2015年 11月 11日
「演奏者は音楽の情感、音符に込められた意味を真摯に理解すべきです」 |
2015年11月11日(火)
いよいよエリソ・ヴィルサラーゼのピアノリサイタルが10日後に迫った。今年で73歳になる彼女の演奏会は21日の夜、東京のすみだトリフォニーホールでたった一回きり開かれる。心配性の私はもしや来日出来ないことはないだろうな、とトリフォニーホールのHPを確認したりしている。そうすると演奏曲目の変更を伝えていた。
モーツァルト/ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331トルコ行進曲付
モーツァルト/ロンド イ短調 K.511
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 op.57 「熱情」
モーツァルト/ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K.333
シューマン/謝肉祭 op.9
ロンドが割愛されていた。
そして当日のプログラムを他の奏者での録音だが、また順番に聴きなおして予習している。そうすると意外とモーツァルトのK.333をあまり聴いたことがないことにあらためて気づいたりする。今回、モーツァルトが2曲組み込まれているが、『ピアニストが語る』(焦元溥著アルファベータ刊)で彼女は語っている。
あなたのテクニックはすべてモーツァルトの作品で培ったということですが、本当ですか?
本当ですよ! 私の祖母はモーツァルトのソナタで私にテクニックを教えました。モーツァルトのソナタを勉強し終わったとき、私のピアノ技巧の勉強も終わりました。
ロシアのピアニストはモーツァルトの表現が下手だとよく言われますが・・・。ホロヴィッツも、ギレリスのモーツァルトの演奏を厳しく批判したことがありますし、リヒテルも、モーツァルトが一番難しいと言っていましたよね?
表面的には、たしかにロシアのピアニストはモーツァルトが得意でないと思われますが、モーツァルトをうまく弾ける人というのは本当に少なく、どの楽派も同じなのです。私は、クララ・ハスキルのモーツァルトは好きではありません。イングリット・ヘブラーのモーツァルトも・・・。私はクリフォード・カーゾンとフリードリヒ・グルダのモーツァルトが好きです。
とにかく、この世で「私はこの作品をどう演奏すればいいかわかっています」などと言える人はいないのです。そうでしょう? そんなこと言う資格のある人なんて絶対にいません。私たちは理解しようと努力し、表現し、その結果が良いか悪いかは誰にも分らないのです。「どのように弾くべきか」なんて、誰にも言えないのです。
今回のリサイタルで彼女が得意とするシューマンから「謝肉祭」が演奏されるが、同著ではシューマンについてもこう語っている。
シューマンは晩年精神を病み、最終的に精神病院で亡くなりました。そのような境遇がシューマンの人生のすべてだったと誤解させているのかもしれませんね。
それで、みんながシューマンはその人生のほとんどの時間正常であったことを忘れ、彼の作品を狂ったように誇張して演奏し、彼が一生涯精神を病んでいたように思わせるのです。実は、シューマンが精神病院に入ってから創作した作品ですら、世の中の人々が思っているほど狂ってはいません。みんな大げさに考え過ぎています。シューマンの作品の豊かな感情表現や情景描写は、一概に語ることはできません。演奏者は音楽の情感、音符に込められた意味を真摯に理解すべきです。たとえば、多くの演奏者はシューマンが楽譜に書いた「アッチェルランド」を見ると、まるで突進するように弾いて音楽全体のバランスを崩し、前後の段階に何が書いてあるのかを考えようとしません。
私はシューマンに向き合うもっともよい方法は、やはり楽譜に戻ることだと思います。楽譜から彼の本心を探り出すのです。シューマンの作品には深い情感が流れています。それらの情感を汲み取ることは容易ではありませんが、真剣に楽譜を読み、注意深く考えながら弾いているうちにそれらを感じ、正しい解釈ができるようになるでしょう。
グルジアの女性ピアニストであるエリソ・ヴィルサラーゼは演奏家としてのみならず教育者としても名高い。25歳でモスクワ音楽院の教員に迎えられたあと1993年に正教授に就任。ほかにミュンヘン音楽大学やフィレンツェのフィエーゾレ音楽院でも教壇に立っている。弟子にボリス・ベレゾフスキーなどがいる。
いよいよエリソ・ヴィルサラーゼのピアノリサイタルが10日後に迫った。今年で73歳になる彼女の演奏会は21日の夜、東京のすみだトリフォニーホールでたった一回きり開かれる。心配性の私はもしや来日出来ないことはないだろうな、とトリフォニーホールのHPを確認したりしている。そうすると演奏曲目の変更を伝えていた。
モーツァルト/ピアノ・ソナタ 第11番 イ長調 K.331トルコ行進曲付
モーツァルト/ロンド イ短調 K.511
ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 op.57 「熱情」
モーツァルト/ピアノ・ソナタ 第13番 変ロ長調 K.333
シューマン/謝肉祭 op.9
ロンドが割愛されていた。
そして当日のプログラムを他の奏者での録音だが、また順番に聴きなおして予習している。そうすると意外とモーツァルトのK.333をあまり聴いたことがないことにあらためて気づいたりする。今回、モーツァルトが2曲組み込まれているが、『ピアニストが語る』(焦元溥著アルファベータ刊)で彼女は語っている。
あなたのテクニックはすべてモーツァルトの作品で培ったということですが、本当ですか?
