に出た。
全48曲にはそれぞれ表題がついているが、そのうちメンデルスゾーン自らが表題をつけたのは3曲の「ヴェネツィアの舟歌」など5曲、また楽譜の冒頭にある発想標語から表題がついたものが4曲、あわせてこの9曲がメンデルスゾーンのオリジナルといえる。


メンデルスゾーン
無言歌集



自ら表題をつけた曲
"Venezianisches Gondellied"「ヴェネツィアの舟歌」
第1曲:第1巻 G Minor, Op. 19b, No. 6, MWV U78(1830年)
Walter Gieseking(pf)
第2曲:第2巻 F-Sharp Minor, Op. 30, No. 6, MWV U110(?)
Matthias Kirschnereit(pf)
第3曲:第5巻 A Minor, Op. 62, No. 5, MWV U151(?)
Walter Gieseking(pf)
"Duetto"「デュエット」(1836年)
第3巻 A-Flat Major, Op. 38, No. 6, MWV U119
Myra Hess(pf)
"Volkslied"「民謡」(1841年)
第4巻 A Minor, Op. 53, No. 5, MWV U153


d0170835_11322347.png楽譜の発想標語から表題がつけられた曲
"Fruhlingslied"「春の歌」(1842年)
第5巻 A Major, Op. 62, No. 6, MWV U161
Andras Schiff(pf)
"Trauermarsch"「葬送行進曲」(1843年)
第5巻 E Minor, Op. 62, No. 3, MWV U177
"Spinnerlied"「紡ぎ歌」(1845年)
第6巻 C Major, Op. 67, No. 4, MWV U182
「子守歌」(?年)
第6巻 E Major, Op. 67, No. 6, MWV U188

これらの9曲は自らが表題の意思表示をしたもので、特に彼が愛したものだろう。どれも素敵な曲揃いである。


これ以外につぎの作品も好きだ。

「後悔」(1832年)
第1巻 A Minor, Op. 19b, No. 2, MWV U80
「ないしょの話」(1829年最も早い時期の作曲)
第1巻 A Major, Op. 19b, No. 4, MWV U73
「慰め」(?年)
第2巻 E Major, Op. 30, No. 3, MWV U104
「海辺で」(?年)
第4巻 A-Flat Major, Op. 53, No. 1, MWV U143
Ronan O'Hara(pf)
「浮き雲」(?年)
第4巻 E-Flat Major, Op. 53, No. 2, MWV U109
「5月のそよ風」(1844年)
第5巻 G Major, Op. 62, No. 1, MWV U185
Sang Mi Chung(pf)
「朝の歌」(?年)
第5巻 G Major, Op. 62, No. 4, MWV U175
「夢」(?年)
第7巻 F Major, Op. 85, No. 1, MWV U189
「悲歌」(1845年)
第7巻 D Major, Op. 85, No. 4, MWV U190
Irina Mejoueva(pf)
「信仰」(?年)
第8巻 C Major, Op. 102, No. 6, MWV U172


by kirakuossan | 2018-11-04 21:32 | クラシック | Trackback
2018年10月30日(火)

上野の花の盛りの頃には、音楽会の帰りにここへ立寄って、演奏の評判をする人もあった。斯ういふ手合の中には、岡見の弟、福富なぞを数へることが出来る。福富は、市川、栗田、それから岡見の弟と同じやうに、高等学校の制服を着けて居て、市川よりもすこし若い位の年頃であった。芸術といふものに深く趣味をもった青年で、其方で市川なぞとよく話が合ふ。ルナンの基督伝を連中の間に紹介したのも斯人である。彼は、市川を通して、自然と連中の仲間人をするやうに成った。 
d0170835_23233492.jpg四月の音楽会にはヂットリヒが名残の独奏も有った。福富は斯の部屋へ来て、豊かな熱心な、と言って何処か斯う離れたところの有る調子で、会の光景を語り聞かせた。なにがし嬢がヴァイオリンの独奏、燕の歌の合唱、なにがし氏の風琴、これらは門人の部で、それからヂットリヒの演奏に移った。曲はベトオベンが「ロオマンチェ」次に、スポオルの「コンチェルト九番」福富に言はせると、吾国にベトオベンを伝へた最初の人は彼のヂットリヒである。其人がまさに東洋を去らうとして居る。音楽狂でないものでも胸が跳らずに居られない。まして彼の音楽会が一挺のヴァイオリンを携へて、奏楽堂の白壁の前に立って、小指一本で八音を上下した時は、スラアあり、トリルあり、半音階を迅速に上って行ったなぞ、思はず耳が熱した。斯う事こまかに音楽の評をするものは、連中で福富一人である。其日は市川も行って、涙を流して帰って来た。
「窓の外は君、桜の真盛りでせう―演奏中に雨が降って来た時なぞは、何とも言はれない心地だった」

