2016年 10月 03日
加藤周一と信州で出逢った人たち 1 |
2016年10月3日(月)
以前に図書館で借りたことがある加藤周一著『高原好日』、夏の信州での多くの友人たちとの交友録集、読んでいて愉しいので、また借りてきた。
辻邦生(1925~99)は、よく調べて長い小説を書く小説家であった。その主人公は、古代ローマの皇帝から日本の中世の歌人に及び、実に多岐にわたる。そして素晴らしい友人でもあった。第一に、その話しぶりにはいつも心遣いの細やかさ-当面の話し相手ばかりでなく、第三者に対してのそれも含めての心の温かさがあった。第二に、彼の話すことは、少なくとも私にはよく解った。その内容に賛成するかしないかは別として、彼が何を言おうとしているのかは、はっきりと理解することができた。常に誰の話でもそうであるとは限らない。
加藤周一とフランス文学者でもあった辻邦生は仕事の上でフランスで会うこともあった。日本では夏の信州で親しく交わった。加藤の別荘は信州浅間山麓の追分村にあったし、辻は旧軽井沢三笠にあった。互いに山荘を訪ね合ったり、一緒にテニスをしたり、辻の隣家の磯崎新(1931~)も交えて愉しい談笑の日々を過ごした。
磯崎新さんは旅から旅に暮らしているというよりも、世界中を飛び回って仕事をしている。国際的に広く知られた建築家だからである。~
会うための条件は二つある。その一つは、夏の軽井沢に居合わせることである。その家は三笠の山奥の斜面、雑木林の中に建てられていて、上下の二棟が急坂の小径でつながれている。小径を通れば、見上げても見下ろしても、谷や林や建物の景色が変わる。そういう三次元の視点の移動と、そこから生じる見はらしの変化は、建物のなかまで続いていて実に愉しい。そういう家へ彼は友人たちを招く。もちろん誰でも招くわけではないから、彼に会うためのもう一つの条件は、友人であることだ。
磯崎新は1986年に東京都新庁舎のコンペにも参加し、超高層建築の丹下健三案に対して、シティホールのあり方を問う中層建築の案を提出するなどした著名な建築家である。大分の出身ということもあって九州での建築作品が多いが、身近には1995年完成の京都コンサートホールがある。なお辻邦生の別荘も彼が設計した。
右の写真は偶然にもちょうど1年前の今日10月3日に開かれたハイティンク指揮ロンドン交響楽団演奏会の会場である京都コンサートホールの前景。
(2015年10月3日撮影)
つづく・・・
.
追記:
2016年10月4日(火)
加藤周一著『高原好日』を以前図書館で借りた・・・は思い違いで、図書館ではなく105円で買ったものだ。マイ蔵書である。
辻邦生(1925~99)は、よく調べて長い小説を書く小説家であった。その主人公は、古代ローマの皇帝から日本の中世の歌人に及び、実に多岐にわたる。そして素晴らしい友人でもあった。第一に、その話しぶりにはいつも心遣いの細やかさ-当面の話し相手ばかりでなく、第三者に対してのそれも含めての心の温かさがあった。第二に、彼の話すことは、少なくとも私にはよく解った。その内容に賛成するかしないかは別として、彼が何を言おうとしているのかは、はっきりと理解することができた。常に誰の話でもそうであるとは限らない。
加藤周一とフランス文学者でもあった辻邦生は仕事の上でフランスで会うこともあった。日本では夏の信州で親しく交わった。加藤の別荘は信州浅間山麓の追分村にあったし、辻は旧軽井沢三笠にあった。互いに山荘を訪ね合ったり、一緒にテニスをしたり、辻の隣家の磯崎新(1931~)も交えて愉しい談笑の日々を過ごした。
磯崎新さんは旅から旅に暮らしているというよりも、世界中を飛び回って仕事をしている。国際的に広く知られた建築家だからである。~
会うための条件は二つある。その一つは、夏の軽井沢に居合わせることである。その家は三笠の山奥の斜面、雑木林の中に建てられていて、上下の二棟が急坂の小径でつながれている。小径を通れば、見上げても見下ろしても、谷や林や建物の景色が変わる。そういう三次元の視点の移動と、そこから生じる見はらしの変化は、建物のなかまで続いていて実に愉しい。そういう家へ彼は友人たちを招く。もちろん誰でも招くわけではないから、彼に会うためのもう一つの条件は、友人であることだ。
磯崎新は1986年に東京都新庁舎のコンペにも参加し、超高層建築の丹下健三案に対して、シティホールのあり方を問う中層建築の案を提出するなどした著名な建築家である。大分の出身ということもあって九州での建築作品が多いが、身近には1995年完成の京都コンサートホールがある。なお辻邦生の別荘も彼が設計した。
右の写真は偶然にもちょうど1年前の今日10月3日に開かれたハイティンク指揮ロンドン交響楽団演奏会の会場である京都コンサートホールの前景。
(2015年10月3日撮影)
つづく・・・
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追記:
2016年10月4日(火)
加藤周一著『高原好日』を以前図書館で借りた・・・は思い違いで、図書館ではなく105円で買ったものだ。マイ蔵書である。
by kirakuossan
| 2016-10-03 11:20
| 文芸
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