2014年 04月 20日
時代を経ても変わらないもの、変わるもの |
2014年4月20日(日)
昨日、野球を見て帰りの京阪電車で初老の人が眼鏡をおでこの上まであげ、食い入るように雑誌に読み耽っていた。
『レコード芸術』とあった。あれ、この雑誌は確か、明日20日が発売日だが、そうか土日のときは早く発売されるのか、と思いながら、その人の、顔をページにでも擦りつけるような読み方を見て、「この人もずいぶんと好きなんだなあー」と思わず笑みが浮かび、ちょっと声をかけてみたくなったが、京阪膳所で驚いて飛び降りていった。
そのおじさん、何を見ていたかというと、この雑誌のよくやる「名曲名盤500」の特集だ。
今月号より、本誌恒例の特集「名曲名盤」の最新版をお届けいたします。「名曲名盤300」は過去6回にわたって特集されてきましたが、名盤目白押しの”名曲”をさらに200曲加えた「名曲名盤500」は、1985年から86年にかけて掲載されて以来、ほぼ30年振りとなります。前回選ばれた曲をベースに、近年ディスクが多数リリースされるようになった曲に差し替えるなど整理統合した500曲のベスト・ワン・ディスクを、10名の音楽評論家の投票により決定します。本年と来年の2年で完結の予定です。
自分もこの「名曲名盤」の特集は何度となく読んできたが、30年前の500曲をまとめた別冊版をずーっと愛用しているが、いつも思うのは300曲と500曲の違いである。300曲だと漏れる曲目が結構あって、不満が残った。今回500曲にしてしかも整理統合して現代に耐え得るものに編集されるのは喜ばしいことだ。
ここにどのようなディスクが今は人気があるのか、ということもあるが、どの名曲が外され、新たに加わった名曲は何かというのも興味深いところだ。今月号は、バッハからベルリオーズまでの作曲家が掲載されている(ベルリオーズで掲載されているのは「幻想」だけなので次号もその続きがあるかもしれない)
そこで30年前の500曲にあって、今回外れたものをひろっていくと・・・
アルビノーニ:弦楽とオルガンのためのアダージョ
J・S・バッハ:マニフィカトニ長調
ベートーヴェン:ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス
ベートーヴェン:七重奏曲変ホ長調
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第1番~第7番、第9番~第11番、第13番、第16番、第19番~第20番、第22番、第24番、第25番
逆に新たに加わった主なものは・・・
J・S・バッハ:パルティータ全曲
J・S・バッハ:音楽の捧げ物
J・S・バッハ:フーガの技法
バルトーク:バレエ「中国の不思議な役人」
ベートーヴェン:序曲集
ベートーヴェン:「エロイカ」の主題による15の変奏曲とフーガ
ベルク:抒情組曲
ベルク:ヴァイオリン協奏曲
今回の整理統合で、例えばベートーヴェンのピアノ・ソナタなら全曲挙げるということをしないで、曲を選別した。また、アルビノーニが外され、新たにベルクが2曲含まれた。これも時代の流れなのだろう。
たとえばベートーヴェンの交響曲のベストワンを見ていくと・・・
1番、2番、3番、8番の4曲にパブロ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマー・フィルが選ばれた。これはかなり意外だったが、とくに3番を除く3曲は圧勝。30年前は1番:カラヤン/ベルリン・フィル、2番:ワルター/コロンビア、3番:フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(52年)、8番:カラヤン/ベルリン・フィルであった。
また、カルロス・クライバーが4番(バイエルン国立)、5番(ウィーン)、7番(ウィーン)のトップを占めた。30年前もカルロス・クライバーが5番と7番を占めていて、永遠の名盤と言える。(4番:ワルター/コロンビア)
もう一つの名盤中の名盤、第九はやはり今回もフルトヴェングラー/バイロイト祝祭管がトップ。時代の変遷を感じさせるのは、6番「田園」で、昔はベーム/ウィーンが定説であったが、今回はこれも以前より評価の高いワルター/コロンビアが1位、2位がアバド/ベルリン・フィル、ベーム盤は9盤同順位の3位に後退したことだ。
30年前と今回で両方とも評定に加わった評論家は浅里公三、歌崎和彦、吉井亜彦の3氏だけだが、評価が変わったかどうか、例えばベルリオーズ「幻想」を例に挙げると・・・
浅里も吉井もミュンシュとボストン響を1位に、ミュンシュとパリ管を次点としていたが、今回は二人ともパリ管が1位に。歌崎は前はカラヤンとベルリン・フィルだったが、今回はミンコフスキー/マーラー室内を取り、カラヤンは全く消えたのも面白い。時代の変遷で順位が入れ替わるのは当然だが、真の名盤が変わらないのもまた当然とも言える。「時代を経ても変わらないもの、変わるもの」そのどちらも価値あることなのだ。
ここに昔も今も1位のリヒテルの「テンペスト」を挙げる。
今までに数多くの演奏を聴いて来たが、彼のこの演奏に勝るものはなかった。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 「テンペスト」 Op. 31, No. 2
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
(録音:1961年)
