2012年 04月 08日
指揮者100選☆28 クリュイタンス |
2012年4月8日(日)
アンドレ・クリュイタンス(André Cluytens, ベルギー、1905~1967)ベルギーのアントウェルペン出身の名指揮者である。彼のことは巨匠と呼ぶより”名指揮者”と呼ぶ方が何故か相応しいように思う。1964年、日本を訪れ鮮烈な印象を残してくれた。これが最初で最後の来日であった。彼をてっきりフランス人と思いこんでいたが、実はベルギーの人なのだ。それはもともとフランス音楽に秀でたものがある上に、来日したオケがパリ音楽院管弦楽団であったということに起因しているのだろう。彼の、フォーレの「レクイエム」やビゼーの「アルルの女」などを聴いていると純粋のフランス音楽そのものである。イーゴリ・マルケヴィチがウクライナ生まれでスイスの指揮者であるのにフランスの匂いがするのと似ている。クリュイタンスという名、発音がしにくく覚えにくいが、”古いタンス”といって覚えたものだ。
1927年に王立歌劇場第一指揮者に任命され、ビゼーの歌劇『真珠採り』をヨーゼフ・クリップスの代役として指揮し、高く評価される。1932年からフランスの歌劇場でも活動を始め、1944年にパリ・オペラ座の指揮者となり、1949年にはミュンシュの後任としてパリ音楽院管弦楽団の首席指揮者に就任する。同楽団との関係は亡くなるまでの18年に及ぶ。同時にフランス国立放送管弦楽団やベルギー国立管弦楽団の指揮も兼任した。1956年には急逝したエーリヒ・クライバーの代役としてカール・シューリヒトとともにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団初のアメリカ演奏旅行を行い、成功を収めた。高齢のシューリヒトを支える役目だが、彼にとってもこの貴重な体験が後の指揮活動に生かされたことは想像に難くない。この話はとみに有名である。そして一方ではベルリン・フィルやチェコ・フィルの客演も勢力的にこなす人気マエストロであった。
そして1964年の大阪国際フェスティバル協会によるパリ音楽院管弦楽団との来日公演となる。4月27日午後1時20分、パリ音楽院管弦楽団ら一行105名はKLM特別機で羽田に到着、直ちに日航機にに乗り換えて大阪に向かった。公演は全部で5種類のプログラムからなり、4月28日から5月11日にかけて、初日から前半は大阪(フェスティバルホール)で、途中、福岡を挟んで後半は東京(東京文化会館)で、全部で11公演が行われた。ラヴェル/管弦楽曲集、ベルリオーズ/幻想交響曲、ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」、ブラームス/交響曲第4番などがメーンプログラム。この公演は歴史に残るもので、当時の日本のファンを魅了し「あまりの素晴らしさに、日本のオケに絶望すら感じさせる」とまで言わしめた。
なおクリュイタンスの亡き後、パリ音楽院管弦楽団は発展的解散を遂げ、パリ管弦楽団へと改組された。
☆演奏スタイルは・・・
意外と細部には拘らず、大筋で音楽を形成して行くような力強さを感じる。しかし、仕上がるアンサンブルは実に洗練されていて、スマートで上品である。ベートーヴェンを聴くとスケール感の大きさを感じ取れるし、フランスものでは繊細さも発揮する、というように自由自在のタクトさばきである。
☆残した録音は・・・
フォーレ:「レクイエム」 op.48
ヴィクトリア・デ・ロス・アンへレス(ソプラノ)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
パリ音楽院管弦楽団/アンドレ・クリュイタンス(指揮)
録音:1962年
3大レクイエムの中でも評価の高いフォーレのレクイエム、しかもその中でもこの演奏がこの曲の最右翼とされている。
独唱陣も凄い!永遠の金字塔的名盤である。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番K.491
クララ・ハスキル(ピアノ)
フランス国立放送管弦楽団/アンドレ・クリュイタンス(指揮)
録音:1955年:パリ、シャンゼリゼ劇場(ライブ)
知らなかった、ハスキルとの組み合わせ、こんな素敵な演奏も残っているんだ。
