ホンマ!気楽おっさんの蓼科偶感

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蜉蝣

2016年8月31日(水)

私はどんな作家を語ろうとしても、その作家の思想の何等かの形式を、その作品から抽象しようとする安易を希ひはしないが、如何に生まの心を語らうとしても、語る所が批評である以上、抽象が全然許されないとなると問題は恐ろしく困難になるのである。志賀氏はかかる抽象を最も許さない作家である。志賀氏の作品を評する困難はここにある。私は眼前に非凡な制作物を見る代りに、極めて自然に非凡な一人物を眺めて了ふ。これは私が氏に面識があるが為では断じてなく、氏の作品が極端に氏の血肉であるが為だ。氏の作品を語る事は、氏の血脈の透けて見える額を、個性的な眉を、端正な唇を語る事である。
志賀氏は思索する人でもない、感覚する人でもない、何を置いても行動の人である。氏の魂は実行家の魂である。氏の有するあらゆる能力は実生活から離れて何んの意味を持つ事が出来ない。志賀氏にあっては、制作する事は、実生活の一部として、実生活中に没入するのは当然な事である。芸術は実生活の分裂によつて現れる事なく、実生活の要約として現れるのは当然の事である。芸術と生活との分裂を、モオパッサンは、この世にあって俳優となると同時に観客とならねばならぬ悲惨、と嘆いたが、彼が、この世に生きるとは如何なる事であるか到底了解すべくもない若年の頃から、フロオベルといふ名教師に人生観察の術を学んでゐたといふ事は、恐らく志賀氏にとつては、愛嬌ある一挿話に過ぎない。
然し問題は、芸術の問題と実生活の問題とがまことに深く絡みあつた氏の如き資質が、無類の表現を完成したとうふ点にある。氏が己れの実生活を、精緻に語り、而も語られたものが実生活の結果たる告白となる事なく、実生活の原因たる希望となる事なく、人間情熱の独立した記号として完璧な表現となつた点にあるのである。
ここに最も本質的な意味で、氏の制作の手法に関する問題が現れる。


これは小林秀雄が「志賀直哉」世の若く新しい人々へと題して著した小論文の一節である。独特の小林らしい文章であるが、志賀直哉の核心について触れている。(それにしても「実生活」と言う言葉が8回も出てくる)
そして最後に志賀直哉の短編について語っている。

氏の近作に「豊年虫」といふものがある。これは恐らく氏の全作中で最も小さいものの一つかも知れない。作者自身の最も関心する処少いものかも知れないし、こんな小品にも達人の表現があると言ひたいのではないが、達人でなければかやうな小品を創らうとはしないだろう。この小品に、氏の魂の形態が強力にではないが、又強力にではない為に最も結晶化されてゐる様に私には見えるのだ。
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(左より、川端康成、志賀直哉、小林秀雄、丹羽文雄 昭和30年7月軽井沢にて)




豊年虫
       志賀直哉

信州戸倉温泉に来てもう七日になる。私はそれまで家族と浅間山に近い千ヶ滝にゐたが、書きかけの小説が出来上がらなかったので、家族は東京の両親の方へやり、自分だけ此戸倉へ来て、先を続ける事にした。今までの賑やかだったあと、急に独りになると、その静かさが退屈となり却って時間を持ちあつかふことがあつた。
書いて疲れる。湯に入る。寝ころんで本を読む。それでなければ、散歩する。散歩といつても、アカシヤの生えた千曲川の堤を上上田まで行き、それから湯宿の軒を並べた道を又戸倉へ引返して来るのだが、その間、二十分とはかからず、帰っても歩いて来たといふほどの気がしなかつた。~
停車場の前にアーク灯があり、それに大きい火取虫が二三間の厚さで渦巻いてゐた。駅の広い待合室もそれで一杯だつた。乗客はそこにゐられず、みんな外へ出て避けてゐた。それは蜉蝣(かげろう)で、縦横十文字に飛び交はす様は風の日の雪と変わらなかった。
「この辺で豊年虫といつて、これの多い年は作がいいと喜ばれます」梶棒を下した車夫は汗を拭きながら説明した。~

d0170835_16262023.jpg主人公は付近をひと回りして、宿へ戻って来た。座敷には床がとつてあり、疲れて寝ころんでいると蜉蝣が畳の上を飛び回っているのに気付く。