島崎藤村「春」より



日本にベートーヴェンの音楽を最初に伝えたとされるヂットリヒ、すなわちルドルフ・ディットリヒは明治中期オーストリアから来日し、東京音楽学校で教鞭をとった人物である。奏楽堂の白壁の前で披露した作曲家スポオル? 誰のことか?調べて分かった。おそらくルイ・シュポーア(Louis Spohr)のことだろう。彼ならヴァイオリンコンチェルトを15曲も書いている。
そしてここに出てくる音楽に熱心な福富という人物は、詩人で翻訳家の上田敏がモデルである。今日30日は上田敏(1874~1916)の生誕日である。
ほかに岡見は作家星野天知、市川は翻訳家平田禿木がそれぞれモデル。


シュポア:
ウルフ・ヘルシャー(ヴァイオリン)
ベルリン放送交響楽団
クリスティアン・フレーリヒ(指揮)



by kirakuossan | 2018-10-30 00:01 | クラシック | Trackback
2018年10月21日(日)

ゲザ・アンダのモーツァルトピアノ協奏曲集を聴いていて、また火がついた。ウィーン時代のモーツァルトはオペラも書いたが、当時サリエリのオペラ人気が彼を上回っていた。しかし、ピアノコンチェルトに関しての作曲と演奏にかけてはモーツァルトの独壇場であった。モーツァルトはピアノ協奏曲を27曲書いた。11歳の時に書いた最初の4曲は他人のクラヴィーア曲からの編曲であって、オリジナルの第一作は第5番ニ長調 K. 175(1773年)からである。
面白い読み物で井上太郎著「モーツァルト・ガイドブック~新しい聴き方・楽しみ方」(ちくま新書)がある。時折り手にして読んでみるがきめ細かい内容で、具体的に演奏家も紹介していて参考になる。今日は本著に沿って井上氏の紹介で色んな演奏家で愉しんでみたい。
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ニ長調〔第5番〕 K. 175 はザルツブルクで作られた曲だが、愛着があったと見え、ウィーンに来てからフィナーレを新作のロンド K. 382 に変えたりして演奏している。
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マルコム・ビルソン (フォルテピアノ)
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
ジョン・エリオット・ガーディナー(指揮)




このジャンルで最初の傑作は《ジュノム》と呼ばれる 変ホ長調 〔第9番〕 K. 271 である。1777年、21歳のモーツァルトの並み並みならぬ意欲がこめられたこの曲には多くの録音がある。
36年録音のギーゼキングとロスバウドの演奏はSP時代によく聴いたが、他にモノラルではハスキルとザッヒャーによる54年の録音が名演。現代楽器を使った一般的な演奏ではアンダの69年の録音がすばらしい。d0170835_09521526.jpg

クララ・ハスキル(ピアノ)
ウィーン交響楽団
パウル・ザッハー(指揮)



モーツァルトがウィーンに住むようになってから最初に書いたクラヴィーア・コンチェルトは、イ長調〔第12番〕 K. 414 である。これはチャーミングな第一、第三楽章と、荘重な第二楽章の対比が美しい。私はアントルモンがピアノと指揮をした84年の録音を愛聴している。オリジナル楽器演奏ではレヴィンの即興が入った演奏が楽しめる。d0170835_10143089.jpg

ロバート・D・レヴィン(ピアノ)
エンシェント室内管弦楽団
クリストファー・ホグウッド(指揮)



モーツァルトの自作品目録の第一ページに1784年2月9日として記された 変ホ長調 〔第14番〕K. 449 は、私の愛してやまない曲の一つ。よく聴くのはアントルモンの演奏である。他にブレンデルとマリナーによる78年の録音もよい。d0170835_10260546.jpg

アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
アカデミー室内管弦楽団
ネヴィル・マリナー(指揮)