本当ですよ! 私の祖母はモーツァルトのソナタで私にテクニックを教えました。モーツァルトのソナタを勉強し終わったとき、私のピアノ技巧の勉強も終わりました。
ロシアのピアニストはモーツァルトの表現が下手だとよく言われますが・・・。ホロヴィッツも、ギレリスのモーツァルトの演奏を厳しく批判したことがありますし、リヒテルも、モーツァルトが一番難しいと言っていましたよね?
表面的には、たしかにロシアのピアニストはモーツァルトが得意でないと思われますが、モーツァルトをうまく弾ける人というのは本当に少なく、どの楽派も同じなのです。私は、クララ・ハスキルのモーツァルトは好きではありません。イングリット・ヘブラーのモーツァルトも・・・。私はクリフォード・カーゾンとフリードリヒ・グルダのモーツァルトが好きです。
とにかく、この世で「私はこの作品をどう演奏すればいいかわかっています」などと言える人はいないのです。そうでしょう? そんなこと言う資格のある人なんて絶対にいません。私たちは理解しようと努力し、表現し、その結果が良いか悪いかは誰にも分らないのです。「どのように弾くべきか」なんて、誰にも言えないのです。
今回のリサイタルで彼女が得意とするシューマンから「謝肉祭」が演奏されるが、同著ではシューマンについてもこう語っている。
シューマンは晩年精神を病み、最終的に精神病院で亡くなりました。そのような境遇がシューマンの人生のすべてだったと誤解させているのかもしれませんね。
それで、みんながシューマンはその人生のほとんどの時間正常であったことを忘れ、彼の作品を狂ったように誇張して演奏し、彼が一生涯精神を病んでいたように思わせるのです。実は、シューマンが精神病院に入ってから創作した作品ですら、世の中の人々が思っているほど狂ってはいません。みんな大げさに考え過ぎています。シューマンの作品の豊かな感情表現や情景描写は、一概に語ることはできません。演奏者は音楽の情感、音符に込められた意味を真摯に理解すべきです。たとえば、多くの演奏者はシューマンが楽譜に書いた「アッチェルランド」を見ると、まるで突進するように弾いて音楽全体のバランスを崩し、前後の段階に何が書いてあるのかを考えようとしません。
私はシューマンに向き合うもっともよい方法は、やはり楽譜に戻ることだと思います。楽譜から彼の本心を探り出すのです。シューマンの作品には深い情感が流れています。それらの情感を汲み取ることは容易ではありませんが、真剣に楽譜を読み、注意深く考えながら弾いているうちにそれらを感じ、正しい解釈ができるようになるでしょう。
グルジアの女性ピアニストであるエリソ・ヴィルサラーゼは演奏家としてのみならず教育者としても名高い。25歳でモスクワ音楽院の教員に迎えられたあと1993年に正教授に就任。ほかにミュンヘン音楽大学やフィレンツェのフィエーゾレ音楽院でも教壇に立っている。弟子にボリス・ベレゾフスキーなどがいる。
by kirakuossan
| 2015-11-11 07:45
| クラシック
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