2017年 04月 13日
英国人の優しさ |
2017年4月13日(木)
OUTBACKの点検中にいつもの古本屋「オウミ堂」まで往復45分かけて歩く。そこで「英国に就いて」(吉田健一著)を買う。さっそく久々に健一節を味わっている。
薔薇にとってその棘は花と同様に大事かも知れないが、このような花にそのくらいの棘があるのは当然という見方をすることも許されて、英国人はその花を愛してきた。薔薇戦争の時に、一方が赤い薔薇をその印に選び、一方が白い薔薇を印にして対抗したというのはその優雅に殆んど東洋的なものがあることを思わせるとともに、既に十五世紀に英国人が薔薇を庭に植えていたことを示していて、そのお蔭で薔薇戦争という戦史に余り類例がない名称ができた。スコットが南極から帰って来る途中の、最後の野営地で書いた遺書にも薔薇の花の優しさを思わせるものがある。ここで大事なのは、その優しさが英国人というものの性格に見られる一切の原動力になっているということで、英国人の忍耐力も、勇気も、冷酷も、詩情もそこから出ている。そう言えば、富士の山としての最も大きな特徴もその姿の優しさにある。
(『英国に就いて』から「象徴」)
吉田健一は評論家であり小説も書いたが、本業は英文学者である。少年時代、青年時代とイギリスの地に住み、学んだ経験からイギリスの社会や文化については熟知し、その奥深さは群を抜いており、そこからは真のイギリスの姿が浮かび上がって来る。
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OUTBACKの点検中にいつもの古本屋「オウミ堂」まで往復45分かけて歩く。そこで「英国に就いて」(吉田健一著)を買う。さっそく久々に健一節を味わっている。
薔薇にとってその棘は花と同様に大事かも知れないが、このような花にそのくらいの棘があるのは当然という見方をすることも許されて、英国人はその花を愛してきた。薔薇戦争の時に、一方が赤い薔薇をその印に選び、一方が白い薔薇を印にして対抗したというのはその優雅に殆んど東洋的なものがあることを思わせるとともに、既に十五世紀に英国人が薔薇を庭に植えていたことを示していて、そのお蔭で薔薇戦争という戦史に余り類例がない名称ができた。スコットが南極から帰って来る途中の、最後の野営地で書いた遺書にも薔薇の花の優しさを思わせるものがある。ここで大事なのは、その優しさが英国人というものの性格に見られる一切の原動力になっているということで、英国人の忍耐力も、勇気も、冷酷も、詩情もそこから出ている。そう言えば、富士の山としての最も大きな特徴もその姿の優しさにある。
(『英国に就いて』から「象徴」)
吉田健一は評論家であり小説も書いたが、本業は英文学者である。少年時代、青年時代とイギリスの地に住み、学んだ経験からイギリスの社会や文化については熟知し、その奥深さは群を抜いており、そこからは真のイギリスの姿が浮かび上がって来る。
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by kirakuossan
| 2017-04-13 20:52
| 文芸
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