2018年 12月 25日
2018年の演奏会を振り返って |
2018年12月25日(火)
2018年の演奏会を振り返って・・・
今年は例年になく出かけた演奏会が少なかった。海外のオーケストラ来日公演が2つ、それに国内のオーケストラが4つ、計6公演にとどまった。
白梅が咲くころ、京都コンサートホールへ出かけて聴いたのは、あのバーンスタイン以来44年ぶりのニューヨーク・フィルハーモニック。
五嶋 龍を聴くのはたしか今日が2度目だが、通俗的名曲のメンデルスゾーンなので正直あまり期待してはいなかったが、それが感動的な名演奏であった。感動的というよりもっと適格な表現をすれば、”聴き惚れた”とでも言おうか、メンデルスゾーンのコンチェルトが新鮮に耳を捉えた。
野太い響きは健在であった。アメリカのオーケストラというとどちらかといえば煌びやかな印象を持つが、このオーケストラはその煌びやかさと、どこかロシアのオーケストラにも似たような土の香りがした。
3月11日(日)
ニューヨーク・フィルハーモニック2018日本ツアー:京都公演
指揮/ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン(ニューヨーク・フィルハーモニック次期音楽監督)
ヴァイオリン/五嶋 龍
ヨハン・ワーヘナール:序曲「シラノ・ド・ベルジュラック」op.23
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」
そして、オランダ人指揮者ズヴェーデンは風貌からしてどんなに大男かと想像していたら、がっしりとした体格だが意外と背は低かった。終始腰のあたりの高さで流麗なタクトを振る。「春の祭典」は好演で、アンサンブルに長け、金管の響きは、まさに”ロシア風”な錯覚にとらわれた。
紅葉もピークを過ぎた頃、兵庫県立芸術文化センターでバイエルン放送交響楽団の演奏会が催された。やはり高い水準の演奏を聴かせてくれたが、想像した通りドイツのオーケストラの響きと言うより、どちらかというとアメリカやイギリスのオーケストラの音を彷彿させた。それは特に管楽器の音色に顕著であった。
前半のモーツァルト「ジュピター」は特段印象に残らなかったが、マーラーはやはりメータの面目躍如と言ってもよい出来栄えではあった。でも残念ながらそれをさらに上回るような白眉の名演とはいかなかった。
マリス・ヤンソンスの代役で棒を振ったズービン・メータにとって神戸は2009年以来2度目、決して万全でない体をおして、来日してくれたことに聴衆から惜しみない拍手が送られた。これに応えて最後に車椅子でふたたび登場、更なる盛大な歓声を浴びた。
11月23日(金)
バイエルン放送交響楽団演奏会
指揮/ズービン・メータ
モーツァルト:
交響曲 第41番「ジュピター」
マーラー:
交響曲 第1番「巨人」
次に国内オケでは、大阪フィルハーモニー交響楽団でイタリアの二人の新星指揮者の颯爽とした演奏が聴けたのは大きな収穫だった。ひとつは2月にあった第515回定期でアンドレア・バッティストーニの指揮でレスピーギの交響詩ローマ三部作。5月には第518定期でダニエーレ・ルスティオーニの棒で、これまたイタリアもので、メンデルスゾーンの第4番、そしてマーラーの第4番。
2月17日(土)
大阪フィルハーモニー交響楽団
第515回定期演奏会
指揮/アンドレア・バッティストーニ
曲目/レスピーギ:
交響詩「ローマの噴水」「ローマの祭り」 「ローマの松」
最初から最後まで心地よい緊張の連続で、レスピーギのオーケストレーションが如何なく発揮され、正直想像以上の凄い演奏となった。これほどの難曲をこともなくまとめるあたり、やはりバッティストーニはただものではない。
しかも今日の大阪フィルはよく引き締まったできばえで100点満点。とくに心配していた管楽器群はほぼ完ぺきの出来で120点満点。今まで何度も聴いて来たが文句なしに今日の演奏が今までのトップにランクされる。やはり指揮者によってこうも違って、潜在能力が引き出されるんだなあ、と改めて感心した。
5月30日(水)
大阪フィルハーモニー交響楽団
読売日本交響楽団 第20回 大阪定期演奏会第518回定期演奏会
指揮/ダニエーレ・ルスティオーニ
ソプラノ独唱小林沙羅
メンデルスゾーン:
交響曲 第4番「イタリア」
マーラー:
交響曲 第4番
ダニエーレ・ルスティオーニは最初ステージに登場した時は緊張のためか幾分固い表情だったが、メンデルスゾーンの「イタリア」の、あの軽やかなメロディーが鳴り出すや、あとは思う存分のしなやかな動きで聴衆を魅了した。ただ団員の表情が皆固く、にこりともせず指揮者と目を合わすでもなく、曲が「イタリア」なのだからもっともっと指揮者と一緒に乗って欲しかった。
マーラーも好演で、大フィルもずいぶんレベルアップしているな、と感じさせられた。若手の外国人指揮者をこうして続けて招いたりして、そうした冒険が功を奏しつつあるのだろう。そしてソプラノ小林沙羅、見た目以上に声量があり、低い声域により魅力を感じた。
そして今年も読響の大阪公演を6月に聴いたが、マーラーの「復活」が思い出深い演奏会となった。
6月29日(金)
指揮/コルネリウス・マイスター
ソプラノ/ニコール・カベル
メゾ・ソプラノ/アン・ハレンベリ
合唱/新国立劇場合唱団
マーラー:
交響曲 第2番「復活」
昨年4月に読売日本交響楽団の首席客演指揮者に就任したコルネリウス・マイスターは、オーソドックスで手堅い指揮をするようにうかがえた。マーラーの交響曲は聴くこともさることながら普段ではあまり目にしない楽器もいろいろ登場して見ても愉しめるところがあった。
また新国立劇場合唱団が大阪で聴けるとはラッキーで、この伝統ある合唱団、これ以上は無理と思えるほどの澄み切ったピアニシモはまるでこの世にはありえないような美しさを醸し出していた。
さらにもうひとつの収穫はメゾ・ソプラノのアン・ハレンベリを知り、聴けたことだ。スウェーデン生まれの彼女の大柄で豊満な身体から発せられる声量豊かで安定した歌声は きわめて荘重に、そして素朴に聴く者を魅了した。
by kirakuossan
| 2018-12-25 21:51
| クラシック
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