2020年 04月 25日
「ぼくの101曲」 その12 ハイドン:交響曲第102番 |
2020年4月25日(土)
ハイドン(1732-1809)
フランツ・ヨーゼフ・ハイドンは「交響曲の父」と呼ばれるだけあって実に多くの交響曲を書いた。完成したのは全部で106曲。番号付きが第104番までと、あと交響曲A(別名第107番)、交響曲B(別名第108番)ということになる。まあこれだけあるとどれが最も好きかと問われれば、ずいぶん悩みそうにも思うが、実は決まっているのである。なんといっても第102番変ロ長調。
「ぼくの101曲」 その12
ハイドン(1732-1809)
交響曲第102番 変ロ長調 Hob.I:102
Symphony No. 102 in B-Flat Major, Hob.I:102
<交響曲>作曲1794年
だいぶ昔、ブルーノ・ワルターのハイドンの交響曲88番「V字」100番「軍隊」、そして102番の入ったCDを買った。お目当てはもちろん前の2曲、コロンビア交響楽団とのステレオ録音。そして付け足しのような102番、しかもニューヨーク・フィルとの共演はいいとしても、これだけがモノ録者。ところが初めて聴いてびっくり!
鮮烈な印象を持った。 第1楽章の主題の再現部の明るいメロディ、第4楽章の軽快感も素敵だが、白眉は第3楽章の冒頭部からの、ズッタッタ、ズッタッタ、ズッタタッ~ララのレントラー風の旋律がくどいほど繰り返されるところ。2分ほどのあいだに8度も繰り返され、その2分後にまたあと4度繰り返され5分ほどの楽章を終える。これが妙に新鮮味が感じられ、即座に永遠に忘れられない曲となった。あとで知るが、レントラーは3/4拍子の南ドイツの民族舞踊のリズムで、ハイドンはこれを少しアレンジしたようなリズムである。第2楽章では生涯初めて弱音器をつけたトランペットを使用している。
ハイドンの後半の交響曲で、第100番の「軍隊」に始まって、101番「時計」、103番「太鼓連打」、最後の104番「ロンドン」と、いずれも標題がついて曲自体もよく知られている。ところがそれらの間に挟まれた102番だけがどうしてか唯一標題がついていない。第96番に「奇蹟」というのがあるが、もしかすれば、本当はこちらの102番の方に「奇蹟」とつけても良さそうなのである。
というのは、1795年2月2日ロンドンの国王劇場で初演されたが、ハイドンがステージに出て来るや、観客が彼を見ようと舞台の袖まで駆け寄った。そのため、真ん中部分の席がぽっかりと開いてしまい、その直後にシャンデリアが突如落下、幸い誰一人けが人が出ず、「奇跡だ、奇跡だ!」とみな叫んだ。ところがどうしたことかこれが第96番の初演時という話にすり替わってしまって、そちらの方に「奇蹟」という標題がついてしまったということらしい。102番「奇蹟」であったら、多分もっと人気が出た曲なのに。
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団 - London Philharmonic Orchestra
オイゲン・ヨッフム - Eugen Jochum (指揮)
録音: October 1971, Assembly Hall, Barking, London, United Kingdom
by kirakuossan
| 2020-04-25 20:33
| 「ぼくの101曲」
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