2013年 11月 13日
指揮者100選☆46 トスカニーニ |
2013年11月13日(水)
フルトヴェングラーが”柔”とするならば、トスカニーニは”剛”と称されよう。互いの音楽は随分と違ったものだ。いちばん分りやすく云えば、前者はテンポを自由自在に動かし、後者は一貫して一定のテンポを崩さなかった。別の云い方をすれば、前者は演出効果に長け、後者は楽譜にあくまでも忠実であった。だからテンポといっても単に速い、遅いだけではない。たとえばフルトヴェングラーのあの第九のエンドにかかる凄まじいほどの猛スピードには、祝祭管弦楽団の連中も着いて行けずにバラバラでゴールインするような演奏もあるにはあるが、一方では、コッテリと持って回って進めることが多い、これなどはそのあとの劇的な場面に臨むためそのものであって、僕はどちらかといえばこの見え透いた効果期待は好きではない。でも聴衆の多くはこれを好み、死後60年を経た今でも、”フルトヴェングラー党”が存在するのも事実である。でもどちらかと云えば遅い演奏をする指揮者と言えるだろう。
片方のトスカニーニは、とにかく速い。楽譜がそうなっているといえばそれまでだが、作為的な演出効果などは彼の頭には微塵もない。ただ猪突猛進の如く、最初から最後まで突っ走る。今、ドヴォルザークの新世界よりを聴いているが、第一楽章の出だしこそ他の演奏と変りないが、40秒ほどたって弦のtutti とティンパニが4回ほど交錯するように激しく鳴るところがあるが、これなどどの指揮者の演奏よりも速い。それはあまりにも愛想がないほどである。この一見、頑固一徹さが、大衆受けしにくいものであったかも知れない。日本流に言えば、”明治生まれの頑固親父”そのものであろう。
話を戻して、テンポだけでいえば、最速がトスカニーニで遅いのがフルトヴェングラーで、その中間がシューリヒトといえるだろう。いずれにしても戦前を中心にして、このふたりは時代の最良の大指揮者であり、互いに犬猿の間柄であり、またよきライバルでもあった。
(上の写真:左よりワルター、トスカニーニ、クライバー、クレンペラー、フルトヴェングラー)
アルトゥーロ・トスカニーニ
(Arturo Toscanini, イタリア 1867~1957)
1898年から1929年にかけて、ミラノ・スカラ座とメトロポリタン歌劇場の指揮者を歴任、続いてニューヨーク・フィル、1954年まではNBC交響楽団を指揮した。
娘婿には、ピアニストのホロヴィッツがいた。
非常に短気であり、オーケストラのリハーサルの際には怒鳴り声を発することは頻繁にあったが、オーケストラをリハーサルで徹底的に鍛え、妥協を許さない専制的な指揮者であって、どのオーケストラとでも黄金時代を迎えた。彼はムッソリーニの台頭に抵抗し、米国へ活動の場を求めるが、フルトヴェングラーはナチスを嫌うが、母国に留まって活動をしたのとは対照的である。こういったものの考え方においてふたりには大きな溝が出来た。
☆演奏スタイルは・・・
速く正確なテンポ、統一したアンサンブル等は戦後の演奏法の規範となった。徹底した楽譜至上主義ともいわれているが、後のカラヤンや多くの大指揮者に大きな影響を及ぼした。
レパートリーは大変広く、イタリア・オペラやレスピーギなどのイタリアものを十八番とし、一方ではワーグナーをはじめ、ベートーヴェンやブラームスといったドイツ音楽、さらにはチャイコフスキーなども得意とした。
☆録音は・・・
トスカニーニといえば、管弦楽曲であれば昔からの定番はこのふたつである。ひとつはレスピーギのローマ三部作であり、もうひとつはメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」だろう。
しかし彼の本領はやはりオペラにあって、たとえばヴェルディの歌劇「椿姫」は名盤に数えられる。その演奏は見事なリズム感のもと、無駄のない、筋肉質の心地よい緊張感が味わえる。
☆私見・・・
彼の信条に魅かれるところがある。ただ音楽に関しては、武骨さがどうしても気にかかり好きな指揮者であるところまではいかない。ただいつもトスカニーニで思い出すのは、かみさんの叔母が当時としては洒落た人で「昔、女学生のころによくレコードを聴いた。トスカニーニに憧れた」と話した一言である。
☆Myライブラリーより・・・
トスカニーニにしてもフルトヴェングラーにしても活動の最盛期にはまだステレオ録音の技術がなかった。最近では古い音源を呼び戻して高音質のCDに焼き直しているが、所詮モノ録音には変りない。ところがトスカニーニには、唯一ステレオ前夜の1954年当時のステレオ実験録音の音源があった。トスカニーニの演奏が正真正銘のステレオで聴けると云う有り難い2枚組セットである。
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 「悲愴」 Op. 74
ワーグナー:管弦楽作品集
NBC交響楽団 - NBC Symphony Orchestra
アルトゥーロ・トスカニーニ - Arturo Toscanini (指揮者)
録音: 21 March 1954, Live Recording, New York
