2016年 02月 09日
ピアニスト列伝―25 グレン・グールド |
2016年2月9日(火)
カナダ生まれのピアニスト、グレン・グールド(Glenn Herbert Gould, 1932~1982)の「ゴルトベルク変奏曲」の演奏は何度も触れたが、100年に一度出るか出ないかの傑出したピアニストであったことには間違いない。天才と変人は紙一重といったピアニストであった。「ゴルトベルク変奏曲」を世に出したのは1955年、23歳の時。それから8年後、1964年3月28日のシカゴ・リサイタルを最後にコンサート活動からいっさい手をひき、のちは放送媒体のみの音楽活動とレコーディングに専念した。
カナダ生まれのピアニスト、グレン・グールド(Glenn Herbert Gould, 1932~1982)の「ゴルトベルク変奏曲」の演奏は何度も触れたが、100年に一度出るか出ないかの傑出したピアニストであったことには間違いない。天才と変人は紙一重といったピアニストであった。「ゴルトベルク変奏曲」を世に出したのは1955年、23歳の時。それから8年後、1964年3月28日のシカゴ・リサイタルを最後にコンサート活動からいっさい手をひき、のちは放送媒体のみの音楽活動とレコーディングに専念した。
彼の音楽性や演奏の質の高さは数多くのエピソードとともに蘇る。
ピアノはホモフォニーの楽器ではないといって対位法を重視、各声部が明瞭で、多くはペダルをほとんど踏まないノン・レガート奏法であった。バッハ以外の作曲家についてもベートーヴェンは、その楽曲ごとに賛否両論を唱えたが録音は多く残した。でもショパンやリストに対しては一貫して否定的であり、またモーツァルトについてはソナタ全曲録音を遺したが、「モーツァルトは、むしろ死ぬのが遅すぎたのだ」とも形容した。
演奏するスタイルは身長が180cmあったが、常に猫背でしゃがみ込むような姿勢で弾いた。そこからどこか神経質で病的なイメージがしたが、事実、常にビタミン剤を持ち歩き、過剰すぎるほどの潔癖症で、まるで泉鏡花と同じように対人との接触や外食を拒否した。また常にメロディーや主題の一部を鼻歌を歌いながら演奏したり、協奏曲などを弾くときは自分も指揮をする身振りをして指揮者からはずいぶんひんしゅくをかった。カラヤンが言った「君はピアノより指揮台が似合っている」と。
指揮者との衝突で有名なのは、1962年、カーネギー・ホールでのブラームスの協奏曲第1番の演奏でリハーサルの時、指揮者のレナード・バーンスタインとテンポでの見解が食い違い論争となった。そこでバーンスタインは事前に聴衆に「自分とは違う音楽だ」と断りをいれて指揮をした。またジョージ・セルはグールドが神経質なほどに何度も椅子を調節するので、本番では指揮を下りてしまった。などなど話題が尽きない。ピアニストではヴラジーミル・ホロヴィッツに一時関心を示したが、否定的でもあった。
ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op. 109
グレン・グールド(ピアノ)
録音: 7 June 1957, Vienna Festival; Mozart-Saal, Konzerthaus, Vienna
逸話をもうひとつ・・・
グールドは文学を愛した。なかでもトーマス・マン、シェークスピア、ニーチェ、ヘルマン・ヘッセを読み、夏目漱石は何度も読み返した。彼の死の枕元には書き込みだらけの「草枕」が置いてあった。
余談だが、今年は夏目漱石の没100年にあたるが、その漱石が生まれたのは1867年の今日、2月9日である。
ピアノはホモフォニーの楽器ではないといって対位法を重視、各声部が明瞭で、多くはペダルをほとんど踏まないノン・レガート奏法であった。バッハ以外の作曲家についてもベートーヴェンは、その楽曲ごとに賛否両論を唱えたが録音は多く残した。でもショパンやリストに対しては一貫して否定的であり、またモーツァルトについてはソナタ全曲録音を遺したが、「モーツァルトは、むしろ死ぬのが遅すぎたのだ」とも形容した。
演奏するスタイルは身長が180cmあったが、常に猫背でしゃがみ込むような姿勢で弾いた。そこからどこか神経質で病的なイメージがしたが、事実、常にビタミン剤を持ち歩き、過剰すぎるほどの潔癖症で、まるで泉鏡花と同じように対人との接触や外食を拒否した。また常にメロディーや主題の一部を鼻歌を歌いながら演奏したり、協奏曲などを弾くときは自分も指揮をする身振りをして指揮者からはずいぶんひんしゅくをかった。カラヤンが言った「君はピアノより指揮台が似合っている」と。
指揮者との衝突で有名なのは、1962年、カーネギー・ホールでのブラームスの協奏曲第1番の演奏でリハーサルの時、指揮者のレナード・バーンスタインとテンポでの見解が食い違い論争となった。そこでバーンスタインは事前に聴衆に「自分とは違う音楽だ」と断りをいれて指揮をした。またジョージ・セルはグールドが神経質なほどに何度も椅子を調節するので、本番では指揮を下りてしまった。などなど話題が尽きない。ピアニストではヴラジーミル・ホロヴィッツに一時関心を示したが、否定的でもあった。
ベートーヴェン:
ピアノ・ソナタ第30番 ホ長調 Op. 109
グレン・グールド(ピアノ)
録音: 7 June 1957, Vienna Festival; Mozart-Saal, Konzerthaus, Vienna
逸話をもうひとつ・・・
グールドは文学を愛した。なかでもトーマス・マン、シェークスピア、ニーチェ、ヘルマン・ヘッセを読み、夏目漱石は何度も読み返した。彼の死の枕元には書き込みだらけの「草枕」が置いてあった。
余談だが、今年は夏目漱石の没100年にあたるが、その漱石が生まれたのは1867年の今日、2月9日である。
by kirakuossan
| 2016-02-09 13:05
| ピアニスト列伝
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