次の ト長調〔第17番〕K. 453  は人気があり、録音の数も多い。パパゲーノの歌を思わせる第一、三楽章に対し、第二楽章は明暗が激しく交錯する。これの演奏はペライアが弾き振りした全集の一枚(80年の録音)が名演。また最近、人気上昇のグードがオルフェウス室内楽団を指揮しながら弾いた81年の録音に感銘を受けた。
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リチャード・グード(ピアノ・指揮)
オルフェウス室内管弦楽団



さていよいよ人気曲である ニ短調〔第20番〕 K. 466 である。この曲を初めて聴いたウィーンの人たちは、コンチェルトでは耳にしたことのない厳しい曲想に驚いたに違いない。しかし19世紀には最も好まれる曲となる。SP時代にはワルターが弾き振りした37年の録音を繰り返して聴いたものだ。現代楽器ではカーズンとブリトゥンによる70年の録音をベストとしたい。ハスキルの録音は七種もあるが、マルケヴィッチ指揮のステレオによる60年の録音より私はモノラルのパウムガルトナー指揮の54年の録音を取りたい。第一楽章のカデンツァは無類のすばらしさだ。
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ブルーノ・ワルター(ピアノ・指揮)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団




d0170835_10572471.jpgクリフォード・カーゾン(ピアノ)
イギリス室内管弦楽団
ベンジャミン・ブリテン(指揮)





次の ハ長調〔第21番〕 K. 467 も人気が高い。これは偏に第二楽章の旋律の美しさによるが、和声と転調の精妙さを聴き逃さないように。モノラルではリパッティが若きカラヤンと組んだ50年の録音が忘れ難く、現代楽器ではアンダの61年の録音を今でも愛聴している。グルダがアバドと組んだ74年の録音は、この二人の演奏の中でのベストだろう。85年録音の内田とテイトの演奏も味わい深い好演だ。d0170835_11082945.jpg

ゲザ・アンダ(ピアノ・指揮)
カメラータ・ザルツブルク





変ホ長調〔第22番〕 K. 482
 は重厚な大曲。ハ短調の第二楽章が特に感動的、第三楽章にはオペラの一場面を思わすような変イ長調のアンダンテが出てくる。リヒテルはこの曲を三回も録音しているが、ムーティと入れた79年の録音が好演。バレンボイムも三回入れており、89年の録音がベスト。第二楽章の深い表現は他に求め難い。

d0170835_11204852.jpgスヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
フィルハーモニア管弦楽団
リッカルド・ムーティ(指揮)





イ長調〔第23番〕K. 488
 は特別愛着のある曲。モノラルではハスキルがザッヒャーと入れた54年が定評ある名演。現代楽器演奏ではグードが指揮を兼ねた81年の録音がすばらしい。これが録音後10数年もオクラになっていたのはなぜだろう。遠山慶子とゼッキの息が合った83年の録音は、第二楽章の哀感が胸に迫る。
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リチャード・グード(ピアノ)
オルフェウス室内管弦楽団





ハ短調〔第24番〕 K. 491
 はこの分野の頂点に立つ壮大な名作である。編成も最大で、これに賭けた意欲のほどは異常でさえある。現代楽器演奏ではバレンボイムの88年の録音を推す。ベルリン・フィルと独奏のうまさに舌を巻くばかりだ。内田光子とテイトの88年の録音も特筆すべきもの。カデンツァは内田の作曲。
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内田光子(ピアノ)
イギリス室内管弦楽団
ジェフリー・テイト(指揮)




ハ長調〔第25番〕 K. 503 は《ジュピター》シンフォニーになぞらえられる、実に精緻に組み立てられた大作なのに人気があまりない。それは聴き手にロマン的な感情を呼び起こす要素が乏しいからだろう。現代楽器演奏ではやはりバレンボイムの88年の録音がよい。こういう曲ではオーケストラのうまさが決め手となる。グルダとアバドがウィーン・フィルと淹れた75年の録音も優れている。オリジナル楽器演奏ではビルソンとガーディナーの87年の録音を推す。曲の構造が手に取るように聴き取れる面白さは格別である。d0170835_11563069.jpg

マルコム・ビルソン(フォルテピアノ)
イングリッシュ・バロック・ソロイスツ
ジョン・エリオット・ガーディナー(指揮)



