2012年 04月 01日
指揮者100選☆26 クリップス |
2012年4月1日(日)
ヨーゼフ・クリップス(Josef Krips、オーストリア、1902~1974)
カラヤンやベームのかげに隠れて地味な印象しかない指揮者だが、僕にとっては生涯忘れられない指揮者だ。クラシック音楽に親しむようになって、まず何んといってもベートーヴェンを聴かなくては・・・と思い、交響曲全集のレコードを買うことにした。70年代前半のことで、主だった一流指揮者はいろいろな全集を出していた。当時の小遣いでは手が出ず、諦めかけていたところに、白いボックスに収められたコロンビアレコードの全集を見つけた。オケがロンドン交響楽団。欲しかったのはもちろんドイツかオーストリアのオケのものであったが、とにかく値段が一番安く(それでも確か5000円ぐらいはしたように記憶している)心動かされた。まあ、ロンドンもそこそこの実力オーケストラであるし・・・これにしようか。しかし、指揮者が全く知らない。多分二流なんだろうな、と決めつけていた。
買ってからは、毎日のようにレコードに針を落とした。9番「合唱つき」は前からストコフスキーの変わったやつを1枚持っていたし、確か「運命」もオーマンディか何かで聴いていたし、「英雄」や「田園」もFM放送でよく聴くので知っていた。しかし、ほかは知らない、7番、8番、ましてや1番、2番なんて曲はこの全集で初めて耳にした。レコードが擦り切れるほど聴いた。音質は硬く、幾分おとなしい演奏ではあったが、基本に忠実な演奏なのでベートーヴェン音楽を初めて聴く入門編としては、そう悪くはなかった。
クリップスという指揮者、確かに派手さはないが、実績もあって玄人好みをする指揮者なんだということは後になってから知った。
ワインガルトナーの助手を務め、いくつかの歌劇場を経て、30歳そこそこでウィーン国立歌劇場の常任指揮者に就任するほどの出世ぶり。戦後、1950年から5年間、ロンドン交響楽団の首席指揮者を務め、その後サンフランシスコ交響楽団の音楽監督となる。晩年の1970年、ベルリン・ドイツ・オペラの指揮者に就任、また同年から亡くなる前までの4年間ウィーン交響楽団の首席指揮者もを務めたほどの人物である。せめてもう5~6年長寿であったらもっと知名度は上がっていたであろう。
☆演奏スタイルは・・・
強烈な個性はないが、ウイーンの良き時代の響きを持っていた。またオペラの経験が豊富であったため、優美で、しなやかさもあったように思う。
☆残した録音は・・・
モーツアルトを得意とした。ウイーン・フィルとの歌劇「ドン・ジョバンニ」、「後宮からの誘拐」、「レクイエム」、交響曲では、コンセルトヘボウ管との第31番「パリ」、第39番、第40番。
さらにロンドン響との間ではベートーヴェンの他にシューベルトの「ザ・グレイト」(右写真)やハイドンの「オックスフォード」や「ロンドン」交響曲がありいずれも彼の代表作としてよく知られるところだ。「後宮からの誘拐」以外は全部僕の私蔵盤でもある。
☆私見・・・
やはり彼の音楽は、ウイーンの伝統的な肌触りの柔らかな音楽だろう。戦後、ナチスとの問題で復帰が遅れたフルトヴェングラーやカラヤン、ベームなどが不在の時期のウィーン・フィルを支えた唯一の指揮者ともいえる。(同じようにベルリン・フィルを支えたのはチェリビダッケだったように)
しかし、彼のスター性に欠ける地味な性格が災いしたのか、まもなくして前者の3人に美味しいところを全部持って行かれたという印象は拭えない。
☆Myライブラリーより・・・
何んといってもロンドン交響楽団を振った「ベートーヴェン全集」のLP。ただこの記念すべきLPのセットを従弟に気前よく贈ってしまった。(実は、今になって惜しいことをしたと内心思っている)
ところがだいぶ後になってから、同様の演奏の5枚組CDが珍しいブリキ缶に入れて発売になった。1缶が1000円チョットの超安値。珍しさもあってちょっとしたプレゼントにも面白いということで5缶ほど購入した。でも今ではもう聴くこともない。(左上写真は他人のブログから拝借)
追記:
2012年8月26日(日)
LPを整理していると贈って手元になくなっていたと思い込んでいたセットが出てきた。随分久しぶりに見る古ぼけて使い古したベートーヴェン全集、これに僕のクラシック音楽に浸透して行く青春が沁み込んでいるんだ。
ヨーゼフ・クリップス(Josef Krips、オーストリア、1902~1974)
