2011年 10月 01日
自然を想う |
2011年10月1日(土)
姜尚中氏の新刊『あなたは誰?私はここにいる』(集英社新書)にこんなくだりがある。
わたしは自然になりたい、と題して・・・
「自然は、理不尽で仮借ない暴力を振るいますが、その自然にわたしたちは癒しと救いを求めてきました。自然は、厄災と不幸と死をもたらしますが、歓喜と幸運と生命の源泉でもあるのです。確かに地震で大地が揺らぎ、津波ですべてを押し流される経験をすれば、もはや屈託なく自然を礼讃したい気持ちになれないでしょう。そして、放射性物質の拡散のせいで、川や森、牧場の清澄な輝きや囁くような自然の鼓動を素朴に満喫したいという気持ちも萎えてしまいそうです。・・・<略>・・・ <朝鮮白磁>
わたしも還暦に手が届くようになったころから無性に自然が慕わしくなりました。ときおり、山中に分け入ったりしますが、ちょっと気をつけてみれば、都市の中にも心地よい日陰をなす木立や、草花の茂った川の土手や、水草の浮かんだ池などを見つけられ、やはりほっと安らぐ感じがします。・・・<略>・・・
自然現象に対する感覚というものは、年齢とともに研ぎ澄まされてくるようです。そんな刻々の変化を体に感じていると、せせこましい都会暮らしなどはもうやめて、田舎でスローライフを始めてしまおうかななどと思うこともあります。自然と一体化したい、それができなければせめて自然の懐深く、静けさと安らぎの日々を送りたい、そんな願いが年ごとに強くなっているようです」
同世代の姜尚中氏のこの言葉にはたいへん深い共感をおぼえる。
彼はこの著書で自らの体験で目にしてきた数々の優れた絵画、美術品を通して感じたことを、人としての生きる手がかりとして読者に多くのことを啓示してくれる。アルブレヒト・デューラー、ディエゴ・ベラスケス、エデュアール・マネ、ギュスターヴ・クールベ、さらにはグスタフ・クリムト、ポール・ゴーギャン・・・と紹介される。
錚々たる外国人画家たちに連ねて、3人の日本人画家を知り、ひとりの魅力的な女性陶芸作家に出逢えた。
それは、伊藤若冲、熊田千佳慕、犬塚勉、そしてルーシー・リーだ。
左:「群鶏図」伊藤若冲(1716~1800)
上:「暗く深き渓谷の入口Ⅰ」犬塚勉(1949~1988)
下:「天敵」熊田千佳慕(1911~2009)
ルーシー・リー(1902~1995)
朝鮮白磁をこよなく愛したオーストリアの女性陶芸家。ユダヤ系の医者の娘として生まれたが、過酷な迫害の中、イギリスに亡命。ひっそりと陶器のボタンを作って命をつなぐことになるが、もともと才能に恵まれた彼女はやがて自らの工房を持ち、陶芸家として世にでる。彼女の作品には人の心を優しくしてくれる繊細さを持ち合わせ、装飾の少ないフォルムの中に、デリケートな感受性が息づいている。
『あなたは誰?私はここにいる』 は心温まる一冊だ。
あっ、そうそう、今日は僕たちの結婚40年の記念日だ。あっという間に過ごしてきた思いだ。
姜尚中氏の新刊『あなたは誰?私はここにいる』(集英社新書)にこんなくだりがある。
わたしは自然になりたい、と題して・・・
「自然は、理不尽で仮借ない暴力を振るいますが、その自然にわたしたちは癒しと救いを求めてきました。自然は、厄災と不幸と死をもたらしますが、歓喜と幸運と生命の源泉でもあるのです。確かに地震で大地が揺らぎ、津波ですべてを押し流される経験をすれば、もはや屈託なく自然を礼讃したい気持ちになれないでしょう。そして、放射性物質の拡散のせいで、川や森、牧場の清澄な輝きや囁くような自然の鼓動を素朴に満喫したいという気持ちも萎えてしまいそうです。・・・<略>・・・ <朝鮮白磁>
わたしも還暦に手が届くようになったころから無性に自然が慕わしくなりました。ときおり、山中に分け入ったりしますが、ちょっと気をつけてみれば、都市の中にも心地よい日陰をなす木立や、草花の茂った川の土手や、水草の浮かんだ池などを見つけられ、やはりほっと安らぐ感じがします。・・・<略>・・・
自然現象に対する感覚というものは、年齢とともに研ぎ澄まされてくるようです。そんな刻々の変化を体に感じていると、せせこましい都会暮らしなどはもうやめて、田舎でスローライフを始めてしまおうかななどと思うこともあります。自然と一体化したい、それができなければせめて自然の懐深く、静けさと安らぎの日々を送りたい、そんな願いが年ごとに強くなっているようです」
同世代の姜尚中氏のこの言葉にはたいへん深い共感をおぼえる。
彼はこの著書で自らの体験で目にしてきた数々の優れた絵画、美術品を通して感じたことを、人としての生きる手がかりとして読者に多くのことを啓示してくれる。アルブレヒト・デューラー、ディエゴ・ベラスケス、エデュアール・マネ、ギュスターヴ・クールベ、さらにはグスタフ・クリムト、ポール・ゴーギャン・・・と紹介される。
錚々たる外国人画家たちに連ねて、3人の日本人画家を知り、ひとりの魅力的な女性陶芸作家に出逢えた。
それは、伊藤若冲、熊田千佳慕、犬塚勉、そしてルーシー・リーだ。
左:「群鶏図」伊藤若冲(1716~1800)
上:「暗く深き渓谷の入口Ⅰ」犬塚勉(1949~1988)
下:「天敵」熊田千佳慕(1911~2009)
ルーシー・リー(1902~1995)
朝鮮白磁をこよなく愛したオーストリアの女性陶芸家。ユダヤ系の医者の娘として生まれたが、過酷な迫害の中、イギリスに亡命。ひっそりと陶器のボタンを作って命をつなぐことになるが、もともと才能に恵まれた彼女はやがて自らの工房を持ち、陶芸家として世にでる。彼女の作品には人の心を優しくしてくれる繊細さを持ち合わせ、装飾の少ないフォルムの中に、デリケートな感受性が息づいている。
『あなたは誰?私はここにいる』 は心温まる一冊だ。
あっ、そうそう、今日は僕たちの結婚40年の記念日だ。あっという間に過ごしてきた思いだ。
by kirakuossan
| 2011-10-01 07:55
| 偶感
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