☆私見・・・
64年の大阪国際フェスティバルの来日公演は、まだクラシック音楽を知る前で勿論行けてはいないが、当日のスナップで演奏後着物姿の少女から花束を受け取るクリュイタンスの表情をとらえた1枚がある。その表情の”優しさ”を見つけて、この指揮者の音楽家として、人間としての奥深さを感じ取るとることが出来る。彼を好む理由の一つでもある。
☆Myライブラリーより・・・
ベートーヴェン:交響曲全集
グレ・ブロウェンスティーン(ソプラノ)
ケルステン・マイヤー(メゾ・ソプラノ)
ニコライ・ゲッダ(テナー)
フレデリック・ガスリー(バリトン)
ベルリン聖ヘドヴィヒ大聖堂合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アンドレ・クリュイタンス(指揮)
録音:1957~1960年(ベルリン、グリューネヴァルト教会)
この録音、2,4,6,8番の偶数番号が昔から人気が高く、特に第6番「田園」はワルター、ベームと並んで同曲屈指の名演として支持を受けている。確かにそうなんだが、今日、1番~7番まで聴いてみたが、3、5、7番も力強くメリハリが効いて、ベートーヴェンらしくスケールの大きな音楽を展開する。要するに全部良いのだ。カラヤン色に染まる以前のベルリン・フィルならではの音色を生かしきった素晴らしい演奏だと思う。以前からもそのことは分っていたが、今日また再認識した。(オケの違いもあろうが、やはりクリップスよりはだいぶ上だわ、これは・・・)それに50年以上も前の録音とはとても信じられない鮮明な音だ。
これが実はベルリン・フィル初めてのベートーヴェン交響曲全集の録音で、フルトヴェングラーやカラヤンを差し置いてクリュイタンスが行った、ということは楽団からどれだけの評価と信頼を勝ち得ていたかが覗える。
目を変えて見ると、ばりばりのドイツ人指揮者カール・シューリヒトがパリ音楽院管弦楽団とベートーヴェン全集を収録するかと思えば、片方ではフランスの色彩が強いクリュイタンスがばりばりのドイツのオーケストラのベルリン・フィルと全集を組むとはまことに面白い話だ。
また、「田園」第4楽章でのコーダでのフルートの澄んだ旋律、また「英雄」第1楽章では 、冒頭の2回和音が響き、シンプルな第1主題はチェロにより提示され、tutti(全合奏)に至り、その後、下降動機のところでオーボエ、クラリネット、フルートが奏でられる。これらのフルートは当時ベルリン・フィルの首席フルート奏者を務め、59年まで在籍した名匠オーレル・ニコレが多分吹いているはずだ、・・・と想像するのも面白い。
1927年に王立歌劇場第一指揮者に任命され、ビゼーの歌劇『真珠採り』をヨーゼフ・クリップスの代役として指揮し、高く評価される。1932年からフランスの歌劇場でも活動を始め、1944年にパリ・オペラ座の指揮者となり、1949年にはミュンシュの後任としてパリ音楽院管弦楽団の首席指揮者に就任する。同楽団との関係は亡くなるまでの18年に及ぶ。同時にフランス国立放送管弦楽団やベルギー国立管弦楽団の指揮も兼任した。1956年には急逝したエーリヒ・クライバーの代役としてカール・シューリヒトとともにウィーン・フィルハーモニー管弦楽団初のアメリカ演奏旅行を行い、成功を収めた。高齢のシューリヒトを支える役目だが、彼にとってもこの貴重な体験が後の指揮活動に生かされたことは想像に難くない。この話はとみに有名である。そして一方ではベルリン・フィルやチェコ・フィルの客演も勢力的にこなす人気マエストロであった。
そして1964年の大阪国際フェスティバル協会によるパリ音楽院管弦楽団との来日公演となる。4月27日午後1時20分、パリ音楽院管弦楽団ら一行105名はKLM特別機で羽田に到着、直ちに日航機にに乗り換えて大阪に向かった。公演は全部で5種類のプログラムからなり、4月28日から5月11日にかけて、初日から前半は大阪(フェスティバルホール)で、途中、福岡を挟んで後半は東京(東京文化会館)で、全部で11公演が行われた。ラヴェル/管弦楽曲集、ベルリオーズ/幻想交響曲、ベートーヴェン/交響曲第3番「英雄」、ブラームス/交響曲第4番などがメーンプログラム。この公演は歴史に残るもので、当時の日本のファンを魅了し「あまりの素晴らしさに、日本のオケに絶望すら感じさせる」とまで言わしめた。