次の《戴冠式》と呼ばれる ニ長調 〔第26番〕 K. 537 は昔ほど人気がない。愛称の故にポピュラーだった時代は終わったようである。この曲は、行きつくところまで行ってしまった作曲者が、聴衆を置き去りにしたという反省の下に書いたという考えも成り立つが、ひょっとするとウィーン以外の地での演奏を考えて書いたのではないだろうか。この曲のソロの左手のパートには書かれていない部分が多く、現行の楽譜は後世の補筆である。したがってレヴィンのような人が自由に即興を加えたCDの出現が待たれる。現代楽器演奏ではグルダとハーノンクールによる83年の録音が断然面白い。アシュケナージの全集の中の一枚(83年録音)はこの曲の輝かしさを生かした好演。d0170835_12104881.jpg

ロバート・D・レヴィン(フォルテピアノ)
エンシェント室内管弦楽団
クリストファー・ホグウッド(指揮)




さて最後の 変ロ長調〔第27番〕 K. 595 である。これが完成されたのは作曲者が死を迎える1791年初頭だが、すでに1788年頃に書き始められていたらしいことが、自筆譜の紙の透かしの研究から判明している。つまり三大シンフォニーが書かれた頃に書き始められたと考えられるのである。私はこの曲が三大シンフォニーとともにロンドンで演奏する企図の下に書かれたのではないか、という仮説を持っている。この曲のスコアを見ると他の曲とは違って、オーケストラの弦楽器のパートにトゥッティ(全員で演奏)とソロ(単独で演奏)の区別がいちいち書き込んである。それは書き込む理由があったからである。つまりウィーン以外のところで演奏を想定していたのではないだろうか。この曲は、結果的にはモーツァルトの最後のクラヴィーア・コンチェルトになったが、彼はこの曲を新たな出発の最初の曲と考えていたのではなかったか。しかもこの曲は例外的に、彼の生前にアルタリアから出版されているのだ。
アンダの69年の録音、カサドシュとセルによる62年の録音、グルダとアバドによる75年の録音など優れた演奏が多い。


d0170835_12290730.jpgロベール・カサドシュ(ピアノ)
ケルン放送交響楽団
ジョージ・セル(指揮)
録音: 1958




d0170835_12354340.jpgフリードリヒ・グルダ (ピアノ)
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
クラウディオ・アバド (指揮)





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井上太郎(1925~)氏は、作曲家、クラシック音楽評論家、作家で、湘南モーツァルト愛好会名誉会長も務める。早稲田大学理工学部を卒業後、出版界に入り、文芸書、音楽書の企画編集に長く従事。モーツァルトの魅力を、最新の学問的研究と達意の文章で生き生きと語り、幅広いファンを持つ。神奈川県平塚市在住。

by kirakuossan | 2018-10-21 09:39 | クラシック | Trackback(7)
2018年10月12日(金)

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1986年、今から32年前の今日10月12日、サントリーホールが開場した。
サントリー創業者鳥井信治郎が信念としていた「利益三分主義」。すなわち事業によって得た利益は「顧客へのサービス」「事業の拡大」「社会への還元」といった考えから、サントリーホールが生まれた。カラヤンが熱心に推奨したヴィンヤード(ブドウ畑)形式を日本で初めて採用し、演奏家と聴衆が一体となった臨場感溢れるクラシック音楽コンサート専用設計ホールが出来上がった。
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サントリーホールの落成記念演奏会、いわゆるこけら落としは同日13時30分からNHK交響楽団の演奏でベートーヴェンの交響曲第9番ニ短調「合唱付き」が演奏された。指揮はヴォルフガング・サヴァリッシュ、ソリストはソプラノがルチア・ポップ、アルト伊原直子、テノールはペーター・ザイフェルト、バリトンがベルント・ヴァイクルであった。
そして同月19日には初の外国のオーケストラ、レニングラードフィル(指揮マリス・ヤンソンス)の演奏会が開かれチャイコフスキーの第4番が披露された。さらに、同月28日から3日連続で小澤征爾の指揮でベルリンフィルハーモニー管弦楽団の演奏会が催された。曲目はベートーヴェン第4番、ブラームス第1番、最終日はリヒャルト・シュトラウスの「英雄の生涯」と「未完成」。この二つの演奏会、当初はエフゲニー・ムラヴィンスキー、ヘルベルト・フォン・カラヤンが振る予定だったが二人とも変更された。
(写真はいずれも2015年11月18日フランクフルト放送交響楽団演奏会時撮影)




by kirakuossan | 2018-10-12 22:02 | クラシック | Trackback
2018年9月9日(日)

