2011年 05月 30日
ホタル |
2011年5月30日(月)
今日の読売夕刊に「ホタル」のことが載っていた。
ホタルの発光は求愛の合図。ホタル前線は最低気温が15℃以上になるころから日本列島を北上し、夏の訪れをを告げる。近畿の初見日は例年6月初旬。
ゲンジボタルの明滅間隔は、地域の環境の違いにより微妙に遺伝子が変化したため、西日本が2秒、東日本が4秒に1回ということらしい。
ホタルと云えば、芥川賞作家宮本輝の「螢川」がある。
昔、庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」を読んで、その小説の”軽さ”に幻滅し、その後「狼なんかこわくない」とか「さよなら快傑黒頭巾」とか、いかにも受けを狙ったような幼稚なタイトルが厭で、全く読もうとも思わなかった。(ある意味偏見的ではあるが・・・)そのうちどうしてかわからないが、宮本輝という作家と勝手に混同してしまい、同一人物と錯覚していた。ついごく最近までそう思い込んでいた。
一昨日のあるTV局で宮本輝の特集番組を放映していたのを偶然見た。喋り口が気さくで、何処にでもいそうな団塊世代の男、およそ作家らしくないタイプ、といった彼の素顔を初めて知ることとなった。会談の中で彼の処女作「泥の河」と「螢川」の話に興味を抱き、早速、「螢川」を読んでみた。
雪
銀蔵爺さんの引く荷車が、雪見橋を渡って八人町への道に消えていった。雪は朝方やみ、確かに純白の光彩が街全体に敷きつめられたはずなのに、富山の街は、燻銀の光にくるまれて暗く煙っている。・・・
と書き出し部分から北陸の厳しい環境を想像させる。
彼の師匠である池上義一の指摘通り、冒頭の15行を割愛してその次から書き出せるようになったらホンマものだと云った、その部分がこの書き出し部分なのだろう。この2~3行の短い文章の中に、今から小説を読む者に対して期待感を抱かせるに十分なものが凝縮されている。
「螢川」は比較的短い小説で、作者の幼いころの実体験が随所に見え隠れし、読者自身の体験と交差するごとに、ふと過去を思い起こさせてくれる。素直な文章で書き綴られていて読みやすい。
ついにホタルの大群に出くわし、竜夫と英子が川のほとりに降りて行くが、「・・・身を乗り出して川べりを覗き込んだ千代(竜夫の母)の喉元からかすかな悲鳴がこぼれ出た。風がやみ、再び静寂の戻った窪地の底に、螢の綾なす妖光が人間の形で立っていた。」
何度読み直してみても最後の結末がよくわからなかった。
今日の読売夕刊に「ホタル」のことが載っていた。
ホタルの発光は求愛の合図。ホタル前線は最低気温が15℃以上になるころから日本列島を北上し、夏の訪れをを告げる。近畿の初見日は例年6月初旬。
ゲンジボタルの明滅間隔は、地域の環境の違いにより微妙に遺伝子が変化したため、西日本が2秒、東日本が4秒に1回ということらしい。
ホタルと云えば、芥川賞作家宮本輝の「螢川」がある。
昔、庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」を読んで、その小説の”軽さ”に幻滅し、その後「狼なんかこわくない」とか「さよなら快傑黒頭巾」とか、いかにも受けを狙ったような幼稚なタイトルが厭で、全く読もうとも思わなかった。(ある意味偏見的ではあるが・・・)そのうちどうしてかわからないが、宮本輝という作家と勝手に混同してしまい、同一人物と錯覚していた。ついごく最近までそう思い込んでいた。
一昨日のあるTV局で宮本輝の特集番組を放映していたのを偶然見た。喋り口が気さくで、何処にでもいそうな団塊世代の男、およそ作家らしくないタイプ、といった彼の素顔を初めて知ることとなった。会談の中で彼の処女作「泥の河」と「螢川」の話に興味を抱き、早速、「螢川」を読んでみた。
雪
銀蔵爺さんの引く荷車が、雪見橋を渡って八人町への道に消えていった。雪は朝方やみ、確かに純白の光彩が街全体に敷きつめられたはずなのに、富山の街は、燻銀の光にくるまれて暗く煙っている。・・・
と書き出し部分から北陸の厳しい環境を想像させる。
彼の師匠である池上義一の指摘通り、冒頭の15行を割愛してその次から書き出せるようになったらホンマものだと云った、その部分がこの書き出し部分なのだろう。この2~3行の短い文章の中に、今から小説を読む者に対して期待感を抱かせるに十分なものが凝縮されている。
「螢川」は比較的短い小説で、作者の幼いころの実体験が随所に見え隠れし、読者自身の体験と交差するごとに、ふと過去を思い起こさせてくれる。素直な文章で書き綴られていて読みやすい。
ついにホタルの大群に出くわし、竜夫と英子が川のほとりに降りて行くが、「・・・身を乗り出して川べりを覗き込んだ千代(竜夫の母)の喉元からかすかな悲鳴がこぼれ出た。風がやみ、再び静寂の戻った窪地の底に、螢の綾なす妖光が人間の形で立っていた。」
何度読み直してみても最後の結末がよくわからなかった。
by kirakuossan
| 2011-05-30 21:37
| 文芸
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