2017年 06月 07日
二人の受賞作家 |
2017年6月7日(水)
昭和の初めに生まれた二人の高橋と言う名の作家。ひとりは以前に「風の盆恋歌」という秀作を読んで心に残った直木賞受賞作家高橋治であり、もうひとりは昨日、歌志内のことを調べていて知った芥川賞受賞作家高橋揆一郎である。
高橋揆一郎の作家活動は遅く、「ぽぷらと軍神」で文學界新人賞を受賞してデビューしたのが、1973年45歳の時であった。そしてその5年後に「伸予」で芥川賞を受賞、北海道に住む作家としては初めての快挙であった。二人の作家は一歳違いである。高橋揆一郎の方が高橋治より年長である。でも互いに遅咲きの作家で、高橋治が釣師の世界を描いた「秘伝」で直木賞を受賞したのも54歳になっていた。そしてふたりともよく似た風貌もさることながら、どこか職人肌を感じさせるような作家であるところも似通っているように思える。
そこで高橋揆一郎の作品を読みたく、今日図書館で借りて来るが、文藝春秋刊「伸予」の単行本には、この受賞作品と「ぽぷらと軍神」も掲載されていていた。もう一冊は64歳時の作品で新田次郎文学賞を受けた「友子」。”友子”とは、女性の名ではなく、鉱山労働者の相互扶助組織である”友子同盟”のことである。
「伸予」は主人を亡くした50歳前の女性の恋を描いたもので、自分の性に合わずに読み始めたが直ぐにやめた。「ぽぷらと軍神」は、戦争末期の下士官上がりの右翼教員(渾名・ばんじゃあ)が小学校に赴任してきて、作者自身である主人公(当時4年生)のクラスの担任に就き、理不尽で、日々横暴な行動に振り回されるという物語。これは短いので一気に読んだが、戦時中の異様さが浮き彫りにされ、ユーモアに富んだ箇所もあったが、全体的に陰惨な印象を受けた。まあ、幼い頃の、その時はよく分らないけど恐怖に満ちた体験談とはこういった類のものではあるが・・・
で、もう一冊の「友子」は彼の自叙伝、こちらは歌志内での石炭鉱夫らの生活が浮き彫りになるのだろう。今から読み始めるが、こちらの方が愉しめそうである。
by kirakuossan
| 2017-06-07 19:00
| 文芸
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