2015年 03月 09日
偏見版『倶楽シック音楽全集』-44 ストラヴィンスキー |
2015年3月9日(月)
【第93巻】原始主義時代の音楽
ストラヴィンスキー 1882~1971 ロシア。
それは僕にとってはあまりにも衝撃的な音楽であった。今までモーツァルトやベートーヴェンに慣らされてきた耳が、一瞬我を疑った。42年前の2月のことだった。それと同じ衝撃、あるいはそれ以上の大きな衝撃を受けたのは、遡ることさらに60年、1913年5月のパリ・シャンゼリゼー劇場での聴衆であった。それは音楽の冒涜以外の何物でもなかった。「春の祭典」の初演、作曲者ストラヴィンスキーは当日その会場にいた。そしてこう回顧する。
私は、第4か第5列目の右手に座っていた。今では指揮者モントゥーの背中の方が舞台の光景より生き生きと心にのこっている。彼は、そこで見たところ、ワニみたいに無神経に、犯しがたく立っていた。彼が管弦楽をとにかく終りまでやりぬいたというのは、いまだに、いつもほとんど信じられない気がするくらいだ。猛烈な騒ぎが始まると、私は席にいたたまれなくなり、舞台の裏にまわった。
イーゴリ・ストラヴィンスキーは20世紀の芸術に広く影響を及ぼした音楽家のひとりである。生涯に、原始主義、新古典主義、セリー主義と、作風を次々に変え続けた。その中でも初期に作曲された3つのバレエ音楽がとみに優れ、知れ渡っている。「火の鳥」、「ペトルーシュカ」、「春の祭典」であるが、なかでも3番目に書きあげた「春の祭典」はもっともインパクトが強く、聴く者を圧倒する。この音楽は、複雑なリズムのクラスター、ポリフォニー、不協和音に満ちていて、聴衆は初見で「音楽の冒涜以外の何物でもない」と評した。
そんな恐ろしい音楽を、興味半分恐いもの見たさ半分でレコードを手にした。当時躍進著しい新鋭ピエール・ブーレーズがクリーヴランド管弦楽団を指揮した演奏で、レコードジャケットからして鮮烈な印象を持った。今ではさほどの驚きもしないが、20歳半ばに初めて接した音楽「春の祭典」、そしてこのブーレーズ盤、僕のクラシック音楽の視野を一気に拡げてくれた貴重な一枚であったことには変わりない。
1959年彼が77歳の時、N響を指揮するため日本を訪れ、1か月ほど滞在したことがある。その時、演奏会を行うまえに鎌倉や箱根を訪れ、そして京都へ入り、ここ石山寺にも参拝している。この来日時に当時の若手作曲家であった武満徹を見出して世界に紹介するきっかけともなった。
ここではこのような音楽はもっとも得意であろうと思われるラトル盤で聴いてみる。
バレエ音楽「春の祭典」
バーミンガム市交響楽団
サイモン・ラトル(指揮)
【第93巻】原始主義時代の音楽
ストラヴィンスキー 1882~1971 ロシア。
それは僕にとってはあまりにも衝撃的な音楽であった。今までモーツァルトやベートーヴェンに慣らされてきた耳が、一瞬我を疑った。42年前の2月のことだった。それと同じ衝撃、あるいはそれ以上の大きな衝撃を受けたのは、遡ることさらに60年、1913年5月のパリ・シャンゼリゼー劇場での聴衆であった。それは音楽の冒涜以外の何物でもなかった。「春の祭典」の初演、作曲者ストラヴィンスキーは当日その会場にいた。そしてこう回顧する。
私は、第4か第5列目の右手に座っていた。今では指揮者モントゥーの背中の方が舞台の光景より生き生きと心にのこっている。彼は、そこで見たところ、ワニみたいに無神経に、犯しがたく立っていた。彼が管弦楽をとにかく終りまでやりぬいたというのは、いまだに、いつもほとんど信じられない気がするくらいだ。猛烈な騒ぎが始まると、私は席にいたたまれなくなり、舞台の裏にまわった。
イーゴリ・ストラヴィンスキーは20世紀の芸術に広く影響を及ぼした音楽家のひとりである。生涯に、原始主義、新古典主義、セリー主義と、作風を次々に変え続けた。その中でも初期に作曲された3つのバレエ音楽がとみに優れ、知れ渡っている。「火の鳥」、「ペトルーシュカ」、「春の祭典」であるが、なかでも3番目に書きあげた「春の祭典」はもっともインパクトが強く、聴く者を圧倒する。この音楽は、複雑なリズムのクラスター、ポリフォニー、不協和音に満ちていて、聴衆は初見で「音楽の冒涜以外の何物でもない」と評した。
そんな恐ろしい音楽を、興味半分恐いもの見たさ半分でレコードを手にした。当時躍進著しい新鋭ピエール・ブーレーズがクリーヴランド管弦楽団を指揮した演奏で、レコードジャケットからして鮮烈な印象を持った。今ではさほどの驚きもしないが、20歳半ばに初めて接した音楽「春の祭典」、そしてこのブーレーズ盤、僕のクラシック音楽の視野を一気に拡げてくれた貴重な一枚であったことには変わりない。
1959年彼が77歳の時、N響を指揮するため日本を訪れ、1か月ほど滞在したことがある。その時、演奏会を行うまえに鎌倉や箱根を訪れ、そして京都へ入り、ここ石山寺にも参拝している。この来日時に当時の若手作曲家であった武満徹を見出して世界に紹介するきっかけともなった。
ここではこのような音楽はもっとも得意であろうと思われるラトル盤で聴いてみる。
バレエ音楽「春の祭典」
バーミンガム市交響楽団
サイモン・ラトル(指揮)
by kirakuossan
| 2015-03-09 09:43
| 偏見版「倶楽シック全集」(完)
|
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from dezire_photo..
at 2015-06-15 16:24
タイトル : 倉冨亮太さんの繊細な美しいヴァイオリンの魅力
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