2020年 05月 29日
SCRIBENDUM/BOX盤「ムラヴィンスキーの芸術」全7枚をすべて聴き終えて。 |
2020年5月29日(金)
・グリンカ:『ルスランとリュドミュラ』序曲、・ムソルグスキー:モスクワ河の夜明け、・リャードフ:バーバ・ヤガー、・ショスタコーヴィチ:交響曲第6番、・グラズノフ:『ライモンダ』第三幕への前奏曲、・モーツァルト:『フィガロの結婚』序曲、・モーツァルト:交響曲第39番、・シベリウス:トゥオネラの白鳥、・シベリウス:交響曲第7番、・ワーグナー:『ローエングリン』より第三幕への前奏曲、ワルキューレの騎行、・ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲、・バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽、・オネゲル:交響曲第3番『典礼風』、・ベートーヴェン:交響曲第4番 OP.60、・ベートーヴェン:交響曲第5番 OP.67『運命』、・ブラームス:交響曲第3番 OP.90、・ショスタコーヴィチ:交響曲第6番 OP.54、・チャイコフスキー:幻想序曲『フランチェスカ・ダ・リミニ』 OP.32、・チャイコフスキー:交響曲第5番 OP.54・・・など。(CD7枚)
HMV
音質・演奏の両面でムラヴィンスキーを代表する超名演が揃っていると高く評価されるモスクワでのライヴ録音を集めた1965年セットと、1972年セットは、共にHMVではベストセラーとなっていましたが、今回、両者をまとめた7枚組のお買得ボックスが登場することになりました。
【恵まれたモスクワ】旧ソ連では、首都モスクワと他の都市では録音機器など設備面で大きな差が付けられており、早くからステレオ化されていたモスクワに対して、たとえばレニングラードは1970年代になるまでまともなステレオでの録音ができないというような状態でした。そうした事情をもろに象徴するのがこれらモスクワ録音の数々で、首都への遠征ということで気合いも十分な名演が、当時ソ連の最高の技術で録音されているのが何よりの朗報。西側でも1965年頃のライヴ録音でこれだけのクオリティのものはほとんど無いことを考えると、このコンビ本来の鍛え抜かれた対向配置サウンドが、こうした良質なステレオ録音で残されたのはほとんど奇跡的な出来事ではないかとさえ思えてきます。
(HMVの解説文より)
とにかく凄まじい演奏の連続で、まさにムラヴィンスキー&レニングラード・フィルのエキスがビッシリと詰った充実の7枚だった。
久々に思い出して聴いてみたが、もう圧倒されっぱなし。
さらに、HMVの解説にもあるように、当時ソ連の最高の技術での録音は素晴らしいもので、しかもライヴ録音だけに緊張感がひしひしと伝わってくる。
とやかく言うより、ここはプロの音楽評論家の平林直哉氏の生の声がもっとも実態を現してくれるであろうから、勝手ながら抜粋して掲載します。
平林直哉「スクリベンダムのムラヴィンスキーについて」
スクリベンダムから発売されるムラヴィンスキーのCDが届き、聴き始めたら、これがとんでもないことになった。音質が素晴らしく鮮明なので、全く初めて接したような感動に打ち震え、むさぼるように聴いた。
ムラヴィンスキーといえば、最近ではアルトゥスの日本公演ライヴ、あるいはドリームライフのドキュメンタリー映像など、それらの解説を書かせていただいた関係上、個人的にはここしばらくは過度と言えるほどムラヴィンスキーを聴き、観ていたのである。にもかかわらず、今回の試聴盤は2度、3度と繰り返し聴いた。いや、聴き狂っていたと言った方が適切だろう。その間、身体は金縛りのようになり、場面によってはぞぞと鳥肌が立ち、何度も目がうるうるしてきた。凄い、凄すぎる、心底そう思った。
この音質で聴くと、前から高く評価していたバルトークの《弦、チェレ》やオネゲルの交響曲第3番が、いっそう凄まじく聴こえる。前者の精妙さ、そして後者の空間を引き裂くような、悪魔的な音塊。あまりにも有名なグリンカの《ルスランとリュドミラ》序曲も改めて感動したし、ワーグナーの《ローエングリン》第3幕前奏曲、《ワルキューレの騎行》なども生で聴いた凄さを思い出し、思わず「これだ、これこそムラヴィンスキーの音だ!」と心の中で叫んでしまった。
モーツァルトの《フィガロの結婚》も、以前はやたらと骨張った演奏だと思っていたが、今回、その真価が分かったような気がする。リャードフの《ババ・ヤガー》も、その表現力の幅広さに驚いた。さらに、ヒンデミットの《世界の調和》のような、個人的には全然好きではない曲でさえも、一気に聴き通してしまった。
べートーヴェンの交響曲第4番は日本公演ライヴや1973年録音と酷似しており、特に触れる必要はないと思うが、重要なのは同じく交響曲第5番の方である。この第5はムラヴィンスキー唯一のステレオによる録音で、ムラヴィンスキーの第5の中でも突出しているだけではなく、あらゆる第5の中でも特筆大書されるべき名演である(私は以前、BMGとロシア・メロディアとの録音契約終了のニュースを聞いたとき、予備のためこのCD=BVCX4029を1枚余分に買ったほどだった)。ともかく、私自身、プロのオーケストラがこれほど燃え立った例はほかに知らない。特に第4楽章、それは身の毛もよだつほどのすさまじさだ。
今まで、ムラヴィンスキーのベートーヴェンの録音は第4番と第6番「田園」だけと思っていたら、そうだ、この1972年ロシアでのライヴ収録の第5番があったのだ。平林氏がいわれるように、あらゆる第5の中でも特筆大書されるべき名演である。最も聴きたい5番はないものと思っていただけにこれは感激ものだった。
さらに苦手なバルトークだが、3枚目に収録されている弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽の解像度の高い音質に惚れ惚れし、曲そのものが一ぺんに好きになって仕舞ったほどである。
HMVのHPにも「限定盤完売/限定盤の為完売しております。申し訳ございませんがご注文いただけません。」とある。今では手に入らない。まさにこのBOX盤はお宝ものである。
今日は満足の一日でした。
by kirakuossan
| 2020-05-29 15:55
| クラシック
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