昨日、野球を見て帰りの京阪電車で初老の人が眼鏡をおでこの上まであげ、食い入るように雑誌に読み耽っていた。
『レコード芸術』とあった。あれ、この雑誌は確か、明日20日が発売日だが、そうか土日のときは早く発売されるのか、と思いながら、その人の、顔をページにでも擦りつけるような読み方を見て、「この人もずいぶんと好きなんだなあー」と思わず笑みが浮かび、ちょっと声をかけてみたくなったが、京阪膳所で驚いて飛び降りていった。
そのおじさん、何を見ていたかというと、この雑誌のよくやる「名曲名盤500」の特集だ。
今月号より、本誌恒例の特集「名曲名盤」の最新版をお届けいたします。「名曲名盤300」は過去6回にわたって特集されてきましたが、名盤目白押しの”名曲”をさらに200曲加えた「名曲名盤500」は、1985年から86年にかけて掲載されて以来、ほぼ30年振りとなります。前回選ばれた曲をベースに、近年ディスクが多数リリースされるようになった曲に差し替えるなど整理統合した500曲のベスト・ワン・ディスクを、10名の音楽評論家の投票により決定します。本年と来年の2年で完結の予定です。
自分もこの「名曲名盤」の特集は何度となく読んできたが、30年前の500曲をまとめた別冊版をずーっと愛用しているが、いつも思うのは300曲と500曲の違いである。300曲だと漏れる曲目が結構あって、不満が残った。今回500曲にしてしかも整理統合して現代に耐え得るものに編集されるのは喜ばしいことだ。
ここにどのようなディスクが今は人気があるのか、ということもあるが、どの名曲が外され、新たに加わった名曲は何かというのも興味深いところだ。今月号は、バッハからベルリオーズまでの作曲家が掲載されている(ベルリオーズで掲載されているのは「幻想」だけなので次号もその続きがあるかもしれない)
そこで30年前の500曲にあって、今回外れたものをひろっていくと・・・
アルビノーニ:弦楽とオルガンのためのアダージョ
J・S・バッハ:マニフィカトニ長調
ベートーヴェン:ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス
ベートーヴェン:七重奏曲変ホ長調
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第1番~第7番、第9番~第11番、第13番、第16番、第19番~第20番、第22番、第24番、第25番
逆に新たに加わった主なものは・・・
J・S・バッハ:パルティータ全曲
J・S・バッハ:音楽の捧げ物
J・S・バッハ:フーガの技法
バルトーク:バレエ「中国の不思議な役人」
ベートーヴェン:序曲集
ベートーヴェン:「エロイカ」の主題による15の変奏曲とフーガ
ベルク:抒情組曲
ベルク:ヴァイオリン協奏曲
今回の整理統合で、例えばベートーヴェンのピアノ・ソナタなら全曲挙げるということをしないで、曲を選別した。また、アルビノーニが外され、新たにベルクが2曲含まれた。これも時代の流れなのだろう。
たとえばベートーヴェンの交響曲のベストワンを見ていくと・・・
1番、2番、3番、8番の4曲にパブロ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマー・フィルが選ばれた。これはかなり意外だったが、とくに3番を除く3曲は圧勝。30年前は1番:カラヤン/ベルリン・フィル、2番:ワルター/コロンビア、3番:フルトヴェングラー/ウィーン・フィル(52年)、8番:カラヤン/ベルリン・フィルであった。
また、カルロス・クライバーが4番(バイエルン国立)、5番(ウィーン)、7番(ウィーン)のトップを占めた。30年前もカルロス・クライバーが5番と7番を占めていて、永遠の名盤と言える。(4番:ワルター/コロンビア)
もう一つの名盤中の名盤、第九はやはり今回もフルトヴェングラー/バイロイト祝祭管がトップ。時代の変遷を感じさせるのは、6番「田園」で、昔はベーム/ウィーンが定説であったが、今回はこれも以前より評価の高いワルター/コロンビアが1位、2位がアバド/ベルリン・フィル、ベーム盤は9盤同順位の3位に後退したことだ。
30年前と今回で両方とも評定に加わった評論家は浅里公三、歌崎和彦、吉井亜彦の3氏だけだが、評価が変わったかどうか、例えばベルリオーズ「幻想」を例に挙げると・・・
浅里も吉井もミュンシュとボストン響を1位に、ミュンシュとパリ管を次点としていたが、今回は二人ともパリ管が1位に。歌崎は前はカラヤンとベルリン・フィルだったが、今回はミンコフスキー/マーラー室内を取り、カラヤンは全く消えたのも面白い。時代の変遷で順位が入れ替わるのは当然だが、真の名盤が変わらないのもまた当然とも言える。「時代を経ても変わらないもの、変わるもの」そのどちらも価値あることなのだ。
ここに昔も今も1位のリヒテルの「テンペスト」を挙げる。
今までに数多くの演奏を聴いて来たが、彼のこの演奏に勝るものはなかった。
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 「テンペスト」 Op. 31, No. 2
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
(録音:1961年)
by kirakuossan
| 2014-04-20 12:17
| クラシック
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