なおクリュイタンスの亡き後、パリ音楽院管弦楽団は発展的解散を遂げ、パリ管弦楽団へと改組された。
☆演奏スタイルは・・・
意外と細部には拘らず、大筋で音楽を形成して行くような力強さを感じる。しかし、仕上がるアンサンブルは実に洗練されていて、スマートで上品である。ベートーヴェンを聴くとスケール感の大きさを感じ取れるし、フランスものでは繊細さも発揮する、というように自由自在のタクトさばきである。
☆残した録音は・・・
フォーレ:「レクイエム」 op.48
ヴィクトリア・デ・ロス・アンへレス(ソプラノ)
ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
パリ音楽院管弦楽団/アンドレ・クリュイタンス(指揮)
録音:1962年
3大レクイエムの中でも評価の高いフォーレのレクイエム、しかもその中でもこの演奏がこの曲の最右翼とされている。
独唱陣も凄い!永遠の金字塔的名盤である。
モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番K.491
クララ・ハスキル(ピアノ)
フランス国立放送管弦楽団/アンドレ・クリュイタンス(指揮)
録音:1955年:パリ、シャンゼリゼ劇場(ライブ)
知らなかった、ハスキルとの組み合わせ、こんな素敵な演奏も残っているんだ。
☆私見・・・
64年の大阪国際フェスティバルの来日公演は、まだクラシック音楽を知る前で勿論行けてはいないが、当日のスナップで演奏後着物姿の少女から花束を受け取るクリュイタンスの表情をとらえた1枚がある。その表情の”優しさ”を見つけて、この指揮者の音楽家として、人間としての奥深さを感じ取るとることが出来る。彼を好む理由の一つでもある。
☆Myライブラリーより・・・
ベートーヴェン:交響曲全集
グレ・ブロウェンスティーン(ソプラノ)
ケルステン・マイヤー(メゾ・ソプラノ)
ニコライ・ゲッダ(テナー)
フレデリック・ガスリー(バリトン)
ベルリン聖ヘドヴィヒ大聖堂合唱団
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
アンドレ・クリュイタンス(指揮)
録音:1957~1960年(ベルリン、グリューネヴァルト教会)
この録音、2,4,6,8番の偶数番号が昔から人気が高く、特に第6番「田園」はワルター、ベームと並んで同曲屈指の名演として支持を受けている。確かにそうなんだが、今日、1番~7番まで聴いてみたが、3、5、7番も力強くメリハリが効いて、ベートーヴェンらしくスケールの大きな音楽を展開する。要するに全部良いのだ。カラヤン色に染まる以前のベルリン・フィルならではの音色を生かしきった素晴らしい演奏だと思う。以前からもそのことは分っていたが、今日また再認識した。(オケの違いもあろうが、やはりクリップスよりはだいぶ上だわ、これは・・・)それに50年以上も前の録音とはとても信じられない鮮明な音だ。
これが実はベルリン・フィル初めてのベートーヴェン交響曲全集の録音で、フルトヴェングラーやカラヤンを差し置いてクリュイタンスが行った、ということは楽団からどれだけの評価と信頼を勝ち得ていたかが覗える。
目を変えて見ると、ばりばりのドイツ人指揮者カール・シューリヒトがパリ音楽院管弦楽団とベートーヴェン全集を収録するかと思えば、片方ではフランスの色彩が強いクリュイタンスがばりばりのドイツのオーケストラのベルリン・フィルと全集を組むとはまことに面白い話だ。
また、「田園」第4楽章でのコーダでのフルートの澄んだ旋律、また「英雄」第1楽章では 、冒頭の2回和音が響き、シンプルな第1主題はチェロにより提示され、tutti(全合奏)に至り、その後、下降動機のところでオーボエ、クラリネット、フルートが奏でられる。これらのフルートは当時ベルリン・フィルの首席フルート奏者を務め、59年まで在籍した名匠オーレル・ニコレが多分吹いているはずだ、・・・と想像するのも面白い。
by kirakuossan
| 2012-04-08 20:58
| 指揮者100選(完)
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