蜉蝣は滑走するやうに畳の上をくるくる廻ってゐるだけで、少しも空には飛び上がらなかつた。見ると羽は完全だが、足がどうかして立てない風だつた。~
この虫は羽をつまんでやると、呑気そうに前足を二本揃え、真直ぐにするものだがなと思ってゐると、蜉蝣は私の座っている座布団の綴糸に足を引かけ動けなくなってしまった。そしてがっかりしたやうに小時横倒しになってゐた。私は羽をつまんで離してやった。揃へて前へ出すはずの足はもうすっかり委縮して用をなさず、その巻いて了った足の先が綴糸に引っかかったのであった。幾らか利く足といへば後の二本だけで、これはこれから間もなく死んで了ふ蜉蝣に違ひなかった。私はそんな事を考へながら羽をつまみ、なほよく見てゐると、これはまたどうしたことか、虫の胴中から下が、まるで糞かなんぞのやうにぽたりと腐れて畳へ落ちて了った。成ほど生きてゐるうちからこの虫の身体は腐れて行くのかも知れぬと思った。
(昭和4年1月『週刊朝日』)




蜉蝣は、1日しか生きることができない。



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by kirakuossan | 2016-08-31 13:27 | 文芸 | Trackback

”即席天ぷら蕎麦もどき

2016年8月31日(水)
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d0170835_12483273.jpg今日はさすがにざるとはいかずに温かい蕎麦にした。ただ具がないのでわずかなかまぼこの残ったのと、ちょうど酒のあてにこれも残っていたするめを持ち出し”即席天ぷら蕎麦もどき”の完成。するめに薄く付いたころもが結構いけた。それに蕎麦もこちらのスーパーで買ってきた信州田舎そば「小諸七兵衛」とある廉価もの、ところがこれがまた腰のある荒削りといったいかにも田舎風蕎麦でなかなか美味い。どこで作っているのかと思えば小諸市西原とある、ああ~この前立ち寄った小諸商業高校の付近だな~
さすが信州は蕎麦処、こういった廉価ものでも多くの種類が揃っていてみな美味い。



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by kirakuossan | 2016-08-31 12:44 | 食・酒 | Trackback

暖炉の前では読書が尽きない。。。

2016年8月31日(水)
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d0170835_1011137.jpg暖炉を焚くと自然とその前で長居する。読書も良し、居眠りもまた良し。
久しぶりに志賀直哉をちょっと読んでみようかな、その前にこの前見つけた群像「日本の作家」シリーズでちょっと素顔から・・・




河上徹太郎:
今度、横光(利一)さんのことを僕は座談会でしゃべらなくてはならない。
井伏鱒二:
あの人は誠実な人だった。気持ちがいい人だ。
河上:
あんないい人いない。
井伏:
善人で、男らしくて、僕は「寝園」ってのはいい作品だと思うな。張り切っていていいよ、あれは。みなぎったものがあって。
河上:
「旅愁」ってのはいいよ。
井伏:
そうか?そうかな。僕は「寝園」のほうがいい。気迫があるもんな。


d0170835_1012461.jpgこの二人の会話はいつもどこかで食い違うようだ。仲が良いのか悪いのか、わからないところがある。

直哉の次は利一だな、
暖炉の前では読書が尽きない。。。
薪をまた二束注文した。



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by kirakuossan | 2016-08-31 09:47 | 偶感 | Trackback

煙立ち、プチプチ音、薪の燃える匂い・・・

2016年8月31日(水)
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d0170835_7544115.jpg今朝は快晴。気持ちよく晴れ渡っているが、台風一過、気温がぐんと下がってきて14℃、室内でも16℃しかない。煙突からは久々に煙がたち、プチプチ音、の燃える匂い・・・いよいよ秋を思わせる風情になってきた。温かい香りがしたのか、どこからか猫が一匹やって来た。
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by kirakuossan | 2016-08-31 08:02 | La casa di tutti | Trackback

ブーメラン台風

2016年8月30日(火)
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d0170835_5473352.jpg夕べはなかなか寝つかれなかった。豪雨がもう5時間も続いている。レーダーを見るとこれからまだ強くなりそうだ。台風の進路と雨の降る場所とは違うと言っていたが、風もこれから強くなるそうだ。ブーメラン台風(10号)はまだ上陸していないのにこの有り様だと色々と心配がでてくる。


d0170835_7181100.gif7:15、いよいよ雨がさらに強くなってきた・・・
8:00現在、となりの白樺湖で64.5mmを記録している。

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追記:
(14:30)
ようやく雨が上がったが、外気温は16℃、部屋の中も寒々しくて、仕方なくストーブを少し焚く。




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by kirakuossan | 2016-08-30 05:44 | 偶感 | Trackback

温泉にそばの花 ~石遊の湯

2016年8月29日(月)
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d0170835_1550165.jpgゴルフでひと汗かいた後は温泉に。今日は久しぶりに評判の良い石遊の湯(いしやすのゆ)へ行く。蓼科温泉で優れた湯は、蓼科温泉共同浴場と小斉の湯、そしてここの湯ということになる。今日も町田市から来たという一期一会の先客がひとりいた。近くの知人の別荘へ毎年夏にやって来るという。その別荘の主もこの石遊の湯が一番と言っていたそうだ。

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d0170835_15451440.jpg帰り道、そばの花が一面に鮮やかに咲き誇っていた。気のせいか、最近そばの花畑をあちこちで見かけるようになった。数年前はこんなに多くなかったように思うが・・・
温泉にそばの花はよく似合う
なんのこっちゃ?




