2018年 06月 05日
「神宮の奇跡」 ① |
2018年6月5日(火)
11日から第67回全日本大学野球選手権大会が開かれる。わが立命館大学は関西学生野球連盟代表として2年ぶり18回目の出場を果たした。
過去66回の大会で関西から優勝を飾ったのはわずかに7度、関西学生連盟から近畿大が4回、関西大が2回、それに阪神大学野球連盟からあの上原浩治を擁して栄冠を勝ち得た大体大だけである。最多優勝は東京六大学野球連盟が25度、東都大学野球連盟が24度とこの二リーグで実に7割以上を占めている。昔から”人気の東六、実力の東都”と評されたが、まさに実力伯仲なのである。今年は東六から慶応大、そして東都からは東洋大が出場することになっている。ところでその東都大学リーグは例年実力が接近しており、長い歴史の中で最多優勝が専修大で32度、次いで駒沢大の27度、亜細亜大の25度、中央大の24度、日本大の23度、東洋大の19度と続く。そのなかで後にも先のもたった一度だけ優勝に輝いたチームがある。今では下位の3部リーグに甘んじてはいるが、学習院大学野球部である。
門田隆将著「神宮の奇跡」はその様子を語ったノンフィクション小説である。
「生きて帰ってきた」
俊秀は、そのことが信じられなかった。父も妹も死んだ。友だちも次々命を落としていった。自分だけが生きて帰ってきた。
博多港で父を亡くしたその九歳の子と、
「がんばってね」
「幸せになろうね」
と言って、別れたことを井元は覚えている。
あの子はその後、どうなったんだろうか。七〇歳を超えた今、井元はあの時の少女が幸せな人生を送ったのかどうか、時折思い出している。
野球とはほど遠い、戦後まもない満州や朝鮮での過酷な生活ぶり、やがて引き揚げて日本へ帰ってくる。それまでの様子を生々しく描いたその書き出しから度肝を抜かれるが、そのことがこの小説をよりいっそうドラマチックなものに仕立て上げている。
つづく・・・
by kirakuossan
| 2018-06-05 06:48
| 文芸
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