2017年 09月 28日
カラヤン最後の収録演奏 |
2017年9月28日(木)
ブルックナー:
リヒャルト・シュトラウス:
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おはようございます、名曲のたのしみ。今日は八月最後の日曜日なので、「試聴室」の番です。カラヤンをしのんだプログラムをお送りしたいと思います。
カラヤンが死んだのは七月十六日だったから、もうひと月あまり。死んだ当座は、日本でさえ、テレビとか、ラジオだとか、新聞だとか、その他、数えきれないほどのいくつものマス・メディアがその死について伝えたり、それをしのぶ番組がありました。僕もこの時間でささやかな、彼をしのぶ記念演奏会を提供しょうと思うんです。彼の人柄だとか、履歴だとか、業績だとか、そういうことはもう十分に語りつくされているといっていいんじゃないでしょうか。僕はそういうことと別に、彼の音楽の作りかたについて自分の考えていることを、実例に即して、いくつかの要点にまとめて、お話してみたいと思うんです。
人柄はやっぱり、みんなのいうとおり、いろんなね、欠点というのもおかしいけど、弱点があるような人だったかもしれないし、ナチの党員だったっていうことがあって、決してきれいな経歴ではないですよね。権力欲も強かったし、でもそういうことをいってカラヤンをだめだっていうのは・・・、話は本当はちょっとちがいますけども、たとえばリヒャルト・ワーグナーをね、借金を踏み倒す天才で、どこへ行っても借金ばっかりしては逃げて歩いていたとか、人の奥さんを横取りするのを、数えきれないこともないかもしれないけど何人もやったとか、「もう本当にひどい不品行な男だ、だからあいつの音楽はだめだ」っていうのに、ちょっと似たようなところがあるような気がするんですよ。たしかにそういうことはあったでしょう。でもね、だからあいつは音楽家としてだめだ、そういう人間にはいい音楽ができないっていうのは、そんなこと、ちょっといえないですよ。そこがやっぱり、芸術の面倒くさいところだ。立派な人間が立派な芸術を残すというのは、鉄則でしょうけども、人間が立派であれば、いい芸術を残すともいい切れないし。ワーグナーのような人もいるんですからね。ベートーヴェンだって、弱点だらけだったらしいですよ。
『名曲のたのしみ吉田秀和』第2巻より「カラヤンをしのんで」
1989年8月27日放送分
ヘルベルト・フォン・カラヤンが1989年7月に亡くなるその3か月前にウィーンで収録された彼の最後の曲がブルックナーの第7番であった。当時は長年共にしたベルリン・フィルとも仲たがいし、この演奏はウィーン・フィルハーモニーとのものであった。今朝のNML新着タイトルのヘルベルト・フォン・カラヤン - 1980年代録音集 4から聴いてみる。
ブルックナーは交響曲第6番を書き終えた後すぐに次の作曲にとりかかった。交響曲第7番は、吉田氏の話にも出てくるリヒャルト・ワーグナーの死への追悼の意を表現したことでも知られているが、1881年9月末から第1楽章の作曲が開始された。 スコアは先に第3楽章スケルツォが1882年10月に出来上がり、第1楽章のスコアはその年の暮れに完成する。そして第2楽章の執筆中に、敬愛するワーグナーが危篤に陥り、ブルックナーは「ワーグナーの死を予感しながら」この稿を書き進め、1883年2月13日にワーグナーが死去すると、その悲しみの中でコーダを付加し、第184小節以下をワーグナーのための「葬送音楽」と呼ぶこととした。そして第2楽章のスコアは2か月後の4月21日に完成、その年の9月5日に全4楽章が完成した。

ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン (指揮)
(録音: April 1989, Grosser Saal, Musikverein, Wien, Austria)
カラヤンは同曲を1975年にベルリン・フィルとの演奏でも遺している。エネルギッシュでいかにも脂が乗った頃の指揮ぶりがうかがえる。一方、こちらの最後の収録は、さすがに枯れた趣が味わえる。
ところで前出の「名曲のたのしみ」で吉田氏がカラヤンをしのんで放送された曲目は、モーツァルトのディヴェルティメント第15番K287、リヒャルト・シュトラウスの「四つの最後の歌」より第4曲《夕映えの中で》、それにヨーゼフ・シュトラウスのワルツ「天体の音楽」であった。
これからきくシュトラウスの「四つの最後の歌」の最後、「夕映えの中で」、これは題名のとおり、リヒャルト・シュトラウスの最後の歌、長い人生の果てに、生きてきた道を振り返って、静かに終わりのくるのを見つめている、諦観っていうかな、そういう音楽です。そういうカラヤンの気持ちと、ヤノヴィッツの歌いかたと、この曲と。やっぱりカラヤンが残した演奏のなかで、ひじょうに光るもののひとつだと思います。グンドゥラ・ヤノヴィッツの独唱で「夕映えの中で」、これききましょう。

「4つの最後の歌」 Op. posth. TrV 296より
グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
(録音: February 1973, Jesus-Christus-Kirche, Berlin, Germany)
by kirakuossan
| 2017-09-28 16:43
| クラシック
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