2018年 12月 06日
世界のオーケストラ/第35回 <ハレ管弦楽団> イギリス最古のオーケストラ |
2018年12月6日(木)
イギリスのオーケストラといえばロンドン交響楽団、フィルハーモニア管弦楽団、次いでロンドン・フィルハーモニー管弦楽団、そしてBBC交響楽団やロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団が思い起こされるが、もうひとつ肝心なオーケストラを見落としがちである。それはイギリスで最古の歴史を誇るハレ管弦楽団である。ロンドン響は1904年創立、ロンドン・フィルが1932年、フィルハーモニアやBBCにいたっては、それぞれ1945、46年と比較的新しい。その中でハレ管弦楽団は1858年と群を抜く古さで、19世紀半ばに誕生、ロンドン響より遡ること半世紀前である。
エルガー:
マーラー:
エルガー:
ハレといえばバルビローリ、バルビローリといえばハレ、といったことでハレ管の結ぶつきはあまりにも深いが、ジョン・バルビローリが首席に就いたのは戦中の1943年から戦後にわたり、例の大阪万博直前の急逝まで27年間。トーマス・ビーチャム (1915-20)やマルコム・サージェント (1939-42)の後継であった。
中興の祖がバルビローリであれば、ハレ管弦楽団を興したのは、ドイツ人ピアニストでのちにイギリスに帰化したカール・ハレである。そもそも1857年のマンチェスター美術展で演奏会を催すために結成されたもので、その後引き続き組織を存続させることとなり、ハレが1895年76歳で亡くなるまでの37年間、首席指揮者の地位にあった。
ところで意外なことに古い歴史を有しながら、なぜか来日に恵まれなかった。初来日が前任の首席指揮者ケント・ナガノ(1992-99)のときで、1996年とごく最近の出来事である。その3年後に再びやって来たが、その後はどうだか定かでない。他のイギリスのオケと違って、日本へやって来たという記憶はほとんど薄いのである。2000年から現在までマーク・エルダーという指揮者が首席の地位にあるが、エルダー自身、イギリスのプロムスなどでは名を聞くが、日本ではなじみが薄いからおそらく来日していないのだろう。
いま、そのエルダーが指揮するエルガーの管弦楽曲を聴いているが、ゆったりとしたテンポで落着いた演奏を聴かせる。このオーケストラの響きはどちらかといえば印象に残りにくいような気がするが、それはなにも演奏水準が低いというのではなく、聴く者にとって耳障りがなく元来自然と入ってくる響きなのである。でも普段は優しくても、バルビローリの指揮でも見られるような、時には想像を絶するほどの根太の響きも聴かせる。そんな実力を蓄えた素晴らしいオーケストラ、演奏会場で是非とも生の音を聴いてみたいものである。

ハレ管弦楽団
マーク・エルダー(指揮)
録音: 29-30 September 2015, Hallé St Peter's Ancoats, Manchester

ディートリヒ・ヘンシェル(バリトン)
ハレ管弦楽団
ケント・ナガノ(指揮)

ハレ管弦楽団
ジョン・バルビローリ(指揮)
録音: 1956
by kirakuossan
| 2018-12-06 20:24
| 世界のオーケストラ
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