ホンマ!気楽おっさんの蓼科偶感

名著『東洋の理想』 ⑤

2013年6月29日(土)

奈良時代(七〇〇年~八〇〇年)
新しい時代が生れ出る機運にあった。アジア思想の全体が、仏教が見せたインドの抽象普遍的なるものの遥かなる幻を越えて、澎湃として湧き立ち流れ、その最高の自己啓示を、宇宙そのものの中に認識しようとしていた。この衝動はやがて卑俗化、その卑俗化は、つぎの時代になって、低俗で硬化した象徴主義への傾向が美の直接的知覚に取って代ろうとしたとき、正体をあらわすはずになっていた。しかし当分の間は、精神は物質との結合を求めつつあり、その最初の抱擁の歓びが、カーリダーサの、李太白の、人麻呂の歌を通じて、ウジャインから長安および奈良にわたって鳴りひびくことになっていた。

d0170835_5155563.jpgこうした当時の大陸的融合から生まれたさまざまなことを、3人の旅人にみたてて、面白い民話となって日本に残っている。ひとりはインド人、ひとりは日本人、そしてもうひとりは中国人だが、その中国人が言った。「ところで、我々がここで落ち合ったのは、さながら一つの扇を作ろうとしているのに似ている。中国は扇の紙、インドからは放射状の骨、日本からは、小さいが欠くことのできない要です」と。

この時代、蘇我氏を滅ぼした天智天皇が天皇親政を強固にして、645年新体制を敷いた(大化の改新)この新体制は鎌足の子孫・藤原氏が担い、地方政治は、世襲の領主によってではなく任命された長官によって行われ、唐を範とした法典が編纂され、司法に裁判官が置かれるなど、国としてのていを成すにいたる。さらには、道路が敷かれ、駅馬伝馬の制が確立され、大和の地に首都が創建される。この時代は律令政治が行われ、積極外交もなされ、班田制が敷かれ、何かと活発な時期であった。この時代の文化を天平文化と呼ぶ。朝鮮は新羅、中国は唐朝が堅固で、ヨーロッパでは封建制が始まろうとしていた。

奈良時代は、その彫刻の豊富なることによっていちじるしい。まず薬師寺の青銅の阿弥陀三尊にはじまり、そのつぎに、三十年おくれて、疑いもなくこの種の芸術の現存するもっとも見事な標本である同じ寺の薬師三尊がある。これらと関連して、東院堂の観音像と、蟹満寺の釈迦像をもまた挙げておかねばならない。しかしながら、大きな青銅像の時代は、青銅の鋳像では世界最大のものである奈良の蘆遮那像の巨像において絶頂に達している。

岡倉天心はここで「この時代はものすごいばかりの仏教活動の行われた時代であった。たがいに豪華を競い合った奈良の七大寺・・・」として、西大寺のことに触れ、東大寺の三月堂を挙げ、「奈良の絵画芸術は、八世紀はじめの作品と結論される法隆寺の壁画に見られるように、最高の価値を有するもので、日本人の天才が、アジャンター石窟の壁画の見事な技にさえなお何を加え得たかを示している」とする。そして話は正倉院へと移る。

この帝室の宝蔵はまた、聖武天皇および光明皇后の身のまわりの調度品を含んでいることでも注目すべきものがある。それらの品々は、御二方崩御の後、その皇女が蘆遮那仏に捧げられたもので、それが少しも手つかずに今日まで伝わってきているのである。その中には、御衣、御沓、楽器、御鏡、御剣、花氈、屏風、両陛下がお使いになった紙と筆、ならびに、崩御後の御一年祭に用いられた儀式用の面、のぼり、その他の宗教上の服飾などがあり、約千二百年昔の実生活を、その豪奢と華麗さとをいささかも失わずに、われわれに伝えているのである。ガラスの杯、インドないしはペルシアに起源すると思われる琺瑯七宝焼きの鏡、その他の唐の最高の技術の無数の標本などもそこにあり、この蒐集を、さながら破局的灰燼を知らぬボンペイあるいはヘルキュラネウムの縮図のごときものたらしめている。御一代にただ一度だけ、一定の位階の者に限って拝観が許されるという厳格な規則があることによって、この宝物全体が、さながらほとんど昨日のもののごとくに保存されているのである。

d0170835_548222.jpg校倉造として子供のころから聞いて知っている正倉院。果して自分は行ったことがあるかしら? これも定かではない。もうこれは見に行くしかない。調べてみるとちょうど秋に短い間だが展示されることを知った。

第65回 正倉院展
平成25年10月下旬~平成25年11月中旬(未定)
by kirakuossan | 2013-06-29 04:32 | ヒストリー | Trackback
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信州の名峰蓼科山麓の女神湖近くの山荘"tutti”は標高1650mにある。これほどの高地にある別荘は日本でもそう多くはない。だから平地とは気温が10℃も違うのです。


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