追記:
(17:30)
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石遊の湯で一本100円で売っていた朝採れのとうもろこし、新鮮で小粒でびっしりとつまり甘さも抜群でした。




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by kirakuossan | 2016-08-29 15:37 | 温泉♨ | Trackback

よしよし、頭が残っております。

2016年8月29日(月)
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よしよし、頭が残っております。
先日萩ヤンから「ヘッドアップ過ぎる」のご指摘があり、意識して頭を上げないでいるとボールの芯をとらえるようになってきた。ただこのフォーム、へっぴり腰で体が早く開き過ぎている・・・
今日さらに思いついたのは、アドレス時に、心もち顎を引くとスムーズなスイングアークが得られるような気がする。でもこれも極端に引き過ぎるとまたおかしくなる。難しいものだ。来月上旬に3ラウンドが控えている。練習にもつい熱が入るというもの。

d0170835_15315156.jpg茅野市内に出るとき必ず立ち寄るのがこれまたBOOK OFF 。タイミングよく「碁の計算学入門」(石田芳夫著)を見つける。接戦ではヨセが大切になって来る。昨日みたいな半目勝負の時などこの知識が生きてくるというもんだ。



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by kirakuossan | 2016-08-29 15:30 | Trackback

コレ!ホンマにかぼちゃ??

2016年8月29日(月)
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d0170835_14581499.jpgゴルフ練習の前にたてしな自由農園に。最近ここに引っ越してこんなにでっかくなって再オープンした。いつも観光客などで賑わっている。うりを買うついでに変った面白い2つのかぼちゃを見つけた。店員さん、「今朝は入って来たばかり、この大きの美味しいよ」と言っていた。コレ!ホンマにかぼちゃ??



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by kirakuossan | 2016-08-29 14:55 | 食・酒 | Trackback

もう秋だわ。

2016年8月29日(月)
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昨日は一日tutti にとじこもり、ネット碁で7勝7敗。半目勝ちがあれば、1.5目負けもあり、また2.5目勝ちもあるというどれも僅差の消耗戦。さすがに運動不足で今日は茅野までゴルフ練習でも行くか。
気がつけばコスモスはもう咲いているし、例の池の平ホテル前のアカシアは早くも黄葉が始まっていた。田の稲穂もたわわに実っている。もう秋だわ。



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by kirakuossan | 2016-08-29 14:49 | 蓼科の風景 | Trackback

銅製、手仕事、江戸の匠、燕にもない・・・は殺し文句

2016年8月28日(日)
また庵原氏から刺激的でほぼ挑発的な写真を送ってきました。銅製、手仕事、江戸の匠、燕にもない・・・この殺し文句で決まりです。さすが原庵店主、料理の味だけでなく道具から入るところは次元が違います。

d0170835_14523640.jpg前々からずーっと欲しいと思っていた銅製の手打ちおろしガネ。先日阪神百貨店で「江戸の匠大集合」という催事があり、合羽橋道具屋筋の有名なおろしガネ職人(TVにもよー出る人です)が出店してましたので7500円もしましたが、寸刻の躊躇だにせず買ってしまいました。その職人さんによると手打ちでやる人は金物の町、新潟燕にもいないそうで国内で数えるほどとか。目を刻む鏨はすぐに刃がちびるので1枚のおろしガネを作るのに何本も替えるそうで、当日も何十本も鏨がおいてありました。手仕事らしく微妙に歪んだ目の並び。味があります。表が粗い目で大根おろし用、裏が細かい目で生姜おろし用。今回のカレー作りで初登場しました。素晴らしい切れ味で生姜やニンニクが力を入れることなく楽におろせました。大根おろしもこれでやるとフワフワに美味しくできるそうで近日大根おろしにも挑戦です。

d0170835_14561738.jpg実は私もこんなのが大好きでして、昔豆腐屋さんが使っていた豆腐切り包丁をずいぶん探しました。で、結局100円ショップかなんかで見つけたことがあります。
あまりにも値段は違いますが”志”は似たようなもんです。
それにしても7500円!ええ値しまんなあ~



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by kirakuossan | 2016-08-28 14:50 | 偶感 | Trackback

信州の名峰蓼科山麓の女神湖近くの山荘"tutti”は標高1650mにある。これほどの高地にある別荘は日本でもそう多くはない。だから平地とは気温が10℃も違うのです。


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