寂しいが肩の荷が下りて
永遠に楽団の一部になった気がするでしょう。

どんな人間になるかは生き方次第です。
我々は音楽のために生きるわけではない。
よりよく生きるために音楽があるのです。
 
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d0170835_23101974.jpg31年前、初めてベルリンフィルハーモニー管弦楽団の指揮台に立ち、緊張の中演奏したのはマーラーの交響曲第6番「悲劇的」であった。そしてまた今、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団を去る最後の演奏会で同じ6番を指揮する。



サイモン・ラトルは語る。この演奏会は別れの演奏会であると同時に、新しい関係の始まりの演奏会でもあると。
ラトルは2002年9月から2018年6月までの約16年にわたり首席指揮者兼芸術監督をつとめた。フェアウェル・コンサートは6月19日 フィルハーモニーで催された。ラトルの在任中、ベルリンフィルの演奏に直に触れることが一度もできなかったこと今となっては心残りである。

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d0170835_23142213.jpg(2018年9月9日夜 Eテレで放映)

by kirakuossan | 2018-09-09 21:51 | クラシック | Trackback(9)

妖精10年の足跡

2018年9月9日(日)


妖精から小悪魔へ、そして大人の女性へ・・・

Ott, Alice Sara



☆リスト:超絶技巧練習曲集(全12曲)
 録音:2008年6月、ハンブルク
☆ショパン:ワルツ全集 
 録音:2009年8月、ベルリン、テルデックス・スタジオ
☆チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
リスト:ピアノ協奏曲第1番 変ホ長調 S.124
ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団 トーマス・ヘンゲルブロック(指揮) 
 録音:2009年11月 、ミュンヘン
☆ベートーヴェン:ピアノ作品集
 録音:2010年8月、ハンブルク
☆ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」ほか
 録音:2012年7月、サンクト・ペテルブルク、マリインスキー劇場
☆ストラヴィンスキー:春の祭典(作曲者による2台ピアノ版)
 録音:2013年9月、ベルリン
☆グリーグ:ピアノ協奏曲イ短調 op.16、抒情小曲集ほか
バイエルン放送交響楽団 エサ=ペッカ・サロネン(指揮)
 録音:2015年1月(1)ミュンヘン、ヘルクレスザール、2016年4月(2)ベルリン、マイスター・ザール
☆ドビュッシー・サティ・ラヴェル作品集
 録音:2018年3月、ベルリン



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by kirakuossan | 2018-09-09 08:19 | クラシック | Trackback
2018年9月8日(土)
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ベルリン国立歌劇場改修にともない隣地にあった歌劇場の収蔵庫だった古い建物を改築して作られた室内楽ホール、ブーレーズにちなんでピエール・ブーレーズザールと名づけられた。楕円形のステージで、客席が舞台に限りなく近く、より客席との一体感が実現した。ダニエル・バレンボイムが監修し、フランク・ゲーリーが設計、音響設計はサントリーホールや京都コンサートホールを手掛けた永田音響設計の豊田泰久が受け持った。
昨年10月そこでのオーケストラ演奏が収録された。手兵のシュターツカペレ・ベルリン(ベルリン国立歌劇場オーケストラ)をバレンボイムが指揮したブラームス。
響きを聴いてみて、比較的残響音の少ない、どちらかといえばフラットな印象で、その音楽はたしかにより身近でより自然に感じ取れた。
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バレンボイムは25年前に、シカゴ交響楽団と同じブラームスの録音を残しているが、これとの聴き比べもおもしろい。そういえば先日チケットが送られてきた来年2月のムーティ&シカゴ響公演の演目もブラームスの1番と2番である。


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ブラームス:
交響曲第1番 ハ短調 Op. 68
Symphony No. 1 in C Minor, Op. 68
シュターツカペレ・ベルリン - Berlin Staatskapelle
ダニエル・バレンボイム - Daniel Barenboim (指揮)
録音: October 2017, Pierre Boulez Saal, Berlin


by kirakuossan | 2018-09-08 09:08 | クラシック | Trackback
2018年8月30日(木)

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来年2月のシカゴ交響楽団の演奏会
見事抽選に当たりましたぞ!!

≪予定演奏曲目≫
ブラームス:
交響曲第1番 ハ短調 op.68
交響曲第2番 ニ長調 op.73

ブラームスの二本立て、今からホント楽しみです。

by kirakuossan | 2018-08-30 19:37 | クラシック | Trackback