フルトヴェングラーが”柔”とするならば、トスカニーニは”剛”と称されよう。互いの音楽は随分と違ったものだ。いちばん分りやすく云えば、前者はテンポを自由自在に動かし、後者は一貫して一定のテンポを崩さなかった。別の云い方をすれば、前者は演出効果に長け、後者は楽譜にあくまでも忠実であった。だからテンポといっても単に速い、遅いだけではない。たとえばフルトヴェングラーのあの第九のエンドにかかる凄まじいほどの猛スピードには、祝祭管弦楽団の連中も着いて行けずにバラバラでゴールインするような演奏もあるにはあるが、一方では、コッテリと持って回って進めることが多い、これなどはそのあとの劇的な場面に臨むためそのものであって、僕はどちらかといえばこの見え透いた効果期待は好きではない。でも聴衆の多くはこれを好み、死後60年を経た今でも、”フルトヴェングラー党”が存在するのも事実である。でもどちらかと云えば遅い演奏をする指揮者と言えるだろう。
片方のトスカニーニは、とにかく速い。楽譜がそうなっているといえばそれまでだが、作為的な演出効果などは彼の頭には微塵もない。ただ猪突猛進の如く、最初から最後まで突っ走る。今、ドヴォルザークの新世界よりを聴いているが、第一楽章の出だしこそ他の演奏と変りないが、40秒ほどたって弦のtutti とティンパニが4回ほど交錯するように激しく鳴るところがあるが、これなどどの指揮者の演奏よりも速い。それはあまりにも愛想がないほどである。この一見、頑固一徹さが、大衆受けしにくいものであったかも知れない。日本流に言えば、”明治生まれの頑固親父”そのものであろう。
話を戻して、テンポだけでいえば、最速がトスカニーニで遅いのがフルトヴェングラーで、その中間がシューリヒトといえるだろう。いずれにしても戦前を中心にして、このふたりは時代の最良の大指揮者であり、互いに犬猿の間柄であり、またよきライバルでもあった。
(上の写真:左よりワルター、トスカニーニ、クライバー、クレンペラー、フルトヴェングラー)
アルトゥーロ・トスカニーニ
(Arturo Toscanini, イタリア 1867~1957)
1898年から1929年にかけて、ミラノ・スカラ座とメトロポリタン歌劇場の指揮者を歴任、続いてニューヨーク・フィル、1954年まではNBC交響楽団を指揮した。
娘婿には、ピアニストのホロヴィッツがいた。
非常に短気であり、オーケストラのリハーサルの際には怒鳴り声を発することは頻繁にあったが、オーケストラをリハーサルで徹底的に鍛え、妥協を許さない専制的な指揮者であって、どのオーケストラとでも黄金時代を迎えた。彼はムッソリーニの台頭に抵抗し、米国へ活動の場を求めるが、フルトヴェングラーはナチスを嫌うが、母国に留まって活動をしたのとは対照的である。こういったものの考え方においてふたりには大きな溝が出来た。
☆演奏スタイルは・・・
速く正確なテンポ、統一したアンサンブル等は戦後の演奏法の規範となった。徹底した楽譜至上主義ともいわれているが、後のカラヤンや多くの大指揮者に大きな影響を及ぼした。
レパートリーは大変広く、イタリア・オペラやレスピーギなどのイタリアものを十八番とし、一方ではワーグナーをはじめ、ベートーヴェンやブラームスといったドイツ音楽、さらにはチャイコフスキーなども得意とした。
☆録音は・・・
トスカニーニといえば、管弦楽曲であれば昔からの定番はこのふたつである。ひとつはレスピーギのローマ三部作であり、もうひとつはメンデルスゾーンの交響曲第4番「イタリア」だろう。
しかし彼の本領はやはりオペラにあって、たとえばヴェルディの歌劇「椿姫」は名盤に数えられる。その演奏は見事なリズム感のもと、無駄のない、筋肉質の心地よい緊張感が味わえる。
☆私見・・・
彼の信条に魅かれるところがある。ただ音楽に関しては、武骨さがどうしても気にかかり好きな指揮者であるところまではいかない。ただいつもトスカニーニで思い出すのは、かみさんの叔母が当時としては洒落た人で「昔、女学生のころによくレコードを聴いた。トスカニーニに憧れた」と話した一言である。
☆Myライブラリーより・・・
トスカニーニにしてもフルトヴェングラーにしても活動の最盛期にはまだステレオ録音の技術がなかった。最近では古い音源を呼び戻して高音質のCDに焼き直しているが、所詮モノ録音には変りない。ところがトスカニーニには、唯一ステレオ前夜の1954年当時のステレオ実験録音の音源があった。トスカニーニの演奏が正真正銘のステレオで聴けると云う有り難い2枚組セットである。
チャイコフスキー:交響曲第6番 ロ短調 「悲愴」 Op. 74
ワーグナー:管弦楽作品集
NBC交響楽団 - NBC Symphony Orchestra
アルトゥーロ・トスカニーニ - Arturo Toscanini (指揮者)
録音: 21 March 1954, Live Recording, New York
by kirakuossan
| 2013-11-13 09:02
| 指揮者100選(完)
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