カラヤンやベームのかげに隠れて地味な印象しかない指揮者だが、僕にとっては生涯忘れられない指揮者だ。クラシック音楽に親しむようになって、まず何んといってもベートーヴェンを聴かなくては・・・と思い、交響曲全集のレコードを買うことにした。70年代前半のことで、主だった一流指揮者はいろいろな全集を出していた。当時の小遣いでは手が出ず、諦めかけていたところに、白いボックスに収められたコロンビアレコードの全集を見つけた。オケがロンドン交響楽団。欲しかったのはもちろんドイツかオーストリアのオケのものであったが、とにかく値段が一番安く(それでも確か5000円ぐらいはしたように記憶している)心動かされた。まあ、ロンドンもそこそこの実力オーケストラであるし・・・これにしようか。しかし、指揮者が全く知らない。多分二流なんだろうな、と決めつけていた。
買ってからは、毎日のようにレコードに針を落とした。9番「合唱つき」は前からストコフスキーの変わったやつを1枚持っていたし、確か「運命」もオーマンディか何かで聴いていたし、「英雄」や「田園」もFM放送でよく聴くので知っていた。しかし、ほかは知らない、7番、8番、ましてや1番、2番なんて曲はこの全集で初めて耳にした。レコードが擦り切れるほど聴いた。音質は硬く、幾分おとなしい演奏ではあったが、基本に忠実な演奏なのでベートーヴェン音楽を初めて聴く入門編としては、そう悪くはなかった。
クリップスという指揮者、確かに派手さはないが、実績もあって玄人好みをする指揮者なんだということは後になってから知った。
ワインガルトナーの助手を務め、いくつかの歌劇場を経て、30歳そこそこでウィーン国立歌劇場の常任指揮者に就任するほどの出世ぶり。戦後、1950年から5年間、ロンドン交響楽団の首席指揮者を務め、その後サンフランシスコ交響楽団の音楽監督となる。晩年の1970年、ベルリン・ドイツ・オペラの指揮者に就任、また同年から亡くなる前までの4年間ウィーン交響楽団の首席指揮者もを務めたほどの人物である。せめてもう5~6年長寿であったらもっと知名度は上がっていたであろう。
☆演奏スタイルは・・・
強烈な個性はないが、ウイーンの良き時代の響きを持っていた。またオペラの経験が豊富であったため、優美で、しなやかさもあったように思う。
☆残した録音は・・・
モーツアルトを得意とした。ウイーン・フィルとの歌劇「ドン・ジョバンニ」、「後宮からの誘拐」、「レクイエム」、交響曲では、コンセルトヘボウ管との第31番「パリ」、第39番、第40番。
さらにロンドン響との間ではベートーヴェンの他にシューベルトの「ザ・グレイト」(右写真)やハイドンの「オックスフォード」や「ロンドン」交響曲がありいずれも彼の代表作としてよく知られるところだ。「後宮からの誘拐」以外は全部僕の私蔵盤でもある。
☆私見・・・
やはり彼の音楽は、ウイーンの伝統的な肌触りの柔らかな音楽だろう。戦後、ナチスとの問題で復帰が遅れたフルトヴェングラーやカラヤン、ベームなどが不在の時期のウィーン・フィルを支えた唯一の指揮者ともいえる。(同じようにベルリン・フィルを支えたのはチェリビダッケだったように)
しかし、彼のスター性に欠ける地味な性格が災いしたのか、まもなくして前者の3人に美味しいところを全部持って行かれたという印象は拭えない。
☆Myライブラリーより・・・
何んといってもロンドン交響楽団を振った「ベートーヴェン全集」のLP。ただこの記念すべきLPのセットを従弟に気前よく贈ってしまった。(実は、今になって惜しいことをしたと内心思っている)
ところがだいぶ後になってから、同様の演奏の5枚組CDが珍しいブリキ缶に入れて発売になった。1缶が1000円チョットの超安値。珍しさもあってちょっとしたプレゼントにも面白いということで5缶ほど購入した。でも今ではもう聴くこともない。(左上写真は他人のブログから拝借)
追記:
2012年8月26日(日)
LPを整理していると贈って手元になくなっていたと思い込んでいたセットが出てきた。随分久しぶりに見る古ぼけて使い古したベートーヴェン全集、これに僕のクラシック音楽に浸透して行く青春が沁み込んでいるんだ。
by kirakuossan
| 2012-04-01 16:30
| 指揮者100選(完)
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