2012年4月5日(木)ロヴロ・フォン・マタチッチ(Lovro von Matačić, ユーゴスラビア(現クロアチア)、1899~1985)
よく来日し、NHK交響楽団を指揮したため、馴染みが深い指揮者。
1919年ケルン歌劇場の副指揮者としてデビュー、1933年にザグレブ国立歌劇場の第1指揮者、1938年にはベオグラード国立歌劇場の音楽総監督に就任する。
戦前からベルリン・フィル、パリ・オペラ座などに幅広く客演を行なったため、ナチスへの協力者とされ、戦後はしばらく不遇の時を過ごす。1954年から本格的な活動を再開し、バイエルン国立歌劇場、ウィーン国立歌劇場、ミラノ・スカラ座、ローマ歌劇場、ドレスデン国立歌劇場、ベルリン国立歌劇場などに次々と登場。「ローエングリン」を振ってバイロイト音楽祭でも振り、一貫してオペラ指揮者としての道を歩んだ。コンサート指揮者としてはドイツ・ロマン派、とりわけブルックナーを得意とし、その雄大なスケールの音楽づくりには定評があった。1967年にはNHK交響楽団名誉指揮者の称号を与えられる。
1965年の初来日以来、毎年のように来日、しかし75年来日のあと体調もすぐれず10年近いブランクがあり、そのあと、突如84年に最後の9回目の来日を果たす。N響の定期演奏会でブルックナーの第8番、ベートーヴェンの交響曲第2番、ブラームスの交響曲第1番とベートーヴェンの交響曲第7番と3回の定期をこなしたのが最後であった。
とくに
ブルックナーのこの時の演奏は今も語り草となっている名演である。☆演奏スタイルは・・・昔、よくTVで拝見したことがあるのは、人なつっこく、愛嬌がある人で、その容姿からは想像もつかない?ほどの集中力を発揮させた演奏であった。音質は重厚で、かつ極めて緊張感を持って壮大に鳴り響いた。
☆残した録音は・・・ブルックナー:交響曲第8番(ノヴァーク版)NHK交響楽団/ ロヴロ・フォン・マタチッチ(指揮)
1984年3月7日:NHKホール(N響 第925回定期公演)
このN響定期925回の演奏会を当時の楽団のひとりが語る。「マタチッチ先生が指揮すると、会場全体が一体となって沸きに沸くんですよ。なんでこんなに興奮するのかなぁ、と思うくらいに。あのような演奏会は、そうあるもんじゃない」(元NHK交響楽団 首席トランペット奏者 )
「なにしろブルックナーといえばマタチッチにとって最も大切な作曲家、わけても8番は得意中の得意だ。84年3月7日、NHKホールの1階席最前列にすわって聴いたときの、手に汗にぎる感動が昨日のことのように思い出されてくる。コーダの豪快な迫力についてはいわずもがなであろう。当日NHKホールにすわっていたぼくの感動、魂の震撼はとてもとても筆舌に尽くせるものではなかったのである。(評論家・宇野功芳)
毒舌評論家をしてここまで言わすほどの演奏とは、余程だったに違いない。
☆私見・・・これだけの活躍をしたにもかかわらず、録音が残っているのは少ない。とくに
オペラ録音がほとんど残っていないのが不思議なくらいで、残念でもある。先日、『N響アワー』の「最終回スペシャル・心に残る名演奏」で例のブルックナー第8番が放映されていたようだ。見落としたのが返す返すも残念で堪らない。
☆Myライブラリーより・・・ブルックナー:交響曲第9番ニ短調(原典版)チェコ・フィルハーモニー管弦楽団/ ロヴロ・フォン・マタチッチ(指揮)
1980年12月:プラハ、芸術家の家(ルドルフィヌム)
彼はチェコ・フィルとも親密な間柄であった。これはその貴重なCD。