2016年 07月 08日
リー・コニッツのB面 |
2016年7月8日(金)
リー・コニッツの『モーション』のB面をお願いします、とその少女はいった。恥ずかしながら、店を始めたばかりの僕は、エッ、そんなアルバムあったっけ、という体たらく。見つけ出してかけてみれば、これが素晴らしい。ジャズで一番大切な即興演奏のスリルが、ハッタリなしのごつい形で提示されている。
それがきっかけでその娘はうちのウェイトレスに納まったのだが、当時はずいぶん彼女に教えられたものだ。絵描きの卵だったが、何年かして店をやめ、「スイングジャーナル」の編集長だった村田文一さんと結婚し、そして別れたという噂を聞いた。
三〇年ぶりに彼女が店に遊びにきた。僕と同年代のはずなのに、相変わらずのボブ・カットはお世辞抜きに昔のままだ。
「文一元気?」と、彼女は訊いてきた。「うん」と答え、昔話に花が咲き、時間が一気に押し戻される楽しいひとときを過ごした。~
昔気質のジャズ・ファンの中には、自分の本当に好きなミュージシャンの話はしない人いる。この気持ち、わからなくもない。ジャズという音楽は人間の深いところを抉るので、好きなアルバムについて語るのは心理テストをされているようなものだ。
「スイングジャーナル」の編集長だった村田文一は、二〇年以上も昔、彼が「ジャズランド」という雑誌をやっていたころからの知り合いだ。
コルトレーンの八枚組アルバムが出るので、記念に「いーぐる」でコルトレーン特集をやることになった。たまたまその日が誕生日に当たる忙しいさなか、村田さんは講師役を買って出てくれた。僕はそのとき初めて、彼がねっきょうてきなコルトレーン・ファンであることを知った。彼は六六年のコルトレーン来日公演を観ているのだ。公演チケットの半券をずっと大切に持っている、と嬉しそうに話してくれた。
「ジャズ喫茶のオヤジはなぜ威張っているのか」(後藤雅洋/河出書房新社刊)より
リー・コニッツのB面の素晴らしい即興演奏とはどんな曲か、よくわからないが、ドラムのエルヴィン・ジョーンズとの間でやり取りされる即興演奏で、
You'd Be So Nice To Come Home To
I'll Remember April あたりか?
今、ユーチューブでオスカー・ピータソンとカウント・ベイシーとの底抜けに明るい愉しいやり取りの動画を観ているが、二人とも好きなピアニストだ。この写真などカウント・ベイシーの愉しい人柄が出ている。
Count Basie and his Wife
今日のレコード市、クラシックもさることながらジャズレコードの物色にも力が入りそうだ。
つづく・・・
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リー・コニッツの『モーション』のB面をお願いします、とその少女はいった。恥ずかしながら、店を始めたばかりの僕は、エッ、そんなアルバムあったっけ、という体たらく。見つけ出してかけてみれば、これが素晴らしい。ジャズで一番大切な即興演奏のスリルが、ハッタリなしのごつい形で提示されている。
それがきっかけでその娘はうちのウェイトレスに納まったのだが、当時はずいぶん彼女に教えられたものだ。絵描きの卵だったが、何年かして店をやめ、「スイングジャーナル」の編集長だった村田文一さんと結婚し、そして別れたという噂を聞いた。
三〇年ぶりに彼女が店に遊びにきた。僕と同年代のはずなのに、相変わらずのボブ・カットはお世辞抜きに昔のままだ。
「文一元気?」と、彼女は訊いてきた。「うん」と答え、昔話に花が咲き、時間が一気に押し戻される楽しいひとときを過ごした。~
昔気質のジャズ・ファンの中には、自分の本当に好きなミュージシャンの話はしない人いる。この気持ち、わからなくもない。ジャズという音楽は人間の深いところを抉るので、好きなアルバムについて語るのは心理テストをされているようなものだ。
「スイングジャーナル」の編集長だった村田文一は、二〇年以上も昔、彼が「ジャズランド」という雑誌をやっていたころからの知り合いだ。
コルトレーンの八枚組アルバムが出るので、記念に「いーぐる」でコルトレーン特集をやることになった。たまたまその日が誕生日に当たる忙しいさなか、村田さんは講師役を買って出てくれた。僕はそのとき初めて、彼がねっきょうてきなコルトレーン・ファンであることを知った。彼は六六年のコルトレーン来日公演を観ているのだ。公演チケットの半券をずっと大切に持っている、と嬉しそうに話してくれた。
「ジャズ喫茶のオヤジはなぜ威張っているのか」(後藤雅洋/河出書房新社刊)より
リー・コニッツのB面の素晴らしい即興演奏とはどんな曲か、よくわからないが、ドラムのエルヴィン・ジョーンズとの間でやり取りされる即興演奏で、
You'd Be So Nice To Come Home To
I'll Remember April あたりか?
今、ユーチューブでオスカー・ピータソンとカウント・ベイシーとの底抜けに明るい愉しいやり取りの動画を観ているが、二人とも好きなピアニストだ。この写真などカウント・ベイシーの愉しい人柄が出ている。
今日のレコード市、クラシックもさることながらジャズレコードの物色にも力が入りそうだ。
つづく・・・
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by kirakuossan
| 2016-07-08 09:01
| その他音楽
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