2017年 07月 21日
カリスマ指揮者とは? |
2017年7月21日(金)
再考・古今東西のカリスマ指揮者
今月号の雑誌「音楽の友」で、カリスマ指揮者”私的ベスト1”というのを特集している。昨今のこういった企画はほとんど決まりきったことか、また受けを狙ったものが多く、内容的には乏しいものが多い。今月号の企画もやはりそれに近い類だったが・・・
再考・古今東西のカリスマ指揮者
佐伯茂樹/相場ひろ/青澤唯夫/池田卓夫/奥田佳道/國土潤一/嶋田邦彦/高山直也/寺西基之/寺西肇/東条碩夫/戸部亮/那須田務/舩木篤也/平野昭/満津岡信育/山崎浩太郎/山田治生
過去・現代の音楽界において〝カリスマ〟と呼ばれる指揮者たちを俯瞰。彼らの芸風、レパートリーなどを紹介するとともに、〝職業としての指揮者〟の起源にまでさかのぼり、〝カリスマ指揮者〟について様々な角度から考える。
今月号の雑誌「音楽の友」で、カリスマ指揮者”私的ベスト1”というのを特集している。昨今のこういった企画はほとんど決まりきったことか、また受けを狙ったものが多く、内容的には乏しいものが多い。今月号の企画もやはりそれに近い類だったが・・・
「18人の音楽記者、音楽評論家の皆さんに独断と偏見で世界のカリスマ指揮者の中から現在、往年の”私的ベスト1”をそれぞれ選んでいただき、その選定理由と”カリスマ指揮者”の何たるかについても自由にお書き頂きました」
とあるのでここでも素人クラシックおたくの一人が思いきし独断と偏見で述べてみたい。
まず最初にここに挙がる顔ぶれの何と小粒さよ。これだけ見ても多くを期待するのは無理なのがわかる。(一部例外の方もいらっしゃるが)
それに次に驚いたのは、「現在」のカリスマ指揮者として、ヴァレリー・ゲルギエフを名指ししたのが3人もいた。ゲルギレフはただ”カリスマ”ぶっているだけである。カリスマ性と言うのは見た目も大切で、彼の場合は他の指揮者にない、ただむさくるしいだけの風貌を、カリスマと取り違えているのではないだろうか。音楽性に至ってはもうひとつ何が言いたいのか不明瞭である。この不明瞭さもカリスマと勘違いする原因だろう。
「精力絶倫のエネルギーが凄い。無免許運転みたいなところもあるが」(青澤唯夫)「ソ連崩壊後の新生ロシアを基盤に展開してきたゲルギエフの軌跡は”カリスマの末裔”だ」(國土潤一)「新しいか歌劇場と演奏会場とを続けざまに建てさせてしまった牽引力の凄さたるや、まさにカリスマ的と言っていいのでは?」(東条碩夫)
みなひどい幻想だが、まだ3番目が一理あるか、でも指揮者は実業家ではないのだし、そんな指揮者はカラヤンひとりでもう十分なのだが・・・「精力絶倫」「カリスマの末裔」には吃驚した。
方や、アンドレア・バッティストーニを思い切って挙げていたのが二人いたが、これには敬意を評する。https://youtu.be/RJER5bZx3no
「深い譜読みと歌手&オーケストラの完全な掌握、シンフォニーのレパートリーにも放たれる強いオーラなどで客席を熱狂に陥れる。この条件を満たしているのは今年30歳の東フィル首席指揮者、バッティストーニである」(池田卓夫)「将来への期待も込めてここでは一応バッティストーニを挙げておく」(寺西基之)
池田卓夫氏の説明は簡潔で的を得ている。カリスマ性には”オーラー”の存在は絶体に欠かせない。小林研一郎や井上道義を挙げているのは御愛嬌にしても、フランツ・ヴェルザー=メストやチョン・ミョンフンなどを挙げている御仁がいるのはどうも理解できない。ただ好きな指揮者を挙げたに過ぎないのではないだろうか。ひとり舩木篤也氏が「現在」のカリスマ指揮者は「該当なし」としている。これがまさに正解かも知れない。
「過去」のカリスマ指揮者も評が分かれたが、納得性は「現在」より高かった。
ヘルベルト・フォン・カラヤン、カルロス・クライバー、ニコラウス・アーノンクール、ギュンター・ヴァントをそれぞれ2人づつが挙げ、レナード・バーンスタイン、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー、アルトゥー・トスカニーニ、オットー・クレンペラー、エフゲニー・ムラヴィンスキーなど。なかにはヘルマン・シェルヘンを挙げた変わり種も見られたが、さらには知らない名だったが、カルル・チェリウスという往年の京響創設時の音楽監督の名も見えた。
カリスマ指揮者というのは、聴衆を魅了するバトンテクニックと音楽性、オーケストラの統率力に加えて楽団員からは畏敬の念を持たれる存在、そこには不思議なオーラーが発散される。
そこで私のカリスマ指揮者といえば、
「現在」・・・残念ながら存在せず。
「過去」・・・カルロス・クライバー https://youtu.be/oCl9cO_WfrU
余録:
池田卓夫氏
日経電子版に多く投稿している音楽ジャーナリスト。東京都出身、早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社勤務。経済畑のフランクフルト支局長などを経て文化部へ移り、長く音楽担当の編集委員を務めた。過去に日経ホール、紀尾井ホール等で音楽イベントをプロデュースする。エンジン01文化戦略会議メンバーのひとりでもある。2年前のベルリン・フィルの次期首席指揮者のペトレンコが選出された際、いち早く詳細な情報を日経電子版で流した。この人の評論は筋金入りである。
by kirakuossan
| 2017-07-21 08:18
| クラシック
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